症例は83歳, 女性. 1993年より肝機能障害を指摘され近医通院を続けていた. 1998年5月, 腹部超音波検査にて肝内占拠性病変を指摘され当科紹介入院となった. 胆道系酵素とIgMが上昇し, 抗ミトコンドリアM2抗体強陽性であり, 非腫瘍部の肝生検ではScheuer II期の原発性胆汁性肝硬変と診断した. 血中のHBs抗原, HBc抗体, HCV抗体, HCV-RNA, HGV-RNA, TTV-DNAいずれも陰性で, real-time PCR法による肝組織中のHBV-DNA, HCV-RNAも陰性であった. 腫瘍マーカーはAFP, PIVKA-IIともに正常であったが, 肝左葉外側区域に直径40mmの占拠性病変を認め, 腫瘍狙撃生検にて中分化型の肝細胞癌の診断を得たため, 肝動脈塞栓術を行った. 非硬変期であるScheuer II期の無症候性の原発性胆汁性肝硬変に肝細胞癌を併発した血中, 肝組織中の肝炎ウイルスマーカー陰性の稀な症例と考えられた.
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