症例は54歳男性で2007年から糖尿病の治療中であった.受診日前日からの腰痛,嘔吐,発熱のため当院を受診した.血液検査で貧血,血小板減少,黄疸を認めた.単純CTにて肝右葉にガスを含んだ腫瘤性病変を認め,ガス産生菌による肝膿瘍と診断した.直ちに,広域抗菌薬投与と経皮経肝膿瘍ドレナージ術を行った.排液は悪臭を伴った血性であり,膿瘍腔内への出血が疑われた.その後,血圧低下を認め,止血目的に緊急で肝動脈塞栓術を施行したが,輸血にも血圧回復せず同日永眠した.後日,血液培養から
Clostridium perfringens(
C. perfringens)が同定された.病理解剖では腹腔内の大量の血液貯留と肝膿瘍近傍に穿刺腔を認めた.病理組織所見では,血管壁の破壊により膿瘍腔内に交通した血管が複数認められた.以上より,死因は膿瘍腔への出血が穿刺腔を介して腹腔内へ広がったための出血性ショックと考えられた.
C. perfringensにより膿瘍腔内に出血を来した報告はめずらしく,文献的考察を加えて報告する.
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