症例は75歳男性.肝細胞癌に対し肝動脈化学塞栓療法を行ってきたが,胆管浸潤による閉塞性黄疸を来した.金属ステントを肝内胆管に留置したが,2カ月後に閉塞性黄疸が再燃した.十二指腸乳頭から血液の流出を認め,内視鏡的逆行性胆管造影を施行すると胆管内は血腫で充満し金属ステントは腫瘍により閉塞していた.出血源は肝細胞癌の胆管浸潤部と判断し,肝内胆管に経鼻胆管ドレナージチューブを留置した.肝予備能や腫瘍血管の選択が難しいことなどを考慮し,緩和的放射線治療を施行した.胆管浸潤部に前後対向二門照射30 Gy/10回を開始したところ次第に血性胆汁は消失した.治療終了後,血腫が消失したことを確認し新たにinside stentを留置した.その後貧血や黄疸の再燃なく肝細胞癌の治療を継続できた.肝細胞癌による胆道出血に対し放射線治療が有効であった報告はなく,貴重な症例と考えられた.
症例は53歳,女性.両側胸水を契機にC型肝炎を背景とした非代償性肝硬変と診断された.腹部CT検査にて径25 mmの脾動脈瘤を認めたため,治療目的に当院を受診した.受診時,血小板数4.9×104/μlと減少を認めたため,ルストロンボパグの内服を行った.血小板数7.6×104/μlへの上昇を確認し,脾動脈瘤コイル塞栓術を施行した.手技による合併症やルストロンボパグによる重篤な副作用は認めずに経過した.血小板減少症を伴う慢性肝疾患症例の観血的手技施行時において,血小板輸血の代替療法としてヒトトロンボポエチン受容体作動薬ルストロンボパグが発売され観血的手技に際しての報告が蓄積されつつある.その中で,脾動脈瘤に対するコイル塞栓術施行前のルストロンボパグ投与症例の報告はこれまでになく,貴重な症例と考えられた.
経口避妊薬の服用歴のない37才女性.健診で肝腫瘤を指摘され当施設紹介.腹部超音波検査で肝に径8 cmの結節内結節構造を呈する高エコー腫瘤を認めた.MRI-T1Wで低信号,T2Wで等信号.血管造影下CTの動脈早期相で多血性,後期相で低吸収域となり,周囲にコロナ様の濃染を認めた.肝針生検標本では異型に乏しい肝細胞から成り,免疫組織化学的にβ-catenin核内集積を認め,β-catenin活性化型肝細胞腺腫(b-HCA)と診断された.肝右葉切除術施行.切除標本には結節内結節構造を呈する径9.8 cm大の腫瘤を認め,遺伝子解析の結果,内側の結節のみにTERT promoter領域の遺伝子変異を認めた.本症例は経口避妊薬非服用女性に発生したb-HCAで,結節内結節構造の内側結節のみにTERT promoter領域の遺伝子変異が認められ,b-HCAの悪性転化を考える上で興味深い症例と思われたので報告した.
症例は58歳男性.黄疸,肝機能障害,腹痛にて近医より紹介受診.採血では,黄疸,肝機能障害,好酸球の増多を伴う白血球上昇を認めた.CTでは,肝臓両葉に多発する不整形の低吸収域,十二指腸球部の浮腫性の肥厚を認めた.上部消化管内視鏡では,球部にびらんや粘膜炎症所見を認めた.内視鏡による生検,肝低吸収域の生検を実施したところ,双方共に悪性所見はなく,著明な好酸球の浸潤を認めた.好酸球性胃腸炎診断基準(腹痛等の症状,内視鏡生検での好酸球浸潤,末梢血中の好酸球増多,等)を満たし,同症と診断した.肝低吸収域もこれに伴う好酸球性の炎症性腫瘤と診断した.ステロイドによる治療を開始したところ,開始数日で採血,画像所見の改善を認めた.その後,ステロイド漸減を進め,現在は,プレドニゾロン5 mg/日にて外来管理を続けている.発症2年を経て,再発は一度もなく,内視鏡・CTなどの画像所見も正常化している.
In 2019, the number of reported cases of hepatitis E in Gunma prefecture was 1.44 per 100,000 people, which was the highest in all of Japan. We examined the clinical characteristics of 20 cases of hepatitis E reported in 2019 and analyzed the hepatitis E virus (HEV) genomes of seven sporadic cases. All HEV strains isolated from these cases belonged to subgenotype 3a and were 99.7% to 100% identical to each other within the 412-nucleotide ORF2 sequences. Of these seven cases, six had eaten raw or undercooked pig liver/intestine within the past three months, suggesting that they had been infected with a swine-derived HEV strain. When a small epidemic is suspected, HEV genome analysis should be performed to identify the cause of infection, even in sporadic cases.