1971年夏季, 大阪府南部の7保健所で, 三歳の男女児各々200名とその母親400名に面接し嗜好調査を行なった。36種の日常繁用食品の嗜好の度合を, 好き (+2), ふつう (+1), いやいや食べる (-1), 全然食べない (-2), に分けて集計し検討した。
1. 個人別嗜好度を平均でみると, 男女児群の間, および男児母群と女児母群との間では差が認められなかったが, 男児群とその母群との間, および女児群とその母群との間では母群側に (+) が多くなっていた。
2. 個人別嗜好度では男女児群の間に差を認めなかったが, 男児群とその母群および女児群とその母群との間では嗜好に差が認められた。
3. 食品別にみた嗜好度の平均も, 男女児稚の間, 女児群と母群との間では差は認められなかったが, 男児群と母群との間では差が認められた。
4. 男児群と女児群との間では, バター・マーガリン, マヨネーズ, トマト, ねぎの4食品, 幼児群とその母群との間では鶏肉以外の35食品に, 嗜好度の差が認められた。
5. 母親の全然食べない食品は, その幼児の嗜好に強い影響を与えていた。
すなわち, 三歳児の嗜好は個人別, 食品別共に男女差は少ない。三歳児とその母親との嗜好の違いは, 成人するまでに種々の食品に馴れること, 一般に食生活が洋風化して来たこと, また母親の栄養教育の成果などから生じた結果と推察された。しかし, 母親の嫌う食品はやはりその子の嫌う食品になる可能性の大きいことは, 明らかであった。
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