腹腔鏡下生検により肝組織所見を確認したHBs抗原陽性献血者22名の免疫学的検索を行なった.組織学的には1例が軽度の急性ウイルス肝炎像を示したほか,全例が非特異的病変を示し,臨床化学的検査成績にも軽度の異常を示すものが見られた.しかしHBs抗原の濃度は高く,動揺せず,HBs抗体は検出されず,顕性の肝疾患は見られないことから,これらのHBs抗原陽性献血者ではpersistent tolerant infectionが成立しているものと考えられた.IgG, IgMの軽度の増加,C
3, C
4の軽度の減少を示すものが見られ,Bリンパ球のHBウイルスに対する軽度の反応が予想された.Tリンパ球のHB抗原に対する反応はマクロフアージ遊走阻止試験によっては証明できなかった.Tリンパ球の相対的減少とBリンパ球の相対的増加を示すものが少数ながら見られたが,ただちに結論は下せなかった.Tリンパ球のPHAに対する反応が低下しているものが多かったが,これはHBウイルス感染に起因する血清中の阻止因子によるものと考えられ,これがTリンパ球の非特異的機能を抑制している可能性がある.自己抗体が検出されたものがあるが,これはHBウイルス持続感染の結果として,あるいはTリンパ球機能抑制の反映として理解できる.HBs抗原asymptomatic carrierにおいてはHBウイルスに対するcomplete toleranceは成立しておらず,またHBウイルス持続感染によると思われる免疫異常が見られた.
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