肝臓
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42 巻, 8 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 寺田 邦彦, 杉山 俊博
    2001 年 42 巻 8 号 p. 389-397
    発行日: 2001/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 新妻 宏文, 長崎 太, 単 洪, 小島 敏明, 五十嵐 勇彦, 真野 浩, 上野 義之, 小林 光樹, 石井 元康, 下瀬川 徹
    2001 年 42 巻 8 号 p. 398-403
    発行日: 2001/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    IgM型HBc抗体の高感度半定量検査法であるIMx CORE-M (Abbott, USA) を用い, HBV感染の病態とIgM型HBc抗体価の相関を検討した. カットオフインデックスの平均は, B型急性肝炎 (n=41) 2.908, B型慢性肝炎急性増悪 (n=41) 0.921, HBe抗原陽性肝機能正常 (n=18) 0.184, HBe抗原陽性慢性肝炎 (n=41) 0.712, HBe抗体陽性慢性肝炎 (n=43) 0.661, HBe抗体陽性肝機能正常0.136 (n=37) であった. 急性肝炎は慢性肝炎急性増悪より有意に高いが (p<0.0001), 両者にはオーバーラップがあり, 本法のみによる完全な鑑別は不可能と考えられた. さらに, 200倍希釈血清のIgG型HBc抗体が阻止率95%以下であることも急性肝炎を示唆した. また, HBVキャリアにおいてIMx CORE-Mのカットオフインデックスが0.200以上では肝炎がある症例, 0.150未満では肝炎がない症例が大半を占めた. 本法によるB型急性肝炎診断の陽性域は, カットオフインデックス2.5以上が適当と考えられた.
  • 宍戸 昌一郎, 東條 淳, 星 奈美子, 高橋 裕太, 塩谷 康夫, 中川 貴司, 鈴木 智浩, 大平 弘正, 佐藤 由紀夫, 粕川 禮司, ...
    2001 年 42 巻 8 号 p. 404-409
    発行日: 2001/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    56歳女性. 1990年に胆道系酵素の上昇を指摘され, 近医に入院し肝生検を施行され, 原発性胆汁性肝硬変 (PBC) と診断された. 無治療で経過観察されていたが, 1997年に肝障害の増悪があり, ウルソデオキシコール酸 (UDCA) の服用で肝機能の改善が得られた. UDCA投与2年後, 同剤の休薬2カ月目に急性肝炎様の肝障害が出現し当科入院. IgG値の上昇と肝生検にて慢性活動性肝炎像が認められPBCと自己免疫性肝炎 (AIH) の overlap と診断した. UDCAに加えて, コルチコステロイドの投与にて, 肝機能は速やかに正常化し, 現在も経過観察中である. PBCの経過中に急性肝炎様にAIHを発症した症例を経験した.
  • 荒川 正博, 中村 博子, 坂田 研二, 渡邊 雅秀, 小川 浩平, 菅 偉哉, 岩永 浩三, 田宮 芳孝, 久保 保彦
    2001 年 42 巻 8 号 p. 410-413
    発行日: 2001/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肝臓に原発した純粋の扁平上皮癌の報告は極めて稀で内外の文献を集めても30例に満たない. これらの中, 硬変肝に発生したのは本例が4例目である. 症例は52歳, 男性でB型+アルコール性肝硬変で, 臨床的には肝腫瘍も疑われたが確診がつかないまま食道静脈瘤の破綻出血により死亡し, 剖検された. 剖検により硬変肝のS8領域に7×5×4cmの腫瘍があり, 組織学的に扁平上皮癌であり, 多数切片での検索でも腺癌の像はなかった. 横隔膜に直接浸潤している以外には他臓器に腫瘍は見られず, 肝原発の扁平上皮癌と診断した. 本例で着目した点は腫瘍, 非腫瘍の境界部で肝硬変の偽胆管部の細胞と腫瘍細胞が置換するように交錯していた. 免疫染色により, 胆管, 肝細胞に好染するサイトケラチンが偽胆管細胞にはもちろん腫瘍細胞にも陽性を示した. これらの所見より, この癌の発生は肝の細胞の幹細胞様のものから生じたのではなかろうかと推察された.
  • 眞方 紳一郎, 北原 賢二, 渡辺 恵子, 宮崎 耕治
    2001 年 42 巻 8 号 p. 414-419
    発行日: 2001/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Fibrolamellar hepatocellular carcinoma (FLC) の1切除例を経験したので報告した. 症例は16歳の日本人男性. 某病院で focal nodular hyperplasia (FNH) の診断にて約2年間経過観察されていたが, 腫瘍の増大傾向を認めたため, 当院紹介となった. 腫瘍は中心性瘢痕を有し, 腹部CT検査における同部位の造影増強効果と血管造影における spoke-wheel appearance 様の所見というFNHと類似した画像所見を呈した. 拡大肝左葉切除を施行し, 切除標本では腫瘍中心部に星芒状瘢痕を認めた. 組織学的には, 好酸性の胞体を有する大きな多角形の腫瘍細胞と層状構造を形成する膠原線維が介在しており, FLCと診断された. 術前画像検査では, 中心瘢痕部の造影パターンとシンチ所見がFNHとの鑑別点であった.
