肝臓
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58 巻, 2 号
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特集
腹水管理の最近の進歩
  • 高原 照美
    2017 年 58 巻 2 号 p. 71
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー
  • 瀬川 誠, 岩本 拓也, 坂井田 功
    2017 年 58 巻 2 号 p. 72-77
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    2013年9月に,バソプレシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタン(サムスカ)が,「ループ利尿剤等の他の利尿薬で効果不十分な肝硬変における体液貯留」に対し保険適用となって以降,わが国における腹水治療戦略は大きく変化した.従来,非代償性肝硬変に伴う腹水の薬物治療の主体はスピロノラクトンやループ利尿薬であったが,利尿薬抵抗性の存在や腎機能低下,低ナトリウム血症,肝性脳症の誘発などの問題が指摘されていた.トルバプタンは電解質の排泄は伴わず,水のみを排泄する水利尿薬であり,腎機能への影響が少なく,ループ利尿薬とは異なり低アルブミン血症でも腹水の改善が期待できる画期的な薬である.トルバプタンの登場以降,腹水の初期治療において,従来の利尿薬は少量使用にとどめ,トルバプタンの併用を行うことで,腎機能の温存を図りつつ腹水をコントロールするという新たな治療の潮流が生まれた.一方で,トルバプタン抵抗性の問題も新たに生じており,トルバプタンの適切な投与タイミングや投与方法の模索が続けられている.わが国におけるトルバプタンを用いた腎機能保護に基づく新たな腹水治療戦略は,腹水を有する肝硬変患者のQOL向上に加え,生命予後の改善に繋がる可能性を秘めており,今後の研究の発展が期待される.

  • 森 建文, 矢花 郁子, 衣笠 哲史, 佐藤 真一, 岩倉 芳倫
    2017 年 58 巻 2 号 p. 78-84
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    肝硬変において体液貯留と腹水管理は予後を規定する重要な因子であるが,腎機能にも深く関与する.体液貯留により腎にうっ血が生じると腎臓の間質圧が上昇し,尿細管や血管が圧排によりナトリウム排泄が抑制され,腎虚血に陥る.体液量の是正に利尿剤が用いられるが,レニン・アンジオテンシン系の亢進や腎血流の低下によりさらに腎障害を呈することがある.腎臓はその特異的な血管構造によりつねに低酸素にさらされており,血流変化に弱い.肝硬変においても門脈圧の亢進や腹水の貯留により腎血行動態が変化する可能性がある.Na利尿薬のフロセミドと水利尿薬のトルバプタンでは腎血行動態に対する作用が異なる.腎血流を保持するトルバプタンは腎保護の観点で優れている.フロセミドとトルバプタンは利尿作用に一部共通したメカニズムを有しており,フロセミドの大量使用はトルバプタンの効果を減弱させる.したがって,Na利尿薬と水利尿薬の特性を適正に使い分け腹水管理を行うことが腎保護に求められる.

  • 貝森 淳哉, 猪阪 善隆, 高原 史郎
    2017 年 58 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    2010年10月に,バソプレシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタン(サムスカ)が,「ループ利尿剤等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留」に対し保険適用となって以降,わが国に利尿薬において新たな選択肢が一つ加わることになった.これと共に,今までのナトリウム利尿という考え方に,水利尿という新しい概念を付与することとなった.トルバプタンは,低ナトリウム血症をきたした心不全患者で利尿薬の選択に難渋していた場合に選択的に使われだした.その際,トルバプタンが効果のある患者に関して研究が行われ,効果の期待できる患者の見分け方が明らかにされてきた.また,腎臓内科領域では,特に今まで全く治療法の無かった常染色体優性多発性囊胞腎(ADPKD)に対する治療薬として,高容量のトルバプタンを使用する機会も増えてきた.本総説では,バソプレシンV2受容体拮抗薬(トルバプタン)の作用機序や使用の注意点を腎臓内科の立場から述べてみたい.

  • 平方 敦史, 吉田 寛, 牧野 浩司, 上田 純志, 高田 英志, 真々田 裕宏, 谷合 信彦, 内田 英二
    2017 年 58 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー
原著
  • 山敷 宣代, 石上 雅敏, 上田 佳秀, 上野 義之, 田中 榮司, 上本 伸二, 古川 博之
    2017 年 58 巻 2 号 p. 97-104
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    わが国において肝臓内科医が肝移植医療にどの程度関わっているかを明らかにするため,2015年11月,肝移植研究会の施設会員を対象にアンケート調査を実施した.69人(58施設)から回答を得,うち移植実施施設は39施設(67%)で,各施設の平均年間移植実施件数は10±13例であった.移植を担当する肝臓内科医が在任していたのは移植実施施設中22施設(56%)で,内科医数は2(1~8)人であった.移植実施施設では,移植待機中の外来および入院診療,移植後6カ月以降の外来を内科外科両方が関わると答えた施設がそれぞれ71%,69%,74%と過半数であったが,移植6カ月以内の外来および入院診療への内科医の関わりは43%,25%と低かった.肝臓内科医は既に殆どの移植医療施設で活躍していることが明らかになった.今後,より積極的な肝臓内科医の関与によって,移植医療のさらなる発展を期待したい.

