肝臓
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57 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 杉原 誉明, 孝田 雅彦, 岡本 敏明, 三好 謙一, 的野 智光, 法正 恵子, 岡野 淳一, 磯本 一, 矢田 晋作, 大内 泰文, 谷 ...
    2016 年 57 巻 5 号 p. 205-212
    発行日: 2016/05/20
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    脈管浸潤を伴う肝細胞癌(HCC)の予後は極めて不良である.さらに,腫瘍栓(TT)が下大静脈(IVC)まで進展している症例では,合併症も多く治療に難渋する事が多い.今回我々は下大静脈腫瘍栓(IVC-TT)を伴う進行肝細胞癌症例10例を後ろ向きに検討し,治療法の選択と予後の検討を行った.症例の年齢中央値は69(62-82)歳で,男女比は9:1であった.HCC Stage(IVA/IVB)4/6例で,90%(9/10例)で腫瘍の占拠率が50%以下であった.肺転移は6例で認めた.治療法は肝動脈塞栓術(TAE)/肝動注化学療法(HAIC)/TAE+HAIC併用1/6/3例と全例で血管内治療が実施されており,放射線照射は1例で併用され,sorafenibは2例で投与された.生存期間中央値は11.6(1.2-72.3)カ月と従来の報告に比べ長期であった.血管内治療を含めた集学的治療を行う事で予後が改善する可能性がある.
  • 大洞 昭博, 小島 孝雄, 濱口 真英
    2016 年 57 巻 5 号 p. 213-219
    発行日: 2016/05/20
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    1995年~2014年の間に当院総合健診センターにて人間ドックを受けたのべ176,979例を対象に,B・C型肝炎ウイルス陽性が指摘された受診者の医療機関受診状況を調査した.全年代での陽性率は,HBs抗原陽性者(B群)は1.45%,HCV抗体陽性者(C群)は0.96%であった.健常者群と比してB/C群でAST,ALT,ZTTが有意に高値,白血球,血小板,Alb,T-bilは有意に低値であった.B/C群における医療機関未受診率は,1995-1999年の期間で89.2/72.7%,2000-2004年が84.2/68.7%,2005-2009年が78.1/54.4%,2010-2014年が77.3/47.4%であった.年代が進むにつれてC群の未受診者の割合は有意に減少していたが,直近の2010-2014年の期間でも依然,未受診率は高かった.肝炎撲滅のためには,人間ドックのみで経過観察されているB・C型肝炎ウイルス陽性者に対して肝臓専門医への受診勧奨を促すさらなる取り組みが必要である.
症例報告
  • 伊藤 晴康, 藤田 由里子, 今村 諭, 伊藤 剛, 角田 裕也, 久武 祐太, 新見 真央, 辻野 誠太郎, 長久保 秀一, 諸星 雄一, ...
    2016 年 57 巻 5 号 p. 220-226
    発行日: 2016/05/20
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性で2007年から糖尿病の治療中であった.受診日前日からの腰痛,嘔吐,発熱のため当院を受診した.血液検査で貧血,血小板減少,黄疸を認めた.単純CTにて肝右葉にガスを含んだ腫瘤性病変を認め,ガス産生菌による肝膿瘍と診断した.直ちに,広域抗菌薬投与と経皮経肝膿瘍ドレナージ術を行った.排液は悪臭を伴った血性であり,膿瘍腔内への出血が疑われた.その後,血圧低下を認め,止血目的に緊急で肝動脈塞栓術を施行したが,輸血にも血圧回復せず同日永眠した.後日,血液培養からClostridium perfringensC. perfringens)が同定された.病理解剖では腹腔内の大量の血液貯留と肝膿瘍近傍に穿刺腔を認めた.病理組織所見では,血管壁の破壊により膿瘍腔内に交通した血管が複数認められた.以上より,死因は膿瘍腔への出血が穿刺腔を介して腹腔内へ広がったための出血性ショックと考えられた.C. perfringensにより膿瘍腔内に出血を来した報告はめずらしく,文献的考察を加えて報告する.
  • 穴井 盛靖, 宮瀬 志保, 石貫 敬子, 束野 奈津己, 岩下 博文, 伊藤 隆明, 藤山 重俊
    2016 年 57 巻 5 号 p. 227-232
    発行日: 2016/05/20
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    症例は42歳男性.10歳時に近医で骨髄性プロトポルフィリン症(Erythropoietic protoporphyria:EPP)と診断され,20歳,40歳時にEPPによる肝障害,腹痛で入院歴あり,安静で改善した.2014年6月に腹痛,便秘,黄疸が出現し,EPP急性発作の診断で入院となった.遮光下で安静,緩下剤の投与を行うも改善せず,T-Bilの上昇(17.1 mg/dL)を認めた.入院5日目からHeminの投与を行い,投与終了後より徐々にT-Bilは低下,腹痛は改善傾向となった.以降は増悪なく入院30日目に退院となり,退院2カ月後の採血では肝機能,T-Bilは正常化していた.肝障害を伴う急性発作が出現し,治療に難渋したEPPの1例を経験したので報告する.
