栄養学雑誌
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72 巻 , 5 号
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総説
  • 由田 克士
    2014 年 72 巻 5 号 p. 221-232
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/19
    ジャーナル オープンアクセス
    社会の中核を成す勤労世代の生活習慣病の予防対策は,短期的な社会・経済に及ぼす影響だけではなく,中・長期的にわが国の医療や保険システムにも関わる問題であり,重要な課題である。生活習慣病の予防を目的とした栄養疫学では,対象となる個人や集団の栄養・食生活を規定する諸状況と身体状況を可能な限り正確にとらえ,客観的に評価することが必要である。このため,調査の信頼性や妥当性を高めるための研究デザインや精度管理を徹底することが求められる。
    勤労男性においても日常の生活習慣の状況は栄養・食生活と関連深い。例えば多量に飲酒する習慣を持つ集団では,非飲酒・少量飲酒集団に比べ,見かけのエネルギー摂取量は増加するものの,アルコール飲料以外から摂取する食事は減少する。このため,望ましい栄養素摂取は困難となるばかりでなく,肝機能や血圧などの臨床成績は悪化する。血圧について長期的に集団を観察すると,多量に飲酒する習慣を持つ集団は,ベースラインだけではなく,その後の血圧の上昇度割合も高くなっていた。
    職域に勤務する成人に対する生活習慣病の予防のための対策は,職域の状況や個別の興味・理解状況に応じて,適切な栄養教育媒体を選択し,その内容を工夫するとともに,一定期間での評価と改善が求められる。また,ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチの内容を連動させることも望まれる。
原著
  • 秦 希久子, 稲山 貴代, 松下 宗洋, 篠田 粧子
    2014 年 72 巻 5 号 p. 233-242
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/19
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】在宅脊髄損傷者を対象に,1)周囲からの支援および社会参加の有無,2-1)周囲からの支援と社会参加の有無を組み合わせた4群,2-2)周囲からの支援と社会参加の相乗効果,と食に関する行動,中間要因,準備要因との関連を検討した。
    【方法】公益社団法人全国脊髄損傷者連合会会員2,731名を対象に,郵送法による自記式質問紙調査を実施した。回答が得られた1,000名(回収率36.6%)のうち40歳以上の男性646名を解析対象とした(有効回答率23.6%)。食に関する行動(6項目),中間要因(2項目),準備要因(7項目)をそれぞれ従属変数に,周囲からの支援と社会参加およびこれらの組合せを独立変数として二項ロジスティック回帰分析を行った。相乗効果の有無は交互作用検定を実施した。
    【結果】1)周囲からの支援は食に関する行動,中間要因,準備要因のほとんどの変数で有意差がみられ,支援ありでオッズ比が高かった。社会参加と有意差がみられた変数は3項目のみであった。2-1)支援あり・参加あり群において多くの変数に関連がみられた。2-2)相乗効果がみられた変数は1項目のみであった。
    【結論】周囲からの支援と社会参加の双方があることが最も望ましいが,社会参加がなくても周囲からの支援があることで良好な食生活につながること,周囲からの支援と社会参加は食生活においては相乗効果がみられないことが示された。
  • 新保 みさ, 仲村 絵里, 吹越 悠子, 赤松 利恵
    2014 年 72 巻 5 号 p. 243-250
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/19
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】勤労者における目標指向性と生活習慣の関連を検討するために,目標指向性の高い者と低い者の生活習慣を比較すること。
    【方法】2011年8月,A社健康保険組合の被保険者4,462名を対象に横断的な自己記入式質問紙調査を実施した。質問項目は,属性,体格,目標指向性,健康を考えた生活,生活習慣であった。目標指向性は「将来のためを考えて今から準備していることがある」などの5項目(5段階)でたずね,合計得点を算出した。男女別に,目標指向性の合計得点の中央値で対象者を2群に分け,中央値以下の者を低群,中央値より高い者を高群とした。この2群の属性,体格,健康を考えた生活についてχ2検定,t検定を用いて比較した。さらに,目標指向性を従属変数,生活習慣を独立変数に投入し,単変量・多変量ロジスティック回帰分析を行った。
    【結果】有効回答者は3,031名(67.9%)で,男性が1,258名(41.5%)だった。年齢は40歳代が最も多かった(926名,31.8%)。目標指向性の高群は低群と比べて,男女ともに同居している者,既婚の者が多く,BMIは有意な差がなかった。また,高群の方が健康を考えた生活ができていると回答した者の割合が高かった。生活習慣は,多変量解析の結果,高群には,男性では身体活動を1時間以上行っている者[オッズ比(95%信頼区間)=1.85(1.37~2.48)],女性では飲酒量が1合未満の者[1.41(1.12~1.78)]の割合が高かった。
    【結論】目標指向性の高群は,男女ともに健康を考えた生活ができているという認識をもち,生活習慣では,男性は身体活動が多く,女性は飲酒量が少ないという特徴が示された。
短報
