肝臓
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27 巻, 8 号
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  • 坂口 正剛
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1043-1055
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    び漫性にbridging necrosis(以下BNと省略する)を伴う肝炎97例を対象に,臨床病理学的検討を加えた.
    BNは男性ではB型ウイルス肝炎に,女性では非A非B型ウイルス肝炎や自己免疫性肝炎などに起因したものに多くみられた.重症度からは,膠原化を伴わないreticulin typeは死亡群にみられ,胆栓の出現頻度は臨床的重症度に比例して増加した.発症からBN確診までの経過期間をみると,reticulin typeを示すほとんどの例が発症後3ヵ月以内の症例であり,脂肪浸潤,ロゼット形成,結節形成は6ヵ月以上の経過例により多く観察された.
    BNを伴う肝炎の形態学的転帰については,BNの持続を示した8症例を除くと,14例中11例は進展し,とくに慢性肝炎に伴うBN 11例のうち9例が平均2年8ヵ月で肝細胞癌,肝硬変または小葉改築傾向を伴う慢性肝炎(活動性)へ移行し,通常の慢性肝炎に比べ高率,かつ,短期間に組織学的進展を示すものと考えた.
  • 関 守一, 針原 重義, 斉藤 忍, 塩見 進, 溝口 靖紘, 黒木 哲夫, 山本 祐夫, 門奈 丈之
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1056-1064
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    初回肝生検においてbridging hepatic necrosisを示した劇症肝炎・急性重症肝炎の生存14例の病早期の残存肝細胞のなかに,再生像を求め,光顕・電顕的に検討した.
    大型肝細胞で大型の明るい核と明瞭な核小体を有し,核周囲部原形質においてよく発達したr-ERと豊富なfreeのribosome・polysomeとmatrixのdensityの低いmitochondriaをもち,さらに細胞質膜周辺の原形質に豊富なglycogen顆粒および脂質滴を有する細胞がmitosisにより細胞分裂を行うと推定された.これにより再生の一過程が始まると思われる.
    この大型肝細胞群に接して存在する,好塩基性の胞体を有し,肥厚した索状配列を示す小型肝細胞はmitosisにより新生された細胞と考えられた.小型肝細胞は3群に大別できた.これら小型肝細胞が,漸次成熟し,mitosisを繰り返し,広範な壊死野を修復してゆくものと推定された.
  • 田中 健二
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1065-1075
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    劇症肝炎時に,いかなる血液酸塩基平衡異常がみられるかを検討する目的で,入院時および入院後,経過を追って動脈血ガス分析を行った.症例は,急性型23例,亜急性型14例,計37例の劇症肝炎であり,生存例は7例のみであった.入院時最も多く認められたのは呼吸性アルカローシスであり,ついで代謝性アルカローシス,代謝性アシドーシスの順であったが,急性型,亜急性型における差は認められなかった.入院時代謝性アシドーシスを示したものは全例腎不全合併例であり,乳酸性アシドーシスは1例もみられなかった.入院後の経過をみると,死亡前になるほど代謝性アシドーシスの増加が認められ,予後不良の徴と考えられた.酸塩基平衡のパラメーターと脳症の程度との関係をみると,脳症の進展に伴いPaCO2の低下ならびにpHの上昇が認められ,酸塩基平衡異常は脳症悪化の一要因と考えられた.
  • 福本 陽平, 新開 泰司, 沖田 極, 竹本 忠良, Robin D Hughes, Christopher D Gove, Roger W ...
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1076-1084
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    劇症肝炎患者の血中に蓄積する中等大分子量の中毒性物質が,脳細胞膜のNa+, K+-ATPase活性や,白血球細胞のNa+の移動を阻害することが報告されている.一方,胆汁分泌機構における肝細胞膜Na+, K+-ATPaseの役割について,最近ではNa+と胆汁酸の共輸送という観点から,胆汁酸の肝での移送に関与していると推察されるようになった.そこで,本報では昏睡期の劇症肝炎患者血清より,細胞膜Na+, K+-ATPase活性を低下させる物質を抽出し,ラット門脈内に持続的に投与することによって,胆汁分泌に与える影響を検討した.その結果,ラットの胆汁分泌量は減少傾向を示し,胆汁中への胆汁酸の排泄は対照群に比べ有意に低下した.これらの事実は,肝細胞膜Na+, K+-ATPaseがむしろ胆汁中への胆汁酸の分泌に介在するという説を支持する結果となった.