  • 六波羅 明紀, 田中 栄司, 植村 一幸, 山浦 高裕, 池上 俊彦, 川崎 誠治, 清澤 研道
    2001 年 42 巻 8 号 p. 420-425
    発行日: 2001/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は16歳女性. 無月経にて産婦人科受診中貧血, 肝機能異常を指摘され来院. 肝脾腫があり血液検査上軽度貧血, 凝固能低下, 肝胆道系酵素の上昇を認め当科入院となった. 腹部超音波上低エコー域と高エコー域が混在する腫瘤性病変を認め, 21G針にて腫瘍生検を施行した. 腫瘍組織では硝子様間質に沿って異型細胞が分布し, 細胞質内微少血管類似の構造も認められた. 免疫組織染色にて第VIII因子関連抗原陽性, CD 34陽性および電顕にて血管内皮細胞の構造が見られ, 肝原発 epithelioid hemangioendothelioma (EHE) と診断した. 肝移植の適応と考えられ生体部分肝移植を試みたが開腹時腹膜播種を認めたため中止した. 無月経の原因として, ホルモン検査にて黄体化ホルモン (LH) は低値であるが, ゴナドトロピン放出ホルモン (GnRH) に対する反応は正常であるため視床下部機能不全が疑われ, 肝疾患に伴う無月経が示唆された.
  • 土谷 薫, 泉 並木, 桜井 馨, 濱野 耕靖, 金澤 信彦, 板倉 潤, 朝比奈 靖浩, 野口 修, 内原 正勝, 三宅 祥三, 堺 隆弘 ...
    2001 年 42 巻 8 号 p. 426-431
    発行日: 2001/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性. 40歳時に肝機能障害を指摘され精査されたが原因不明であった. 平成12年4月上部消化管内視鏡検査施行時に食道静脈瘤を指摘され精査を行ったところ肝腫瘤を認め, 加療目的に当科紹介入院となった. HBV抗原, HCV抗体ともに陰性でAFP 1.0ng/ml以下, PIVKA II 159mAU/ml, CT上S5肝表面に直径約3cmの動脈相で強く造影される肝外に突出した腫瘤と肝部下大静脈の閉塞と石灰化を認めた. 下大静脈造影では横隔膜直下の肝部下大静脈の膜様閉塞を認め肝静脈のほとんどが閉塞しており杉浦分類Ia型 Budd-Chiari 症候群と診断した. 腫瘤はCTAで濃染されCTAPで造影が低下していたため classical type 肝細胞癌と診断された. 以上より Budd-Chiari 症候群に肝細胞癌を合併していると診断した. 肝細胞癌は脈管浸潤がないため腹腔鏡下ラジオ波マイクロ波併用熱凝固術を施行した. 術後のヘリカルCTスキャンにて十分な局所根治が確認された. 腹腔鏡所見と肝生検は Budd-Chiari 症候群に合致した所見であり, 腫瘍部生検にて中分化型肝細胞癌と診断された. Budd-Chiari 症候群では肝細胞癌の合併の報告が散見されるが, 腹腔鏡下ラジオ波マイクロ波併用熱凝固術が有用な治療法であった.
  • 唐崎 秀則, 林 孝行, 山本 孝信, 月岡 健雄, 福永 淳, 石川 勉, 尾澤 巌, 尾形 佳郎, 五十嵐 誠治
    2001 年 42 巻 8 号 p. 432-441
    発行日: 2001/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の男性で, S3, S8のHCCに対し平成10年8月, 外側区域切除及びMCTを施行した. 術後, 多発する再発病変を認め, 平成12年1月, EPI-Lpを用いて segmental TAEを施行したが, 1カ月後のCTでは腫瘍内にLpの集積を全く認めなかった. このため, 同7月, 前区域を中心にSMANCS-Lpを用いて同様に segmental TAEを施行したところ, 1カ月後のCTで腫瘍内に良好なLpの集積を認めた. さらに同9月, 後区域を中心に2度目のSMANCS-Lpを用いた segmental TAEを施行し, 腫瘍内にLpの集積を認めた. 本腫瘍は境界が不明瞭で被膜を有さず, 動脈血が優位であるにも拘わらず, 門脈血の流入も認められた中分化型肝細胞癌であった. このような特徴を有するHCCでは, SMANCS-Lpを用いたTAEが有効な治療法となり得る可能性を示した. 本症例は多様な病態を呈する個々のHCCに対して適正な薬剤選択を行う上での一助になると考えられた.
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