症例は57歳の男性で, S3, S8のHCCに対し平成10年8月, 外側区域切除及びMCTを施行した. 術後, 多発する再発病変を認め, 平成12年1月, EPI-Lpを用いて segmental TAEを施行したが, 1カ月後のCTでは腫瘍内にLpの集積を全く認めなかった. このため, 同7月, 前区域を中心にSMANCS-Lpを用いて同様に segmental TAEを施行したところ, 1カ月後のCTで腫瘍内に良好なLpの集積を認めた. さらに同9月, 後区域を中心に2度目のSMANCS-Lpを用いた segmental TAEを施行し, 腫瘍内にLpの集積を認めた. 本腫瘍は境界が不明瞭で被膜を有さず, 動脈血が優位であるにも拘わらず, 門脈血の流入も認められた中分化型肝細胞癌であった. このような特徴を有するHCCでは, SMANCS-Lpを用いたTAEが有効な治療法となり得る可能性を示した. 本症例は多様な病態を呈する個々のHCCに対して適正な薬剤選択を行う上での一助になると考えられた.
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