以上の結果を要約すると次の如くである。
1) 消防署員の消火作業のエネルギー代謝率はいずれも非常に高く, RMR 8~38の間にあり, 多くは13~19の間にあった。
2) 平均年令32.4才, 平均体位は身長162.4cm, 体重57.0kgであって, 日本人の体位基準値に比しやや高いが, 昭和37年度の国民栄養調査成績における平均体位とほぼ等しい値であった。
3) 24時間勤務中の生活時間内容は睡眠 (平均6.6時間), 睡眠と休息, 教養, 娯楽等 (RMR 0.0~0.2) の合計時間は約10時間であって, それ以外の9~17時間は日常労作或いは勤務についており, 非常に長い労働時間である。
4) 出火出場のない日の主作業は隊員別にみると, 隊長: 机上事務その他, 警防員: 机上事務, 望楼勤務, 機械整備その他, 警防機関員: 車輛運転, 車輛整備, 机上事務その他, 救急隊員: 救急出場, 机上事務その他, 救急機関員: 救急出場, 車輛整備, 机上事務その他, 梯子専従員: 梯子車整備, 訓練, 机上事務その他であって, 出火出場のない日の主作業はRMR 0.5~2.5の間にあり, 労働強度区分は“軽い”から“中くらい”に属している。
5) 上記の如き時間内容における消費熱量は2196Cal~3151Cal平均2542Cal (基礎代謝量1Cal/分) となり, これから所要熱量を求めると2365Cal~3334Cal平均2804Calである。これは日本人の労働強度別所要熱量の“軽い”から“中くらい”に相当する。
6) 出火および救急出場の際の火災規模別の出場時間および消費熱量は, 不掛 (出場時間15分) 63Cal (1分当たり4.31Cal), 30分放水 (70分) 410Cal (1分当たり5.87Cal), 60分放水 (120分) 617Cal (1分当たり5.14Cal), 90分放水 (180分) 1358Cal (1分当たり7.54Cal) で, これに特殊作業 (要救助者のある場合) はさらに高い消費熱量を示し, いずれも出火出場の作業強度は非常に高く, 平均RMR 3.2~7.7は労働強度区分の“重い”から“非常に重い”に相当するものである。
7) 救急出場の際の出場時間および消費熱量は未収容 (出場時間15分) 39Cal (1分当たり2.62Cal), 収容 (52分) 134Cal (1分当たり2.59Cal) であって平均RMR約1.5は“軽い”に属する。
8) 東京消防庁 (23区内) の規模別火災発生件数, 出場隊数および出場時間, 消費熱量より, 消防署員の年間1人1日当たり消費熱量を求めると, 年間1日当たり出場時間は約16分, 平均1日当たり消費熱量は90~100Cal, 所要熱量は100~110Calであった。
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