Mark・Wilson らの費用-効果分析法を参照して, 外来通院中の高脂血症患者の治療として行った栄養群 (N群: 83), 栄養薬物群 (N-D群: 17), 薬物群 (D群:20) の別に, 総コレステロール (TC)高値例 (高TC例; TC≧220mg/d
l), トリグリセリド (TG) 高値例 (高TG例; TG≧150mg/d
l) を対象に, 12か月後の効果と年間費用〔生活習慣病とそれに伴う疾患治療のための全薬物料と処方箋料, 調剤料, 栄養指導料 (月1回当たり1,000円) の医療費の総和〕及び費用効果を評価・検討した。
全対象における年間費用は, 合併症の件数・薬物数と相関し, N群では42,122円となり, N-D群・D群と比べ約9万~10万円少なかった。
高TC例全例では, 治療法によるTC低下率には差異を認めなかったが, 治療前のTCが<260mg/d
l例では栄養群が-14.8±10.9%で, 薬物群の-4.7±9.7%に比し明らかに大きかった (
p<0.04)。N群ではN-D群・D群に比べてTC≧10%低下者の割合は7~8%多く, 費用効果費は61,748円となり, 約14万~16万円少ない費用で効果が得られた。10,000円当たりで得られる効果者の割合もN群では16.2%で, ほかの治療法より約11~12%多く, 効果者を1%作るための費用は617円となり, 約1,400~1,600円少なかった。TC<260mg/d
lの例ではN群がD群に比し低下率が大きく, <65歳では≧65歳に比べて年間費用は少なかった。
高TG例におけるTG低下率は, 各治療法間に差がみられなかったが, N群・N-D群ではD群より多い傾向にあり, TG≧10%低下者割合も栄養指導を行った群で多かった。その結果, 費用-効果費は, N群では54,367円で, N-D群より約8万円少なく, D群に対して約18万円少ない費用で効果を得た。
治療前のTC<260mg/d
l, <65歳, 高TG例に対するN群では, N-D群・D群に比べて安価で大きな効果が得られ, 冠動脈疾患, 重篤な合併症がない限り, 食事療法を第1選択肢にすることにより医療費削減が図れることが示唆された。
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