糖尿病患者に対し, 検査値・身体計測を参照に要点のみを説明する簡便な指導方法 (簡便法) の効果と望ましい指導期間を検討する目的で, 平成8年の1年間に個別指導した通院のNIDDM患者のうち, 3か月以上継続指導 (25.4±18か月) した91人 (男68人・53.2±9.9歳, 女23人・61.6±12.5歳,
p<0.003; 薬物療法併用14人) を対象にして, 血糖値・血清脂質・γ-GTP・肥満度と, 栄養素, アルコール・菓子の摂取状況の関連と変化を検討した結果, 次の成績を得た。
1) 12か月後, HbA
1C・TC・TGは, 7%未満・200mg/d
l未満・150mg/d
l未満に有意に低下した。HDLは上昇傾向, 肥満度は低下傾向を示した。TGは, 男・年齢〈65歳例・肥満度〉110%例で, 6か月後にリバウンド傾向がみられた。一方, γ-GTPは, >60U/
l例で6か月後に再上昇したが, 12か月後には差異がなかった。
2) 栄養素等摂取量はエネルギー・たんぱく質・脂質の量の減少,
n-3脂肪酸の増加, 指導前値TC>200mg/d
l例でコレステロール摂取量の減少による質の改善が認められた結果, 栄養素エネルギー比率が是正され,食物繊維 (22±4.5g) は十分摂取できた。よって, 簡便法でも適正な栄養量に是正できることが確認された。
3) 12か月後, 飲酒総量は1,750kcal/週未満に, 菓子頻度は3回未満に減少した。指導前の飲酒総量>1,750kcal/週例では飲酒総量が減少したが, 12か月後には1,750kcal/週を上回っていた。
4) 十分な食物繊維・野菜・
n-3脂肪酸の摂取, 夕食のエネルギーの減少, 更に週に菓子頻度3回未満で昼間の食間を条件とすれば, 菓子の摂取はHbA
1C・TC・TGへの影響は認めなかった。アルコールはHbA
1Cとは関係しなかった。飲酒総量は, 指導前TG>150mg/d
l例・γ-GTP>60U/
l例で, TG・γ-GTPの値と相関したが, 個体差が大きいため, 観察しながら個々に決定するのが望ましいと考えられた。
5) 簡便法で, 12か月以上継続指導例81%, そのうちHbA
1C7%未満が73.2%, 更に中断・終了例でもHbA
1C は低下し, 血清脂質の改善も確認できたことから, NIDDM治療に有用で, 効果的な指導手段であることが示唆された。
6) NIDDM治療に必要な栄養指導期間は, 特に指導前γ-GTP・TGが高値で, 飲酒総量>1,750kcal/週例と菓子頻度>3回/週と多い例で, 少なくとも12か月以上継続的に行う必要があると考えられた。
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