  • 金子 周一, 大島 徹, 児玉 一八, 青山 庄, 吉川 寛, 鵜浦 雅志, 福岡 賢一, 松下 文昭, 森岡 健, 田中 延善, 小林 健 ...
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1085-1093
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    ウッドチャック肝細胞癌,同肝細胞癌由来ヌードマウス移植系,同移植系由来培養細胞株におけるWHV DNAの存在様式を系統的に検討した.5例のウッドチャック肝細胞癌のうち少なくとも4例にWHV DNAの組み込みを認めた.3年におよぶ継代にも拘らず培養細胞株におけるWHV DNAの存在様式は,ヌードマウス移植系と同一であり,ウッドチャック肝細胞癌と類似していた.Southern hybridization法,Molecular cloning法による解析では,培養細胞株に3箇所WHV DNAが組み込まれており,1つはGene Sの終わりからGene Xまで,1つはGene CからGene Sまで,1つはGene pre SからGene Xまでであり,GeneXからGene Cにかけては組み込まれていなかった.WHV DNAの組み込みが肝細胞癌の発症に関与し,培養細胞株に組み込まれたWHV DNAが癌細胞の維持に何らかの役割を果たしていることが示唆された.
  • 小宅 映士, 苅谷 幹雄, 茶山 一彰, 千原 壮介, 高橋 泰行, 内田 学, 硲野 孝治, 落合 栄一, 秀毛 寛己, 升木 行雄
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1094-1104
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    原発性肝細胞癌(HCC)破裂による腹腔内出血7例に対し,緊急肝動脈塞栓療法(緊急TAE療法)を施行した.全例止血に成功し,5例を救命した.うち2例は,後に肝切除術にて,腫瘍摘出することができた.
    7例中4例に造影剤の血管外漏出(extravasation)が証明され,出血の責任血管は動脈であり,門脈の関与はなかった.
    破裂したHCCは,肝外に突出する肝外発育型を呈していることが特徴で,これらのHCCの中には,孤立性,小型の癌も含まれており,HCCの腹腔内出血に対する緊急TAE療法の有用性は高く,救命手段として確立されるべきであると考えられた.
    予後を左右する因子は,短期的にはDIC,中期的には,門脈浸潤,輸血後肝炎,長期的には大網の癒着による側副血行路の発達であると考えられた.
  • 西原 利治, 前田 隆, 藤川 正直, 富田 昭, 栄枝 弘司, 大西 三朗, 伊藤 憲一
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1105-1111
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    我々は原発性胆汁性肝硬変(PBC)が肝内胆管を場とする自己免疫疾患であるとの根拠を種々提示してきた.この際Interleukin 1を産生する単球の機能異常が存在することを明らかにしてきた.今回PBC 13例につき抗単球抗体の有無を検索し,抗単球抗体陽性の3例につき健常者単球機能に及ぼす抗単球抗体の影響をPPD抗原提示能,Interleukin 1産生能の面より検討した.健常者単球は抗単球抗体陽性のPBC患者血清と補体により処理を受けても,自己T細胞に対する充分なPPD抗原提示能を有し,リンパ球幼若化能に対する抑制を示すことはなかった.またLPSおよびPPD刺激下における健常者単球のIL-1産生能は抗単球抗体陽性の,PBC患者血清と補体により処理を受けても明らかな低下を示さなかった.この成績はPBC患者末梢血単球機能異常が抗単球抗体の存在に基づく二次的な異常ではないことを示唆するものと考えられた.
  • 笠原 彰紀, 林 紀夫, 佐々木 裕, 黒沢 和平, 久保田 真司, 古澤 俊一, 松田 裕之, 八嶌 俊, 河野 通一, 房本 英之, 佐 ...
