適温給食実現のための1方法として温蔵庫による料理の保温を取り上げ, その品質管理を前提に, 適温給食における作業管理について検討した。実験は, 庫内温度を50, 60, 70, 80℃に, 保温時間を30, 60, 90, 120分に設定して, 温蔵庫内の温度分布, 5種の料理の設定温度別の品温及び保温中の料理の品質変化についての分析を行った。結果は次のとおりである。
1) 温蔵庫内の温度は, サーモスタットにより, 設定温度プラス20℃の変化を示した。その周期は設定温度により異なるが, 45~70分であった。
2) 保温中の品温が庫内温度の変化に伴って変化した料理は, さばの立田揚げ, フライドポテトで, 変化のみられなかったものは, ハンバーグ, かぼちゃの煮物であった。料理により, 庫内温度の変化から受ける影響に違いがみられた。
3) 料理の保温による重量及び水分変化は, 設定温度が高く, また保温時間が長いほど, 著しい傾向がみられた。保温による品質変化は, 水分蒸発の影響が大きいことが明らかになった。
4) 保温による試料中の総ビタミンC残存率の変化は, 保温前の試料中含量の多少により, その傾向が異なった。含量の低かったフライドポテトでは, 著しい減少傾向がみられた。
5) テクスチュロメーターによる測定の結果, 保温によって硬くなった料理は, さばの立田揚げ, フライドポテトで, 軟らかくなったものは, ピーマン油通しであった。
6) 官能テストの結果, かぼちゃの煮物は保温による評価の低下はみられなかったが, その他の料理では明らかな低下がみられた。特に, 色, 外観の評価の低下が著しかった。
7) 本実験の結果から, 5種の料理における, 温蔵庫保温による設定温度及び保温時間の限界は, ハンバーグでは各温度において30分, さばの立田揚げでは60℃で120分, 70℃及び80℃で60分, フライドポテトでは各温度で60分, ピーマン油通しでは60℃及び70℃で60分, 80℃で30分, かぼちゃの煮物では各温度で120分であった。
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