肝臓
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32 巻, 6 号
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  • 野崎 周英, 水野 喬介, 江角 真理子, 志方 俊夫
    1991 年 32 巻 6 号 p. 591-595
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    C8-2cDNAはC型肝炎ウイルス(HCV)の非構造タンパク領域(NS) 5の一部89アミノ酸(aa)をコードする遺伝子クローンである.このcDNAにコードされるタンパクはC型肝炎(HC)患者血清と特異的に反応する.この領域を2つ(1~37aa, 38~89aaを各々コードするcDNA)に分割して,それぞれを大腸菌を宿主として発現させた結果,いずれの発現タンパクもHC患者血清と特異的に反応した.さらにこれらの領域内のペプチドを3種類(1~37aa, 38~72aa, 60~89aa)合成してELISAを行った結果,いずれのペプチドもHC患者血清と反応した.これらの結果からC8-2領域内には少なくとも3つのエピトープが存在することが示された.
  • 中田 収作, 西原 利治, 大西 三朗, 山本 泰猛
    1991 年 32 巻 6 号 p. 596-603
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    原発性胆汁性肝硬変(PBC)患者の脾臓リンパ球の自己胆管上皮細胞に対する細胞傷害活性を測定する系を確立し,胆管上皮細胞の傷害機序を検討した.PBC 3症例の脾臓リンパ球は自己胆管上皮細胞に対して全例が細胞傷害活性を示したが,対照疾患6症例は全例細胞傷害活性を示さなかった.細胞傷害活性はT細胞分画に検出され,non-T細胞分面には検出されなかった.T細胞の細胞傷害活性はnegative depletionよりCD8陽性細胞集団に検出され,抗MHC class I抗体添加により部分的抑制を認め,細胞傷害活性の発現にMHC class I抗原の関与が示唆された.またT細胞傷害活性は抗胆管上皮抗体添加により濃度依存性に抑制された.以上の成績は,PBCの自己免疫機序による胆管上皮細胞傷害に,より直接的な根拠を与えるものと考えられる.
  • 背景因子別にみた長期予後の検討
    磯村 伸治, 江原 正明, 大藤 正雄, 近藤 福雄, 鈴木 泰俊
    1991 年 32 巻 6 号 p. 604-612
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    TAEを施行した腫瘍径2~10cmの肝細胞癌(TAE群)102例の長期予後を検討した.TAE群の予後に有意に関連する因子は多変量解析によれば腫瘍径と腫瘍型であった.TAE群の生存率は腫瘍径が小さいほど,また塊状型,多結節型,単結節型の順に良好となった.単結節型と多結節型の生存率の間には有意差が認められなかった.3年以上の長期生存は12例にみられたが,6ヵ月未満の死亡も11例に存在した.TAEの有用性を自然経過群との比較から検討した.腫瘍径ごとに腫瘍型別の検討を行なったところ,TAE群が自然経過群より有意に良好な生存率を示したのは,3-5cmと5-10cmの結節型,および5-10cmの塊状型であった.2-3cmではTAE群は自然経過群より良好な生存率を示したが,有意差は認められなかった.3-5cmおよび5-10cmの結節型において,TAE群の50%生存期間はそれぞれ1年5ヵ月と1年3ヵ月であった.5-10cmの塊状型では50%生存期間は6ヵ月と短期間に留まった.以上より,3-10cmで結節型の場合がTAEの最も良い適応と考えられた.
  • 関 寿人, 久保田 佳嗣, 国枝 恒治, 加納 東彦, 佐藤 正博, 城 知宏, 水野 孝子, 塩崎 安子, 井上 恭一
    1991 年 32 巻 6 号 p. 613-617
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    切除不能,肝動脈塞栓療法(TAE)施行不可の大型肝細胞癌(結節型,腫瘍径5~9cm)10例に対し超音波誘導下経皮的エタノール局注療法(PEIT)単独治療を行いその効果を検討した.エタノールの注入回数は,平均8回,エタノールの総注入量は,平均94mlであった.現在生存期間は,7ヵ月~32ヵ月であり10例中3例は死亡.死因は,3例とも肝癌死であった.主腫瘍の縮小効果は,治療を中断した1例を除いて良好で腫瘍縮小率は,平均36%を示した.治療終了後8ヵ月~28ヵ月の間に10例中8例に肝内に新しい病巣の出現を認めたが再度PEITを行い病巣の進展は抑止可能であった.合併症は,多量のエタノール注入にもかかわらず臨床上問題となるものはなく,また著明な肝機能低下を示すようなことはなかった.以上より本法は,手術,TAEが適応とならない大型肝細胞癌にも有効な治療法となり得ると考えられた.