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1112-1118
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    アルコール性肝障害における肝酸素需給動態と肝組織変化との関連について検討した.
    肝局所血液量は,肝線維化,肝細胞壊死の程度と負の相関関係が認められた.しかし,脂肪浸潤,炎症の程度,肝細胞面積とは相関関係は認められなかった.線維化の認められない7例の解析では,肝局所血液量は脂肪浸潤の増強に伴い低下した.また,肝局所Hbの酸素飽和度,肝局所in vivo酸素消費も線維化および肝細胞壊死が増強する程低下したが,脂肪浸潤・炎症の程度とは相関関係がみられなかった.
    以上,アルコール性肝障害における肝血流の低下には,病初期は脂肪浸潤の増強が寄与するが,ひとたび線維化がおこると線維化が進展するほど,また肝細胞壊死が増強するほど肝血流は低下すること,さらに肝酸素消費も線維化の進展・肝細胞壊死の拡がりとともに低下することが明らかとなった.
  • 結城 武彦, R.G. Thurman, 吉徳 克仁, 岡上 武, 朴 孝憲, 千丸 博司, 奥野 忠雄, 瀧野 辰部
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1119-1125
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    エタノール(「エ」と略)(5g/kg)をラットに経口投与すると,急速に肝「エ」および酸素消費は亢進し,約2.5時間後には前値の2倍に増加した(Swift Increase in Alcohol Metabolism: SIAM). SIAMでは,肝グリコーゲン量の40%減少,肝解糖系の70%減少,血糖値の90%増加がみられ,門脈血中エピネフリン,ノルエピネフリン,グルカゴン濃度の増加と相関していたが,インスリン濃度は不変であった.又,SIAMは,下垂体摘出,抗甲状腺剤,副腎摘出,αおよびβ遮断剤により抑制された.エピネフリン(10-8~10-6M),グルカゴン(10-10~10-8M)を対照ラット肝に注入するとSIAMが見られたが,グルカゴン(α)作用がエピネフリン(α<β)作用より強力であった.以上の成績より,SIAMでのホルモンの変化は中等量の「エ」投与により下垂体-甲状腺-副腎系を介して主にカテコラミンやグルカゴンの分泌を亢進させ,肝酸素消費増加作用はα作用がβ作用より強力であると結諭づけられた.
  • 波多野 等, 野村 文夫, 飯田 真司, 斉藤 正之, 大西 久仁彦, 奥田 邦雄
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1126-1131
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    各種抗痙攣剤のハローセン肝障害に及ぼす影響について検討を行った.まずハローセン麻酔を施行した脳外科手術症例279例を術前フェノバルビタール(PB)投与群と非投与群に分け,術後肝障害発生頻度について比較した.その結果,PB投与群では100例中9例に,非投与群では179例中2例に認められ,PB投与群で肝障害発生率が有意に(p<0.005)高かった.更にラットを用い,各種抗痙攣剤(PB, valproic acid (VA), diphenylhydantoin (DPH))のラット肝障害,薬物代謝能に及ぼす影響について検討した.各薬剤前処置後にハローセン麻酔を施行したところ,PB群でS-GPT値の上昇と中心静脈周囲の肝細胞壊死が認められたが,他群では認められなかった.また肝小胞体分画のチトクロームP450値,肝小胞体によるハローセン還元代謝産物産生量もPB群で最も高い値を示した.以上の結果より,ハローセン麻酔前にPB投与を行うと,他薬剤に比し,還元代謝産物の産生量が増え,ハローセン肝障害発生率が高まることが示唆された.
  • 金沢 秀典, 松坂 聡, 多田 教彦, 黒田 肇, 小林 正文
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1132-1140
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    各種肝疾患の奇静脈血流量(ABF)を持続的局所熱希釈法により測定した.急性肝炎回復期例,慢性肝炎例,肝硬変例のABFは各々,82±13, 165±12, 247±19ml/min/mm2であり各群間に有意差を認めた.ABFは心拍出量,門脈圧と有意な正の相関を,また,有効肝血流量と有意な負の相関を示したが,食道静脈瘤とは明らかな関係を示さなかった.SengstakenBlakemore tubeによるタンポナーデにてABFは急速かつ明らかな低下を示した.propranolol, metoclopramideはABFを有意に低下させた.propranololによるABF低下率は,心拍出量,肝血流量の低下率にくらべ有意に大きかった.metoclopramideは全身・肝血行動態に変化を与えず,ABFのみを有意に低下させた.