症例報告
  • 久保 智洋, 河野 豊, 宮西 浩嗣, 石川 和真, 桜田 晃, 佐藤 昌則, 保木 寿文, 田村 文人, 田中 信悟, 高田 弘一, 小船 ...
    2017 年 58 巻 2 号 p. 105-114
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    症例1は50歳男性.微熱,下痢,倦怠感と意識障害のため当科を紹介受診した.溶血,肝障害,腎障害を合併しており,膿瘍内容のグラム染色にてClostridium perfringens(以下C. perfringens)によるガス産生性肝膿瘍と考えられた.抗菌薬および透析,血漿交換,エンドトキシン吸着にて容態は改善し,第38病日に退院した.症例2は77歳女性.発熱,嘔吐と意識障害のため当科紹介受診した.溶血,肝障害,腎障害を合併しており,膿瘍内容のグラム染色にてC. perfringensによるガス産生性肝膿瘍と考えられた.集学的治療にて容態は改善し,第28病日に退院した.C. perfringensによる肝膿瘍は急激な経過をたどることが多く,死亡率が極めて高い.グラム染色による短時間での起因菌の推定により,集学的治療の早期介入が救命に寄与したものと考えられた.

  • 安里 昌哉, 大田 守仁, 知念 澄志, 伊波 孝路, 辻村 一馬, 澤岻 安勝, 比嘉 国基, 嵩下 英次郎, 仲地 厚, 我喜屋 亮, ...
    2017 年 58 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    症例は61歳の特に既往歴のない男性.2014年11月の健診の腹部超音波検査(US)で肝S6に14 mm大の低エコー腫瘤性病変を認めた.精査目的でCTおよびMRIを施行し画像所見から肝血管腫を疑い経過観察の方針となった.2015年10月,画像検査で腫瘤は80 mmと急速な増大傾向がみられ悪性が疑われた.FDG-PETを施行したところ腫瘤辺縁および内部の一部にFDGの異常集積を認めた.臨床経過,画像所見などから肝原発の血管原性悪性腫瘍と診断し2015年12月に肝拡大後区域切除術を施行した.病理組織診断で肝血管肉腫の診断であった.術後8カ月,無再発で外来にて経過観察中である.肝血管肉腫はまれな疾患でありPETが施行された報告例は検索し得た限りでは自験例を含め8例であった.今回我々はFDG-PETで異常集積を認めた肝血管肉腫の症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

  • 小笠原 史也, 宗景 玄祐, 小野 正文, 越智 経浩, 小笠原 光成, 麻植 啓輔, 廣瀬 享, 野崎 靖子, 耕崎 拓大, 岩崎 信二, ...
    2017 年 58 巻 2 号 p. 123-130
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    症例は50歳代男性.発熱と上腹部痛を主訴に近医より紹介となった.血液検査で好中球優位の白血球上昇,CRP上昇,プロカルシトニンの異常高値を示し,腹部造影CTで多発肝膿瘍・門脈血栓症を認めたため化膿性門脈血栓症を疑い門脈穿刺したところ膿瘍が吸引されたが起炎菌は同定できなかった.抗菌薬と抗凝固薬による治療にて肝膿瘍は改善したが門脈血流の再開を認めなかった.その後,炎症反応・感染徴候は改善したもののこれ以上の門脈血流の改善は期待できなかったため退院となり,紹介元の病院にて定期的な外来通院となった.退院後,再発や症状の悪化などは認めなかったが,退院2年後の腹部CTでは門脈右枝は器質化閉塞を来しA-P shuntおよび僅かな側副血行路を認めるものの肝右葉が著明な萎縮を伴っていた.また,退院4年後の腹部CTでも肝右葉後区域は著明に萎縮したままであった.化膿性門脈血栓症の治療後の長期経過を報告した症例は稀で,これまでは長期経過観察の重要性は知られていなかった.しかし,再発や症状の悪化がなくても門脈閉塞の再開を認めない場合には肝萎縮が著明となることから,退院後も長期に渡る定期的な経過観察が重要である.

短報
  • 池田 恵理子, 三馬 聡, 髙橋 洋一, 木下 梨華子, 峯 彩子, 本吉 康英, 赤星 浩, 植原 亮平, 本田 徹郎, 入江 準二, 市 ...
    2017 年 58 巻 2 号 p. 131-134
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    The interspousal transmission frequency of the hepatitis C virus (HCV) is extremely low. We report a case of a 42-year-old female with acute hepatitis C, in which genetic analysis confirmed the infection route to be via interspousal transmission. We strongly suspected that HCV was transmitted by her husband because he had suffered from untreated chronic hepatitis C and both HCV genotypes were 1b. The base sequence homology of the partial HCV core (278 nucleotides) and NS5A (416 nucleotides) region was examined using direct sequencing, and 99.2% and 97.3% identity was observed in the core and NS5A region, respectively. Phylogenic tree analysis revealed that almost the same HCV strain infected both individuals. Thus, interspousal transmission of HCV occurred in this couple.

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