栄養学雑誌
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77 巻, 4 号
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研究ノート
  • 小林 仁美, 金子 健彦, 多賀 昌樹
    原稿種別: 研究ノート
    2019 年 77 巻 4 号 p. 77-84
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー

    【目的】月経前症候群(PMS)の発現には様々な因子が関連しており,これまでに睡眠時間や栄養素摂取,欠食の有無,やせや肥満,運動習慣などとの関連が報告されている。食物には様々な栄養素が含まれていること,時代と共に食事内容は変化することを考えると,食事を選択する際の意識・傾向を含め,継続的,多角的な視点でPMS症状との関連を解析する必要がある。そこで本研究では,女子大学生を対象にPMS症状と食生活習慣の関連について検討することを目的とした。

    【方法】52名の女子大学生を対象とし,PMS症状に関する調査,食事調査および食生活習慣調査を実施した。PMS症状はMDQ(Menstrual distress questionnaire)を用いて評価し,MDQスコアと栄養素および食品摂取量の相関を求めた。平均値の比較には対応のないt検定を行った。

    【結果】MDQスコアと栄養素等摂取量との相関を検討したところ,動物性たんぱく質,動物性脂質,飽和脂肪酸,飽和脂肪酸エネルギー比率,コレステロールと正の相関,炭水化物と負の相関が認められた。食品摂取量では肉類,卵類,乳類と正の相関,穀類および砂糖・甘味料類の摂取量と負の相関が認められた。また,食生活習慣調査では食品の組み合わせや調理方法を考慮しない者はMDQスコアが高く,PMS症状が強かった。

    【結論】栄養素や食品の摂取量とPMS症状の程度には相関が認められることが明らかになった。食生活習慣の改善はPMS症状を緩和するために有効な手段の一つである可能性が示唆された。

  • 千田 茉登佳, 五味 郁子
    原稿種別: 研究ノート
    2019 年 77 巻 4 号 p. 85-96
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー

    【目的】栄養改善プログラムについて,アウトカム評価に加え,プロセス及びストラクチャー評価の方法を検討,実施した。

    【方法】高齢者29人(男性7人,女性22人,平均年齢71.8±4.9歳)を対象に,プログラム前後に血液検査値,身体測定値,栄養摂取量,主観的健康感,食生活に対する行動変容ステージについてデータを得た。プログラム実施後には,アウトカム評価に加え,介護予防事業のガイドラインや先行研究を参照して作成したプロセス評価とストラクチャー評価についての事業評価を行った。

    【結果】31.0%の者がプログラム後に食生活に対する行動変容ステージが有意でないが改善傾向を示した(p=0.129)。エネルギー摂取量は 2,124±746 kcalから 2,398±808 kcal,たんぱく質摂取量も95.7±41.4から 111.7±41.1 g/日に有意に増加した(いずれもp=0.005)。また,低栄養傾向を示す者では,BMIや血清アルブミン値の低下を抑止した。プロセス評価,ストラクチャー評価は,2者の管理栄養士により行われ,評価点の一致・不一致の確認をとおして,プログラムの課題や成果が得られた要因について抽出することができた。

    【結論】栄養改善プログラムにより,食生活に対する行動変容ステージや栄養摂取量の改善といったアウトカムを得ることができた。また,プロセス及びストラクチャー評価の実施により,プログラムの品質改善に寄与すると考えられた。

資料
  • 小林 道
    原稿種別: 資料
    2019 年 77 巻 4 号 p. 97-104
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー

    【目的】地域住民を対象として,炭水化物エネルギー比率(%E)による食品群別摂取量・栄養素等摂取量の特徴を明らかにすることを目的とした。

    【方法】2018年7月~8月に,北海道江別市に在住する20歳以上の市民3,000名を対象として自記式質問紙調査を行った。研究対象者は層化無作為抽出によって選ばれた。最終的な解析対象者は1,431名であった。質問内容は,性・年齢などの基本属性,既往歴の有無,生活習慣,簡易型食事歴質問票(BDHQ)等による食習慣とした。エネルギー産生栄養素バランスは,炭水化物%Eを四分位値により4群とし,食品群別摂取量及び栄養素摂取量との関連を検討した。

    【結果】食品群別摂取量では,炭水化物%Eが高まるほど,穀類が有意に増加する傾向にあり,そのほかの食品群の摂取量は有意に低下した。加えて,炭水化物%Eが低くなるほど,栄養素摂取量は有意に増加する傾向が認められた。

    【結論】炭水化物エネルギー比率が低い群は,高い群と比較して栄養素摂取量が全般的には良好な傾向を示した。また,男性では炭水化物%Eが低い群で高血圧の有病率が低かったことから,野菜を中心とした多様な食品を摂取すること及び飲酒量を減少させることにより炭水化物%Eの増加を抑えることが,高血圧症のリスク低減に寄与する可能性がある。

  • ─首都圏の飲食店における実測調査と外食チェーン店の公開情報を用いた分析─
    新保 みさ, 赤松 利恵, 齋木 美果, 藤崎 香帆里
    原稿種別: 資料
    2019 年 77 巻 4 号 p. 105-112
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー

    【目的】外食における米飯のポーションサイズを調べることを目的とした。

    【方法】東京都,神奈川県,埼玉県(以下,首都圏とする)の飲食店22店舗と外食チェーン店22件を対象とした。首都圏の飲食店では,定食(米飯とその他2品以上の料理を含む)の米飯量や米飯の食器の大きさ,その他の料理の重量を測定し,栄養計算を行った。外食チェーン店では,各店のホームページから米飯量や米飯のエネルギー量,米飯の食器に関する情報を抽出した。

    【結果】首都圏の飲食店では,米飯の最小値が 142 g,最大値が 341 gで,中央値(25,75パーセンタイル値)は188(163,222)gだった。外食チェーン店では,最小値が 180 g,最大値が 250 gで,中央値は199(181,228)gだった。首都圏の飲食店と外食チェーン店ともに,平皿よりも茶碗で米飯を提供している店が多く,首都圏の飲食店では,米飯量と茶碗の直径(ρ=0.625,p=0.006)に正の相関があった。

    【結論】首都圏の飲食店の米飯量は 160 g以上 200 g未満が多く,外食チェーン店の米飯量は 180 g以上 200 g未満が多かった。首都圏の飲食店の米飯量の中央値は外食チェーン店の米飯量よりも少ないが,店ごとのばらつきが大きく,適正範囲外の店もあった。米飯は平皿よりも茶碗で提供している店が多く,首都圏の飲食店では,茶碗の直径が大きいほど,米飯量が多かった。

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