肝臓
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64 巻, 8 号
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レポート
  • 日本肝癌研究会追跡調査委員会
    飯島 尋子, 工藤 正俊, 久保 正二, 黒崎 雅之, 坂元 亨宇, 椎名 秀一朗, 建石 良介, 中島 収, 福本 巧, 松山 裕, 村上 ...
    2023 年 64 巻 8 号 p. 333-381
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/09
    ジャーナル フリー

    第23回全国原発性肝癌追跡調査においては,516施設から2014年1月1日から2015年12月31日までの2年間の20,889例の新規症例と42,274例の追跡症例が集計された.基礎統計は,第23回新規登録症例を対象として死因,既往歴,臨床診断,画像診断,治療法別の各因子,病理診断,再発,剖検についてまとめた.第22回調査と比較し,肝細胞癌における臨床診断時の高齢化,女性の増加,非B非C肝癌の増加,腫瘍径の縮小の傾向が,治療においては切除の割合の増加,局所療法におけるラジオ波焼灼療法の増加が認められた.2002年から2015年までの新規登録症例の中で最終予後が生存または死亡となった症例(不明を除く)について肝細胞癌,肝内胆管癌,混合型肝癌の治療法別,背景因子別生存中央値・累積生存率を算出した.肝細胞癌については腫瘍個数,腫瘍径,肝障害度,Child-Pugh分類を組み合わせることにより背景因子を揃えて,治療法別(肝切除,局所療法,肝動脈塞栓療法(TACE)),肝動注化学療法,全身薬物療法(分子標的治療)の累積生存率を算出し,また,1978年から2015年までの新規登録症例を5期に分け,累積生存率を算出した.新規登録症例数は経時的に増加し,肝細胞癌,肝内胆管癌,混合型肝癌ともに予後の改善が著しいことが明らかとなった.本追跡調査が原発性肝癌の研究および診療の進歩に役立つことを期待する.

症例報告
  • 松本 萌, 則武 秀尚, 山下 真帆, 花岡 智彦, 梅村 昌宏, 木次 健介, 髙鳥 真吾, 太田 和義, 伊藤 潤, 千田 剛士, 川田 ...
    2023 年 64 巻 8 号 p. 382-392
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/09
    ジャーナル フリー

    アテゾリズマブとベバシズマブの併用療法は切除不能な肝細胞癌に対して有効である.我々はこれらの併用で治療効果を認めながらも腫瘍内の出血壊死により治療中止となったHBVに関連する大型の切除不能肝細胞癌の一例を経験した.HBs抗原陽性の70代の男性が上腹部痛を主訴に来院した.遠隔転移を伴う大型の肝細胞癌と診断され肝動脈塞栓療法の後にアテゾリズマブとベバシズマブの投与を開始した.投与後に腫瘍内の出血壊死による腹痛と高度な炎症所見を認めたため,2コースからはアテゾリズマブの単独投与としたが腫瘍が増悪した.4コース目は再び併用としたが,腫瘍内の出血壊死による腹痛と高度な炎症所見,肝予備能の低下,食思不振と倦怠感により以後の治療は中止となった.アテゾリズマブとベバシズマブの併用療法に伴う腫瘍関連出血のリスク評価やその対応について明確な基準はないが,HBVに関連した大型肝細胞癌の場合には特に注意を要する.

  • 福田 理穂, 市原 広太郎, 福田 遼, 増田 太志郎
    2023 年 64 巻 8 号 p. 393-400
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/09
    ジャーナル フリー

    症例は80歳代男性.食思不振,右季肋部痛を主訴に受診.造影CTで肝右葉に長径140 mm大の右房内浸潤を伴う腫瘤を認め,肝細胞癌cStage III(T3N0M0,Vv3,右房内浸潤あり,門脈浸潤なし)と診断した.初期治療として肝動注化学療法(New FP療法)を選択し,4コース施行後右房内浸潤は消失し腫瘍は著明に縮小した.残存したviable lesionに対しTACE+RFAを3回施行し完全奏効となった.RFA終了後1年半以上経過しても再発なく経過している.肝動注化学療法は既存の分子標的薬と比較して脈管侵襲を有する症例で成績が優れていると報告されており,本症例のようなPS不良かつ高度脈管侵襲を伴う肝細胞癌の初期治療として有用であると考える.

  • 川北 康貴, 阿部 俊也, 阿部 祐治, 空閑 啓高, 西原 一善, 峰 真理, 田宮 貞史, 中野 徹
    2023 年 64 巻 8 号 p. 401-408
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/09
    ジャーナル フリー

    症例は70代男性,S状結腸癌に対してS状結腸切除術を施行,術後病理診断は中分化型腺癌,2.5 cm,Type2,SS,ly1,v2,N0,H0,P0,M0,fStageIIAだった.初回手術13カ月後の血液検査でCEAの上昇とCTで肝外側区域に腫瘤を認め,肝外側区域切除術を施行,S状結腸癌の肝転移と診断した.初回手術14年9カ月後に再度CEAの上昇とCT,MRIにて肝S7に腫瘤を認め,経過と画像所見から肝内胆管癌を疑い,肝S7部分切除術を施行した.病理所見は初回大腸癌と類似した腺癌で,免疫染色検査ではCK7-/CK20+であり,各種検査で局所再発や遠隔転移,他の原発巣を認めず,S状結腸癌の肝転移と診断した.大腸癌術後の再発巣切除群は,術後5年以降でも転移再発の可能性を念頭におき,局所治療の肝切除のみならず,全身療法の化学療法やその後の定期検査等により集学的治療を展開する必要性が示唆された.

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