イネもみ枯細菌病菌はイネ葉身では接種,湿室保持直後わずかに検出されただけであったが,イネ葉鞘から長期間検出された。下位葉葉鞘から上位葉葉鞘への病原細菌の移行を調べるため,出穂期22日前に病原細菌懸濁液を噴霧接種した結果,接種葉鞘,その上位葉鞘(接種時未抽出)および止葉葉鞘から病原細菌が検出された。検出された菌量は接種葉鞘,その上位葉鞘(接種時未抽出)では接種濃度に関係なく,生重1g当り約10
6cfuであったが,止葉葉鞘では生重1g当り約10
3cfu検出されただけであった。1株内の葉鞘ごとの病原細菌の分布様式を調べるため,6葉期のイネに接種した結果,出穂期13日前の最上位展開葉葉鞘からは供試した2株の14葉鞘中13葉鞘から病原細菌が検出された。出穂期2日前では,止葉の3葉下位に当たる全供試葉鞘から病原細菌が検出されたが,同一茎の止葉葉鞘では9葉鞘中2葉鞘のみから病原細菌が検出され,菌が検出された2茎の止葉葉鞘のうち1茎の葉鞘内の穂からも菌が検出された。葉鞘から検出される病原細菌量は各葉鞘毎に異なり,最大で生重1g当り約10
6cfuであり,それらは対数正規分布していることが示唆された。出穂期41日前に病原細菌を噴霧接種した結果,10
7cfu/ml濃度接種区では接種後出穂期までの全生育期間を通じて,最上位展開葉の葉鞘から菌が検出されたが,接種濃度が低くなるほど検出頻度は低下し,発病度では10
3cfu/ml接種区では著しく低く,出穂期41日前の病原細菌濃度が上位葉鞘への菌の移行に影響していることが示唆された。以上から,本病原細菌は葉鞘に長期間生存し,その病原細菌が本病の伝染源としてきわめて重要であることが考えられる。
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