雑種成犬(n=20)を用い,D-ソルビトール(DS)腎外クリアランスによる肝血漿流量評価の有用性を,超音波トランジットタイム血流計による肝血流量実測値(Qt)及び,Fickの原理による肝血漿流量(Qp)と対比し,sinusoidal perfusion modelに基づいて肝薬物動態学的に解析した.
Fickの原理により算定すると,DSの抽出比(E, s)は平均51.0%となり,肝血漿流量(Qp,s)はQtに比べてE, s dependentに過大評価された.DSの腎外クリアランス(CLer, s)は,Qp, sより有意にQtに近似したが(p<0.01),肝固有クリアランス(CLint, s)とQp, sの比(CLint, s/Qp, s)は,Qtとの等点で1.27となり,sinusoidal perfusion modelと矛盾した.
この矛盾は,一肝葉の肝静脈採血を全肝として代表させることに起因していると考え,DSの肝静脈血漿濃度(Chv, s)を用いない,Qp, sをQtに置き換えた換算式でパラメーターを算出した(Tを附記).その結果,E, s (T)は平均80.1%と補正され,またCLer, s=Qt点で105.9%となり,E値の規定とも矛盾なく補正された.CLint, sをsinusoidal perfusion model式,ln〔1/(1-E)〕から換算,Qp, sをQtと置換したCLint, s/Qt (T)値は4.26と補正され,DSはflow dependent substanceとなった.また,この時CLer, s=0.98Qとなり,同モデルを満足した.
以上,CLer, sはfunctional liver plasma flowを表現すると言われており,total liverplasma flowであるQtとの偏差ΔCLer, sについて,考察を行った.
抄録全体を表示