肝臓
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64 巻, 2 号
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総説
  • 川口 巧
    2023 年 64 巻 2 号 p. 33-43
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    2020年,22カ国32名の専門医からなるInternational Expert Panelにより脂肪肝の新概念metabolic dysfunction-associated fatty liver disease(MAFLD)が提唱された.MAFLDは脂肪肝に「肥満」,「2型糖尿病」,「2種類以上の代謝異常」のいずれかが併存している疾患概念である.代謝異常は脂肪肝の病期進展にかかわる重要な危険因子であり,その危険因子を組み入れ基準としたMAFLDはハイリスク脂肪肝患者の同定に有用と考えられる.本稿ではMAFLDの特徴を論述するとともに,MAFLDと肝関連イベント,および動脈硬化性心血管疾患や肝外悪性腫瘍などの肝外イベントとの関連について論じる.また,MAFLDが疾患啓発や脂肪肝の治療薬開発におよぼす影響について述べるとともに,疾患名に関する今後の動向についても紹介する.

原著
  • 中村 篤志, 渡邉 勝一, 吉村 翼, 石田 典仁, 渕上 綾子, 佐藤 知己, 市川 武, 奥山 啓二, 井上 征雄, 朝倉 均
    2023 年 64 巻 2 号 p. 44-58
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    MRE(magnetic resonance elastography)は肝線維症診断に有用だが,liver stiffness(LS)は成因で異なり,advanced chronic liver disease(ACLD)における役割は充分に理解されていない.我々は複数の成因を含むCLD 718例を対象に,同じLSでACLDの門脈圧亢進症が予測可能かを検討した.CLDは全ての成因でLS ≧4 kPaから血小板数が減少し,静脈瘤の合併率も有意に増加した.そしてACLDにおけるLS ≧6 kPaは,肝予備能の悪化と同期して腹水発生の独立した関連因子となり,多変量解析では腹水(≥ Grade 1)がACLDの独立した予後因子だった.本研究は,MREがあらゆる成因における門脈圧亢進症リスクの評価に有用である可能性を示した.

症例報告
  • 鈴木 孝典, 松浦 健太郎, 水野 晶紫, 名倉 義人, 藤原 圭, 片岡 洋望
    2023 年 64 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    患者は71歳男性.20XX-21年からB型慢性肝炎に対してラミブジン(LAM)100 mgによる治療が開始された.その後HBV DNAの増加を認め,LAM耐性と判断され,20XX-14年にアデホビル(ADV)10 mgが追加された.20XX-5年にADVを原因とするFanconi症候群と診断され,エンテカビル0.5 mgに変更となった.20XX-4年7月に肝炎の悪化のため当院へ紹介され,テノホビル・アラフェナミド(TAF)25 mg単独投与が開始された.同年11月に経口摂取不能のため入院となり,動脈血ガス分析にてpH 7.32,HCO3-は7.5 mmol/Lと代謝性アシドーシスを認め,TAFが誘因と診断された.代謝性アシドーシスの要因として,乳酸アシドーシスに加え,尿細管障害を示唆する尿糖,尿中β2-MGの上昇を認め,Fanconi症候群の再燃による尿細管性アシドーシスの関与も考えられた.

  • 上平 祐輔, 河岡 友和, 内川 慎介, 藤野 初江, 大野 敦司, 中原 隆志, 村上 英介, 岡本 渉, 山内 理海, 柘植 雅貴, 今 ...
    2023 年 64 巻 2 号 p. 66-73
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    症例は23歳男性,32歳女性の姉弟.弟は汎血球減少と脾腫を指摘されたことを契機に,その後の精査で肝内胆管の囊状拡張,多発腎囊胞,食道静脈瘤を認め,Caroli病と診断した.姉は食道静脈瘤破裂を契機とした精査で弟同様に肝内胆管拡張と多発腎囊胞を認め,Caroli病の診断に至った.2例とも診断時の肝腎機能は良好であったが,弟はその後の経過で胆管炎や食道静脈瘤破裂などの合併症を繰り返し,利尿剤や分岐鎖アミノ酸製剤,高アンモニア血症治療薬の投与を要する非代償性肝硬変に進展した.また,常染色体劣性多発性囊胞腎による慢性腎不全が徐々に増悪し,最終的に血液透析導入に至った.一方,姉は食道静脈瘤に対する加療後は目立った合併症なく経過しており,現在経過観察中である.Caroli病の合併症は重篤な転帰を辿る可能性があるため,診断時には本人以外に家族内の検索を十分に行い,早期発見に努めることが重要である.

短報
  • 喜多 竜一, 岡井 夏輝, 三宅 雄大, 藤原 裕也, 坂本 梓, 米門 秀行, 木村 達, 丸澤 宏之
    2023 年 64 巻 2 号 p. 74-77
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    Partial splenic embolization (PSE) through radial artery utilizing 5 Fr. 125 cm catheter and 1.9 Fr. 150 cm or 1.7 Fr. 165 cm microcatheter has been conducted in six liver cirrhosis patients with splenomegaly. After inserting the catheters into the splenic artery, gelatin sponge particle and/or pushable coil embolization was performed in splenic peripheral branches. After removing the sheath, a compression wristband was utilized to stem the bleeding in the radial punctuated region. Patients were able to move immediately following the treatment and did not require any bed rest. In all, 65%-80% of the spleen's volume was embolized effectively, and no adverse events occurred during the procedure. Our data demonstrated radial technique could bring safe and satisfactory results for PSE with less discomfort for the patients after the method.

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