【目的】本研究は,日本人における妊娠中の鉄栄養状態の間接指標として鉄剤処方の有無に注目して,鉄剤処方の有無別に妊娠前体格および妊娠中の食品や栄養素摂取状況との関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】妊婦250名を対象に生活習慣・食習慣調査および食事調査を実施した。食事調査は簡易型自記式食事歴法質問票 (BDHQ) を用いた。また,医療診療録より妊娠・出産時の身体状況 (鉄剤処方の有無含む) についてのデータ収集を行った。鉄剤処方の有無を従属変数,妊娠前Body Mass Index (BMI) および妊娠前理想のBMIを独立変数として多重ロジスティック回帰分析を行った。
【結果】対象者の56.9%において妊娠中に鉄剤処方が行われており,その処方時期は妊娠13週前後7.7%,妊娠30週前後49.3%であった。鉄剤処方と妊娠中の食品群別摂取量や栄養素摂取量との関連はみられなかったが,鉄剤処方と妊娠前BMIおよび妊娠前理想のBMIとの間に有意な関連がみられた。妊娠前BMI「22以上」に比べて,「20以上21未満」のオッズ比4.67 (95%CI: 1.87~11.69),「19以上20未満」のオッズ比4.27 (95%CI: 1.70~10.70) と有意にオッズ比が高かった。
【結論】妊娠前にBMIが 21 kg/m2 未満である妊婦は妊娠中に鉄剤を処方される可能性が高く,妊娠貧血に妊娠中の鉄摂取とは関係なく妊娠前体格が影響していることが明らかになった。妊娠貧血の予防には,妊娠中の鉄を含む適正な食事摂取も重要であるが,妊娠前から適正な体格であることも重要と考えられた。
【目的】本研究は女子大学生の脂質および脂肪酸別摂取量を推定し,欠食との関係性を検討するとともに各種脂肪酸摂取量に対する寄与率の高い食品群を検討することを目的とした。
【方法】女子大学生40人を対象に,1日分の写真撮影法と24時間思い出し法を併用した横断研究を実施した。日本食品標準成分表2020年版,脂肪酸成分表編等を用いて食品の選定と栄養価を計算し,得られた数値から欠食の有無による脂質・脂肪酸摂取量の差,および各種脂肪酸の摂取量に寄与率の高い食品群を検討した。
【結果】脂質の摂取量平均値は 59.4±20.8 g,飽和脂肪酸は 15.5±6.3 g,一価不飽和脂肪酸では 16.1±8.2 g,多価不飽和脂肪酸のうちn-6 系は 9.1±4.1 g,n-3 系では中央値 (25,75パーセンタイル値) が1.6 (1.0,2.4) gであった。欠食がある者はない者に比べて脂質,飽和脂肪酸,多価不飽和脂肪酸の摂取量が有意に低かった (p=0.009,p=0.001,p=0.009)。飽和脂肪酸最大の摂取源は「肉類 (37.6%)」,n-6,n-3 系多価不飽和脂肪酸ではそれぞれ「油脂類 (22.0%)」,「魚介類 (26.7%)」であった。
【結論】欠食者は脂質,飽和脂肪酸,多価不飽和脂肪酸の摂取量が低く,飽和脂肪酸摂取量に対する寄与率の高い食品群は肉類,n-6 系多価不飽和脂肪酸では油脂類,n-3 系では魚介類であった。
【目的】認知症とビタミンB12,葉酸の関連は知られているが,認知症の重症度との関連をみた研究はない。そこで,認知症患者の食事からのビタミンB12・葉酸摂取量と,認知症の重症度や原疾患によって血液中ビタミンB12・葉酸濃度に差はあるのか検討した。
【対象と方法】対象者は,グループホーム入居者のうち,男性と経管栄養実施者を除く女性14人。認知機能評価,日常生活動作評価,食事調査,血液中ビタミンB12・葉酸濃度測定を実施した。
【結果】ビタミンB12 と葉酸の摂取量は,それぞれ中央値で4.1 (4.1,5.6) μg/日,266 (257,307) μg/日であり,対象者全員が「日本人の食事摂取基準 (2020年版) (以下,食事摂取基準)」の推奨量を上回っていた。血液中の,ビタミンB12 濃度は平均値で 261±118 pg/ml,葉酸濃度は平均値で 6.9±2.9 ng/mlであった。対象者を重度認知症群と中等度~軽度認知症群に分け比較したところ,ビタミンB12・葉酸摂取量には差がなかったが,血液中ビタミンB12 濃度は,重度認知症群が中等度~軽度認知症群よりも高い傾向を示した (p=0.057)。
【結論】グループホーム入居認知症患者において,食事からのビタミンB12・葉酸摂取量は食事摂取基準の推奨量を上回っていた。しかし,重度認知症群は中等度~軽度認知症群と比較して血液中ビタミンB12 濃度が高い傾向を示した。
【目的】20~40歳代勤労者を対象に,野菜摂取状況 (野菜料理摂取皿数) に関連する要因を中心に検討することを目的とした。
【方法】2019年2~3月に青森県と秋田県の21の事業所の協力を得て,20~49歳の男性1,165人,女性692人を対象に,オンライン調査を実施した。調査項目は,野菜料理摂取皿数,野菜摂取に関連すると考えられる要因 (知識,態度,スキル,食環境へのアクセスのしやすさ,野菜摂取への影響度,食習慣) と基本属性とした。野菜料理摂取皿数の2群 (3皿以上と3皿未満) を従属変数とし,上記の要因を独立変数,基本属性を調整変数としたロジスティック回帰分析を行った。
【結果】男女ともに野菜料理摂取皿数と有意に正の関連があった要因は,野菜の適切な摂取量についての正しい知識を有すること (野菜料理皿数:男性オッズ比5.12[95%信頼区間3.63~7.23],女性4.77[3.23~7.06];野菜の重量男性2.24[1.65~3.03],女性2.28[1.54~3.38]),栄養や食事に対する関心があること (男性2.33[1.41~3.87],女性8.69[2.62~28.83]),野菜を好むこと (男性4.58[2.08~10.08],女性3.81[1.29~11.21]),野菜料理を選ぶスキルがあること (男性2.51[1.51~4.20],女性2.27[1.02~5.04]),朝食を欠食しないこと (男性1.99[1.35~2.94],女性2.44[1.47~4.07]) であった。
【結論】20~40歳代勤労者の野菜料理摂取皿数に関連があった要因 (知識,態度,スキル,食習慣) に対する教育介入などの実施は,20~40歳代勤労者の野菜摂取量増加に繋がるかもしれない。