肝臓
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64 巻, 10 号
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総説
  • 小森 敦正
    2023 年 64 巻 10 号 p. 466-475
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/12
    ジャーナル フリー

    原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitis;PBC)は,慢性進行性自己免疫性肝疾患である.2000年代になりPBC診療の焦点は,ursodeoxycholic acid(UDCA)不応例に向かっている.Bezafibrateおよびobeticholic acidのadd-on投与が確立し,UDCA不応例の治療も進歩しているが,次世代add-on薬の開発,ならびにdual add-on療法の評価など,add-on不応例の一掃を目標とした試みが現在も展開されている.一方で,抗ミトコンドリア抗体陰性PBCおよびPBC-自己免疫性肝炎overlapの診断,治療反応と予後の予測,患者報告アウトカム(掻痒症)への対応と治療にも進歩がみられるが,課題も残っている.PBC診療の進歩とアンメットニーズ,次世代個別化医療への展望について概説する.

特別寄稿
  • 村川 美也子, 星川 恭子, 中川 美奈, 田中 聡司, 由雄 祥代, 須田 剛生, 阿部 和道, 黒田 英克, 飯島 尋子, 日本肝臓学会 ...
    2023 年 64 巻 10 号 p. 476-486
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/12
    ジャーナル フリー

    第44回日本肝臓学会東部会のキャリア支援・ダイバーシティ推進委員会関連企画の一環として,学会参加者を対象にキャリア支援・学会・SNSに関するアンケート調査を実施し,238名(男性78%,女性22%,40歳未満21%)から回答を得た.「希望するキャリアを継続する際の大きな障害」について最多回答は「時間的な余裕」(61%),次いで「支援体制の不備」(43%)であり,「キャリア支援・ダイバーシティ推進において重要だと思うこと」は「働く環境の整備」(58%)が最多だった.また,学位の取得や留学については肯定的な意見が多かった(学位81%,留学75%).必要な学会の取り組みとしては,学術集会・教育講演会のハイブリッド開催(74%)や単位更新のweb化(51%)の要望が多かった.さらにSNSを利用している割合はFacebook 44%,Twitter 32%であり,Twitterは若い年代で多かった.

原著
  • 藤原 美子, 瓦谷 英人, 藤井 智津子, 和田 和美, 岡田 世佳, 久保 卓也, 赤羽 たけみ, 簗瀬 公嗣, 仲川 喜之
    2023 年 64 巻 10 号 p. 487-496
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/12
    ジャーナル フリー

    2019年から肝炎医療コーディネーター(肝Co)活動による肝炎ウイルス陽性者の拾い上げを開始した.2019年から2021年までは肝炎ウイルス(HBV,HCV)陽性者に対して検査依頼医へ電子カルテのアラート機能を用いたメッセージ記載による専門医への受診勧奨が主な取り組みであった.しかし,検査結果を伝えられていないHCV陽性者は2019年の52.5%(32/61)から2021年は26.7%(12/45)と減少したものの,0%とならず新たな対策が必要と考えた.2022年に多職種で構成された「肝炎対策チーム」を立ち上げ,肝炎ウイルス陽性者確認後の流れを明確にした「フローチャート」を作成し拾い上げ活動を強化した.その結果,HCV陽性者に検査結果が伝わっていない症例は,2022年には5.3%(3/57)と著減した.「フローチャート」を軸とした肝Co活動は,多職種連携により効果的に機能したと考える.

症例報告
  • 庄司 裕佳子, 千住 猛士, 森田 祐輔, 田中 ゆき, 杉本 理恵
    2023 年 64 巻 10 号 p. 497-503
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/12
    ジャーナル フリー

    進行肝細胞癌に対するアテゾリズマブ(Atezo)+ベバシズマブ(Bev)併用療法開始直後に発症した腫瘍の胆囊穿破による胆道出血の1例を報告する.症例は70代男性.進行肝細胞癌に対して,day1に一次薬物療法としてAtezo+Bev併用療法を導入したところ,day2に心窩部痛が出現した.Day3に腫瘍の胆囊穿破による胆道出血から胆管閉塞を来したと判断し,緊急ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査)で胆道ドレナージを行った.腫瘍からの出血に対しては,day6に腫瘍血管A6に対してTAE(肝動脈塞栓療法)を施行した.Bevが胆道出血に関与したと考えられ,Atezo+Bev併用療法は中止し,レンバチニブ(Len)を導入し,その後のCTでは腫瘍の縮小を認めた.

  • 仲須 千春, 山田 眞一郎, 寺奥 大貴, 齋藤 裕, 池本 哲也, 森根 裕二, 島田 光生
    2023 年 64 巻 10 号 p. 504-509
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/12
    ジャーナル フリー

    患者は50代女性.検診の腹部超音波検査で肝S3に16×14 mm大の腫瘤を指摘され精査加療目的に当科紹介となった.既往歴・生肉食歴なし.術前の血液検査で異常なく,末梢好酸球も正常.造影CTの動脈・門脈相では辺縁に造影効果を認めるが,平衡相では造影されず,MRI T1強調像で低信号,T2強調像で低~等信号,拡散強調像でやや高信号であった.PET-CTで肝臓への集積は認めなった.悪性腫瘍の可能性を完全に否定できず,腹腔鏡下肝部分切除を施行した.病理組織学的には腫瘤全体に凝固壊死像が見られ,辺縁に線維増生を伴い,組織球が柵状に配列したpalisading granulomaであった.原因特定のために複数の染色を行ったが,病原体は同定できなかった.palisading granulomaは術前診断が困難であり,診断的治療として腹腔鏡下肝切除術は有用であると考えられた.

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