  • 山下 信行, 山元 英崇, 大橋 生嗣, 宮川 弘, 宮城 友豪, 林 由浩, 谷本 博徳, 西浦 三郎, 野村 秀幸
    2016 年 57 巻 5 号 p. 233-241
    発行日: 2016/05/20
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代の女性.肝に結節性病変を指摘され,当院を受診した.超音波検査では径1.5 cmの単発性腫瘍を認めたが,他の画像検査では腫瘍径は大きく,病変は多発性であった.入院時の検査で胃癌を認め開腹術が行われ,肝病変も同時に切除された.切除標本では,腫瘍として認識された部位には白色小結節が集簇していた.組織学的には門脈域にリンパ濾胞を伴う炎症細胞浸潤を認め,門脈や中心静脈に閉塞性静脈炎を認めた.手術約1年後に自己免疫性膵炎が発症し,肝病変もIgG4関連疾患の一部と考えられた.IgG4関連疾患は近年その概念が確立されたが,肝病変の報告は少なく不明な点が多い.本症例はIgG4関連肝疾患として貴重な症例と思われた.
  • 年森 明子, 平岡 淳, 浅木 彰則, 中西 公王, 植木 秀太朗, 金藤 美帆, 相引 利彦, 奥平 知成, 宮本 勇次, 富田 英臣, ...
    2016 年 57 巻 5 号 p. 242-251
    発行日: 2016/05/20
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    症例は41歳女性,右上腹部痛と微熱を主訴に近医受診,造影CTで肝膿瘍が疑われ当院へ紹介された.超音波検査でB-modeで肝S8ドーム下に辺縁不整で内部不均一な50 mm大の充実性腫瘤として描出され,造影超音波検査で多血性悪性腫瘍を疑った.Dynamic CTでは,動脈相で周囲が淡く造影され内部はhypovascularな横隔膜浸潤を伴った腫瘍として描出された.FDG-PET/CTでは腫瘍部にFDGの集積(SUV max 13.7)と,右心横隔膜角,右内胸,右鎖骨上リンパ節にもFDG集積がみられ,肉腫など悪性腫瘍を疑った.入院6日目に開腹手術を施行,開腹時に肝被膜下出血所見もみられた.切除標本の病理組織では腫瘍組織は紡錘形細胞,多辺形細胞が増殖し肉腫様組織であった.CAM5.2(+),Vimentin(+),CK7(+),CK19(-),Hepatocyte(-)で胆管細胞由来の肉腫と診断した.胆管細胞癌はそれ自体比較的予後不良な癌腫であるが,その肉腫様変化は極めて稀でさらに予後不良である.被膜外進展,腫瘍出血を来した胆管細胞由来の肝原発肉腫の一例を経験したので報告する.
  • 木村 有志, 辻 邦彦, 松居 剛志, 田中 一成, 姜 貞憲, 吉野 裕紀, 児玉 芳尚, 桜井 康雄, 真口 宏介, 中島 収
    2016 年 57 巻 5 号 p. 252-259
    発行日: 2016/05/20
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    症例は70歳代の女性.C型肝炎に対するSVR10年後に腹部超音波検査で肝腫瘍が指摘された.CT,MRIでS2に径28 mmの多血性腫瘍と,S2,S3,S8に径10 mmの多血性と乏血性腫瘍が認められた.全身検索にて前縦隔に径48 mm大の腫瘍を認め胸腺腫が疑われたため,多発肝転移を疑い肝S2の病変に対して狙撃生検を施行した.その後,前縦隔腫瘍に対し縦隔腫瘍切除術を施行し,病理組織学的に胸腺腫と確定診断し,肝病変の生検組織も同様の所見であったため胸腺腫の肝転移と診断した.術後,化学療法が有害事象で中止となった時点で,新規肝病変の出現を認めなかったため肝外側区切除とS8部分切除術を施行した.S2の病変は胸腺種の肝転移,S2,S3,S8の3病変は肝細胞癌と最終診断された.SVR10年後に肝細胞癌と胸腺腫の肝転移が合併した稀な症例と考えられた.
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