    ABFは胃食道静脈系を介する上行性副血行路の血流量を反映すると考えられ,門脈圧亢進症における新しい検査法として有用と思われた.
  • 斉藤 正之, 大西 久仁彦, 田中 秀雄, 佐藤 慎一, 奥田 邦雄, 平島 毅, 原 輝彦
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1141-1146
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    肝硬変症69例,特発性門脈圧亢進症29例を対象として,食道静脈瘤に対する直達手術が,門脈血行動態へいかなる影響を及ぼすか検討した.門脈血流量は,2~5年前に直達手術を受けた肝硬変症14例,特発性門脈圧亢進症9例共に,非手術例の肝硬変症49例,特発性門脈圧亢進症17例に較べ有意に減少していた.肝硬変症5例,特発性門脈圧亢進症3例で,術前,術直後の門脈圧を測定し,またこれらの症例と肝硬変症1例を加えた計9例で術前と術後2週間目の門脈血流量の変動を検討した.術直後測定した門脈圧は,肝硬変症5例中2例で上昇,2例は下降,1例が不変であった.特発性門脈圧亢進症では,2例で減少し,巨大脾腎短絡路及び胃腎短絡路を有する1例は増加していた.術後2週間目の門脈血流量は,肝硬変症全例で減少し,特発性門脈圧亢進症では,門脈圧が術後下降した例では減少し,上昇した1例では増加していた.
  • 上野 隆登
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1147-1154
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    培養ラット肝細胞内微小管,中間径フィラメント(サイトケラチン),マイクロフイラメント(アクチン)の分布について,Horseradish peroxidase (HRP)酵素抗体法を用いた免疫電顕による観察を行なった.酵素抗体法は一次抗体に家兎チュブリン,サイトケラチン,アクチン抗体を,二次抗体にHRP標識抗家兎IgG山羊血清を用いた間接酵素抗体法で行なった.微小管,サイトケラチンフィラメント,アクチンフイラメントともに微細顆粒をともなった線維状構造を呈し,原形質内に多数観察された.さらに,通常の透過電顕に比較して,細胞骨格の細胞内分布,細胞内小器官との関連がより明確に観察できた.HRP酵素抗体法を用いた培養肝細胞内細胞骨格の免疫電顕による観察は,細胞骨格の細胞内分布やその変化および機能における研究に有用な手段と思われた.
  • 小暮 公孝, 石崎 政利, 加藤 良二, 根本 雅明, 中村 卓次, 長町 幸雄, Mitsugu MURATANI
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1155-1160
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    ラット肝臓を用いた実験が最近,増加しているが,本邦で発行されている動物実験書をみるとラット肝葉名は種々に記載されており,実験結果の記載に混乱が生じる恐れがある.著者はCouinaudの人肝解剖書に基づきラット肝葉の解剖学的検討を行った.その結果,ラット肝葉は5葉からなるが,左からそれらをA, B, C, D, E葉と名付けると,A葉は左外側葉,鎌状靱帯の付着したB葉は左内側葉,小さい紡錘状のC葉とD葉は各々,右内側葉,右外側葉,2つの突起を有するE葉は尾状葉とすると人肝の区域と基本的に一致することが分った.また,2区域を有するB葉を左区域,右区域に,尾状葉を左突起,右突起に分けると人肝の肝区域により合致することが認められた.
    本報告を契機にして,ラット肝葉に関し統一的名称が確立されることを期待する.