  • 枝光 理, 清松 和光, 中島 収, 杉原 茂孝, 神代 正道, 才津 秀樹, 中山 和道, 真島 康雄, 谷川 久一
    1991 年 32 巻 6 号 p. 618-624
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    超音波検査にて高エコー像を呈する肝細胞癌の病理組織像について検討した.対象とした3cm以下の肝細胞癌切除例88例中,高エコー像を呈したのは34例(38.6%)であり,腫瘍径別では1cm以下では9例中1例,1.1~2.0cmでは38例中17例,2.1~3.0cmでは41例中16例と1.1~2.0cmで最も高頻度であった.高エコーの組織像としては,癌細胞の脂肪化20例,偽腺管構造6例,Peliosis hepatis様に拡張した血洞より成る6例,淡明細胞化および線維化が各1例にみられ,脂肪化によるものが最も高頻度であった.なお,脂肪化により高エコー像を呈した症例では,脂肪化は癌組織の1/3以上に認められるもので,また,高エコーを呈する偽腺管型肝細胞癌は偽腺管の嚢胞状拡張を伴うものに限られていた.
  • とくに胆管上皮の変化について
    大部 誠, 奥平 雅彦, 渡辺 清治, 高井 智子, 金子 聡
    1991 年 32 巻 6 号 p. 625-632
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    腎移植症例27剖検例,8生検例の肝病変について臨床病理学的に検討した.肝の主要病変は肝炎,肝硬変,肝細胞癌,肝静脈末梢枝の閉塞性病変,局所的肝細胞泡沫変性,胆汁うっ滞,肝血鉄症および小葉間胆管上皮の肝細胞化生であった.この中で,小葉間胆管上皮の肝細胞化生はこれまで注目されなかった所見であり,PAS陽性,ジアスターゼ消化後PAS陰性,アルブミン陽性,ケラチンおよびサイトケラチン陰性など肝細胞と同様の組織化学的性格を示した.胆管上皮の肝細胞化生は慢性腎不全や慢性活動性B型肝炎でも低頻度ながら出現していたが,肝細胞化生を示した腎移植症例では高率にγ-GTPの上昇を認めた.胆管上皮の肝細胞化生は生体にとってadverse reactionではないが,胆道系酵素の上昇を考える上で示唆に富む所見と思われる.
  • 永岡 哲郎
    1991 年 32 巻 6 号 p. 633-642
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    肝切除およびCCl4急性肝障害ラットの肝再生過程における血漿nucleosideの変動を検討した.血漿nucleoside濃度はHPLCにて測定し,肝再生の指標としてmitotic indexを用いた.肝切除ラットでは肝切除後3~6時間にcytidine (Cyd), adenosine (Ado)がsham手術群に比し有意に上昇,uridine (Urd)は上昇傾向を示し,血清transaminaseのピークより早期であった.肝切除後36~72時間にはCyd, Urdは有意に値下し,その時期はmitotic indexの上昇時期に一致していた.CCl4急性肝障害ラットではCCl4投与後6~24時間にCyd, Urd,Ado, pseudouridine (Ψrd), 1-methyladenosine (m1A)は有意に上昇し,血清transaminaseのピークより早期であった.CCl4投与後72時間にはCydは低下し,mitotic indexの上昇時期にほぼ一致していた.すなわち血漿nucleosideは肝障害過程で上昇し,肝再生過程では低下する傾向を示す結果が得られ,肝再生と血漿nucleosideは関連を有することが示唆された.
  • 橘 とも子, 米山 啓一郎, 八田 善夫
    1991 年 32 巻 6 号 p. 643-649
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    分離後24時間培養したラット肝細胞coupletsの細胞内pH (pHi)の変化を,蛍光pH指示薬BCECFとLaser cytometer (ACAS 570)を用いて測定検討した.このsystemによりpHiの変化がreal timeで観察出来,Na+依存性のNa+-H+ exchangerを確認し得た.acidification後のinitial pHiとpHi recovery rateとの関係より,Na+-H+ exchangerのactivityはset pointに近付くほど減弱しており,initial pHiからset pointに達するまでの時間はT1/2=2.08±0.84(min), set pointのpHは7.12±0.20であった.Na+-H+ exchangerはblockerであるamilorideに対しsensitiveであり,又,protein kinase CのactivatorであるTPA添加により,set point付近でexchangerのactivityは増加し肝細胞のset pointは上昇した.以上のごとく,Laser cytometerな用いた細胞膜イオンポンプ作用の観察・検討は,従来の方法に比してより生理的な状態で測定できる点で今後の肝細胞膜生理の研究に有用と思われる.