  • 新宅 賀洋, 下口 愛未, 春木 敏
    2014 年 72 巻 5 号 p. 251-261
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/19
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】地域在住女性高齢者の有用な食生活支援に向けての基礎的資料を得ることを目的として,配食・会食サービス利用者の実態よりその利点と課題を検討する。
    【方法】A市社会福祉協議会実施の配食・会食サービスを利用している女性高齢者(配食45人,会食88人)を対象とし,身体・生活状況,サービス利用状況などの質問紙調査を行い,連続変数はStudentのt検定,カテゴリー変数はχ2検定により解析した。配食弁当または会食料理と献立表の提供を受け,管理栄養士が食事サービング数を評価した。
    【結果】配食・会食サービス利用者は独居が多かった。配食・会食サービスは食事(栄養素)の供給源となり,両利用者で食事を全部食べる者のサービス満足度は高かった。配食サービス利用者は健康状態の良くない者が多く,また外出しない傾向にあった。会食サービスは利用者にとって交流の場となり有用な外出機会となっていた。食事サービング数評価では,1食の目安に比べ会食より配食で主食のサービング数が多かった。
    【結論】配食・会食サービスは,女性高齢者にとって食事(栄養素)の供給源であり,加えて配食サービスは食が確保できる安心感を,会食サービスは外出機会およびコミュニケーションの場の提供につながり,有用な食生活支援となっていた。今後に向けて,食事サービスの充実および利用者の介護予防支援へのさらなる取り組みが,配食・会食サービスに求められる。
資料
  • 酒井 徹, 中本 真理子, 中本 晶子, 首藤 恵泉, 小林 ゆき子, 土居 幸雄, 木戸 康博
    2014 年 72 巻 5 号 p. 262-271
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/19
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】管理栄養士および栄養士養成施設において管理栄養士・栄養士免許を有する教員の数,教員の学位取得状況,各養成施設において教員に求められる知識や技能等を明らかにする。
    【方法】教員の学位取得状況,教員に求められる知識や技能および担当科目等の基礎情報に関する質問用紙を作成し,2013年2~3月に全国の管理栄養士および栄養士養成施設に郵送した。
    【結果】回答が得られた施設は,管理栄養士養成施設78校(回答率66.1%),栄養士養成施設102校であった(回答率68.5%)。教員の年齢区分では管理栄養士および栄養士養成施設共に30~49歳が最も高かった。管理栄養士養成施設で管理栄養士免許を有する教員で博士の学位を有する者の割合は年齢層が上昇するごとに増え30歳以上では約4割程度であった。管理栄養士養成施設において管理栄養士免許保有教員のうち修士または博士の学位を有するものは,20~29歳42.5%,30~49歳75.7%,50~65歳66.5%であった。栄養士養成施設において管理栄養士免許を有する教員で博士の学位を有するものの割合は30歳以上で約2割程度であった。栄養士養成校において管理栄養士免許保有教員のうち修士および博士の学位を有するものは,20~29歳28.4%,30~49歳47.4%,50~65歳42.0%であった。養成施設が教員に求める知識や技能に関しては,「教育」が最も高く,エフォートに対する割合としては50~59%と回答する施設が最も多かった。
    【結論】管理栄養士および栄養士養成施設における管理栄養士または栄養士免許を有する教員の年齢構成,学位取得状況等の基本情報が得られた。また養成施設が教員に対して求める知識や技能として最も高いのは「教育」であった。
  • 荒井 裕介, 林 芙美, 佐藤 ななえ, 吉池 信男
    2014 年 72 巻 5 号 p. 272-280
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/19
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】食品製造事業者における加工食品の栄養成分表示実施の現状や食品表示法に基づき義務化された場合の課題等を把握し,栄養成分表示義務化に向けての支援方策を検討する基礎資料を得ることを目的とした。
    【方法】首都圏近郊の政令指定都市A市において加工食品製造に関する食品衛生法の営業許可を受けていた全277事業者を対象に,2013年10月に郵送法による質問紙調査を実施し,経営形態や規模別に比較した。
    【結果】回収率は47.9%であった。栄養成分表示を行っている事業者は10.4%であった。栄養成分表示を行っていない理由は,必要性を感じないとの回答が最も多かった。食品表示法の成立,栄養成分表示義務化の検討に対する認知度は,中大規模会社と比較し,小規模会社,自営業,非営利団体で低かった。栄養成分表示義務化の課題は,小規模会社,中大規模会社では,人的,費用の負担増加,容器包装のスペースが限られているとの回答が多かった。自営業では,具体的な手順を知らない,相談先が分からないとの回答が多かった。栄養成分表示が義務化された場合に行政や業界団体等からの必要な支援は,すべての経営形態において,経費の補助,事業者自らが表示を行う際に参考となる資料や教材の提供との回答が多かった。
    【結論】栄養成分表示の義務化に向けて,食品表示法そのものの周知と,栄養成分表示を行うための具体的な資料の提供や身近な相談場所の確保が必要である。
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