  • 第7報
    日本肝癌研究会
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1161-1169
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    1982年1月1日から1983年12月31日までの2年間の本邦における原発性肝癌5,567例について,429施設の協力によって,個人票を作成して調査した.このうち,2,251例は組織型が明らかで,肝細胞癌2,054例,胆管細胞癌118例,混合型22例,肝芽腫11例,肉腫7例,その他の原発性肝癌39例となっている.他の3,316例は組織型不明であった.組織型の明らかな症例について,腫瘍の組織型,併存病変の有無,転移様式,腫瘍の性状,周囲組織への浸潤程度,既往歴,診断時のAFP値などを調査すると共に治療と予後について検討した.
  • 藤川 正直, 岩村 伸一, 松浦 靖, 栄枝 弘司, 富田 昭, 前田 隆, 西原 利治, 大西 三朗, 伊藤 憲一
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1170-1176
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    近年IgM型HA抗体の測定によりA型急性肝炎の診断は容易となったが,一部症例では年余にわたってIgM型HA抗体が陽性を示すことも明らかとなった.IgM型HA抗体陽性遷延の機序としては生体からのA型肝炎ウイルスの排除の遅延が想定されている.今回長期にわたってIgM-HA抗体の持続陽性を示すHBs抗原陰性慢性肝疾患の4例を報告した.これら症例はいずれも年齢は50歳以上で肝障害を示した発症時期が明らかでなく,2例は肝硬変症,2例は慢性肝炎の像を示し非A非B型慢性肝炎の合併が強く示唆され,典型的なA型急性肝炎例におけるIgM-HA抗体遷延陽性例とは少し異なる病態と考えられた.従ってこれら4症例は非A非B肝炎ウイルス持続感染状態下ではHAVの重感染に際して,一部症例ではHAVに対する生体の免疫応答低下が生じHAVの生体よりの排除が遅延する可能性を示唆するものと考えられた.
  • 加藤 俊幸, 斉藤 征史, 丹羽 正之, 小越 和栄
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1177-1181
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    肝周囲炎の剖検例で,著明に萎縮した肝左葉に神経線維の増生を認めたので報告する.症例は48歳の男性で,体重減少を主訴に来院した.一般検査成績では赤沈値の亢進と胆道系酵素の上昇を認めた.各種画像診断からは肝左葉の著明な萎縮が疑われ,脾腫大と食道静脈瘤も認めた.開腹したが,強固な癒着のため確診が得られず,2年後に食道静脈瘤により死亡した.剖検時,肝は直径約15cmの円球状で,その表面全体は幅1cmの線維組織に覆われ,胆嚢も萎縮し埋没していた.萎縮した肝左葉の表面境界部には,線維組織の中に肝細胞小集団が散在し,さらに無数の偽胆管とともに神経線維の増生を認め,neuromaの組織像を呈していた.なお,肝実質に肝硬変や肝線維症の所見はなく,著明な門脈圧亢進は線維組織による肝門部での門脈圧迫のためと考えられるが,肝周囲炎の成因の解明は困難であった.
  • 脇山 耕治, 荒川 泰行, 鈴木 壱知, 宮本 正俊, 松尾 裕, 本田 利男, 冨岡 恵知子, 間野 素子, 木許 一良, 佐々木 朝照, ...
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1182-1183
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 荒川 泰行, 宮本 正俊, 天木 秀一, 松尾 裕, 本田 利男, 神田 靖男, 志方 俊夫
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1184-1185
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 小林 衛, 武藤 正樹, 鬼頭 文彦, 横井 隆志, 嶋田 紘
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1186-1187
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 岡田 良雄, 神野 健二, 森脇 昭介, 有馬 暉勝, 長島 秀夫
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1188-1189
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 増殖型と組み込み型
    戸塚 慎一, 江角 真理子, 内田 俊和, 志方 俊夫
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1190
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 白井 睦訓, 香川 博幸, 渡辺 精四郎, 西岡 幹夫
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1191
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 桑原 芳弘, 小島 隆, 松井 俊二郎, 青山 圭一, 井上 恭一, 佐々木 博
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1192
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • ionophoreによる変化
    渡辺 純夫, 広瀬 美代子, 伴野 昌厚, 竹内 真, 黒田 博之, 浪久 利彦
    1986 年 27 巻 8 号 p. 1193
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 1986 年 27 巻 8 号 p. 1194-1229
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
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