  • 藤岡 博道, 浜口 浩一, 小笠原 誠, 青沼 宏深, 宮崎 光一, 山田 昌信, 高瀬 幸次郎, 中野 赳, 為田 靱彦, 小坂 義種
    1991 年 32 巻 6 号 p. 650-656
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    A型急性肝炎に急性赤芽球癆を合併した1例を経験した.症例は70歳男性.尿の濃染を自覚し,近医で黄疸を指摘されて当科に入院した.IgM型HA抗体陽性よりA型急性肝炎と診断,保存的治療が施行され,GOT, GPTは改善傾向にあった.しかし高度の黄疸が持続,入院第15日より急速な貧血の進行を認め,入院第23日にHb 4.3g/dlと低下した.網状赤血球は0.1%と著減,骨髄は赤芽球系のみが著しい低形成を示した.またT. Bil, LDH (1型優位)の上昇,Haptoglobinの著明な低下が見られた.以上の検査結果より溶血を合併した急性赤芽球癆と診断した.洗浄赤血球輸血とPrednisolone 60mg/dayの投与により網状赤血球,Hbは上昇し,骨髄像は赤芽球系の過形成を呈した.T. Bil, LDHは低下傾向を示し,ステロイドの減量後も経過は良好であった.入院第77日に施行した腹腔鏡所見は胆汁うっ滞像を呈し,組織学的には肝内胆汁うっ滞を伴う急性肝炎回復期の像であった.
  • 北 和彦, 江原 正明, 渡辺 栄, 松代 有司, 吉川 正治, 杉浦 信之, 大藤 正雄, 近藤 福雄
    1991 年 32 巻 6 号 p. 657-663
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    雄磁気共鳴画像(以下MRI)のT2強調像において,低信号パターンを呈した肝細胞癌の2症例を報告した.症例1は主腫瘍の径が29×22mm,症例2は30×25mmで,2症例ともMRIのT1強調像で非腫瘍部に比し高信号パターン,T2強調像では低信号パターンを呈した.病理組織ではEdmondson I~II型の肝細胞癌で,HE染色標本では特徴的な所見は認められなかったが,ルベアン酸による銅染色で2症例とも細胞質内に黒色に染まる銅の沈着が認められた.肝細胞癌は,MRIのT2強調像において大多数が高信号パターンを呈すると報告されており,低信号パターンを呈する例は未だ報告されていない.今回,T2強調像で低信号パターンを呈する肝細胞癌を2例経験し,病理組織学的検討を行った結果,細胞質内の著明な銅沈着が認められたことが特徴的であり,T2強調像での低信号パターンとの関連が示唆された.
  • 徳山 博, 相澤 研一, 米澤 隆之, 松園 泰彦, 土井 みさこ, 松本 司, 坂辻 喜久一, 西岡 新吾, 矢高 勲
    1991 年 32 巻 6 号 p. 664-669
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性で,意識障害を主訴に来院.軽度肝機能低下,血中アンモニア高値,ICG 15分値停滞,CT上肝に軽度萎縮を認めたことから肝性脳症が疑われた.左腎静脈造影により,splenorenal-gastrorenal shuntが認められた.肝組織像ではhemosiderin沈着が見られたが,明らかな門脈圧亢進を引き起こす肝硬変や肝線維症はなかった.バルーンカテーテルによる短絡閉鎖試験を行い,閉鎖前後のアンモニア値,門脈圧の変化を測定した.短絡閉鎖後,アンモニア負荷試験においてアンモニア値は上昇せず,門脈圧は軽度上昇したことから,この短絡から門脈血が大循環系に流入していることが明らかになった.本症例のように明らかな門脈圧亢進を引き起こす肝硬変や肝線維症を伴わない門脈大循環性脳症は稀であり,短絡発生の機序として,腹部手術の癒着が成因と考えられた.
  • 大田 人可, 小野 稔, 大平 基之, 関谷 千尋, 並木 正義
    1991 年 32 巻 6 号 p. 670-671
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 上野 規男, 榎本 峰生, 木村 健
    1991 年 32 巻 6 号 p. 672-673
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 山田 慎二, 市田 隆文, 波田野 徹, 畑 耕治郎, 上村 朝輝, 朝倉 均, 廣田 紀男
    1991 年 32 巻 6 号 p. 674
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
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