肝臓
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54 巻, 1 号
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総説
症例報告
  • 古山 準一, 森園 竜太郎, 後藤 哲, 森田 康太郎, 西尾 仁, 高木 秀雄, 内沢 政英, 水尾 仁志
    2013 年 54 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    症例は,73歳,男性.1998年肝細胞癌に対して拡大肝右葉切除術施行.2002年両側肺に多発腫瘤影(奇静脈葉,右肺門部,左葉)を指摘され,肺生検にて肝細胞癌転移と診断.UFTの内服治療は無効.2004年7月より血痰を認め,2006年2月より血痰量が増加し,出血源と考えた右肺門部の多発性腫瘤を標的として,Epirubicinにて気管支動脈内抗癌剤注入療法(BAI)を2回施行.同部は縮小傾向を示すも血痰が持続し,微粉末化シスプラチン(IAC)によるBAIを施行したところ,血痰は消失し同部の腫瘤は消失した.その後,最大の奇静脈葉の腫瘤に対してIACによるBAIを施行したところ,同腫瘤は消失した.血管造影および動注施行中に造影効果が認められなかった他の腫瘤は,無効・増悪病変であった.肝内病変が制御されており,かつ呼吸器症状を有する肺転移例ではBAIも治療の選択肢の一つになりうると考えられた.
  • 岡井 研, 喜田 栄作, 松橋 暢生, 松岡 英彦, 市井 統, 山崎 雅弘, 田井 真弓, 鈴木 智浩, 江尻 豊, 高橋 敦史, 大平 ...
    2013 年 54 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性,全身倦怠感,褐色尿及び肝機能障害を認め入院.IgM-HA抗体陽性から当初急性A型肝炎と診断し保存的加療により軽快退院した.退院後再び肝機能が増悪し再入院し,肝生検では急性肝炎後の非特異的な所見のみで,メチルプレドニゾロンによるミニパルス療法にて肝機能は改善し,以降プレドニゾロン(PSL)を漸減,中止された.しかし,PSL中止1カ月後で再度肝機能の増悪を認め,抗核抗体陽性,高γグロブリン血症に加えHLA DR4陽性,同時点での病理所見を併せて自己免疫性肝炎と診断された.本例はIgM-HA抗体の抗体価が発症初期から低く,HAV-RNA陰性,IgG-HA抗体が高力価陽性であったことから,急性発症型自己免疫性肝炎と最終的に診断した.本例は急性期の自己免疫性肝炎の病態に関して示唆に富む症例と考えられた.
  • 丸野 敦子, 加川 建弘, 藤澤 美亜, 川口 義明, 沼田 誠, 長田 成彦, 渡辺 勲史, 市川 珠紀, 小泉 淳, 堂脇 昌一, 増田 ...
    2013 年 54 巻 1 号 p. 33-43
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性.下痢,肝障害,肝腫瘤を主訴に紹介となった.48才時,肝S4に2 cm大嚢胞性腫瘤を指摘され,以後,緩徐な増大を認めていたが,未精査であった.以前から難治性十二指腸潰瘍,下痢を認めていた.CTにて動脈相で辺縁が造影され,境界明瞭な実質部分と嚢胞部分が混在する11 cm大腫瘤を認め,肝左葉切除を行った.腫瘍はリボン状配列を呈する立方状細胞からなるカルチノイド腫瘍であった.他臓器に原発巣を疑う病変がなく,術前,高値であった血中ガストリン,セロトニンの正常化とともに十二指腸潰瘍,下痢が消失したことから,カルチノイド症候群, Zollinger-Ellison症候群を呈する肝原発カルチノイド腫瘍と診断した.腫瘍のdoubling timeは27.6カ月であった.17年間もの長きにわたり自然経過を観察し得た肝原発カルチノイド腫瘍はこれまで報告がなく,貴重な症例と考え報告する.また本疾患における嚢胞形成につき文献的考察をおこなった.
  • 梅村 真知子, 永坂 敦, 深澤 雄一郎, 藤田 與茂, 遠藤 文菜, 中村 路夫, 西川 秀司, 樋口 晶文
    2013 年 54 巻 1 号 p. 44-50
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    71歳の女性が2011年1月に通院中の近医で胆道系酵素の上昇を指摘され,同3月当科紹介となった.軽度の肝機能異常と胆道系酵素の上昇を認め,抗ミトコンドリアM2抗体(AMA M2)価が158倍と高値陽性であり,PBC(Primary biliary cirrhosis)と診断された.同4月上旬より尿の濃染,倦怠感を自覚するようになり,4月13日の採血でT-bil 3.7 mg/dl,AST 224 IU/L,ALT 1095 IU/Lとトランスアミナーゼの急上昇を認め,異時性PBC-AIH(Autoimmune hepatitis)overlap症候群を疑った.肝生検組織では強いinterface hepatitisと肝細胞の壊死脱落の所見を認め,門脈域に細胆管の増生を認めたが,胆管の慢性破壊性変化を示唆する所見に乏しく,AMA M2陽性AIHと診断した.ウルソデオキシコール酸(UDCA)600 mg/day,プレドニゾロン(PSL)30 mg/day投与を開始したところ肝機能障害が速やかに軽快した.
  • 藤山 泰二, 井上 仁, 羽田野 雅英, 伊藤 英太郎, 米永 吉邦, 渡邊 常太, 串畑 史樹, 高田 泰次, 羽藤 高明, 羽賀 博典
    2013 年 54 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    症例は50歳女性.2011年2月C型肝硬変に対して息子をドナーとして生体部分肝移植を施行した.血液型は一致,術前の細胞障害性リンパ球クロスマッチテスト(LCT)は陰性であった.術後LDH,ビリルビンの上昇を認め,また早期より血小板輸血不応症の状態となった.その後血栓性微小血管障害(TMA)を合併し術後10日目に脳内出血を発症し死亡した.術前の保存血清を用いて抗HLA抗体を検査したところ,Flow PRA法で%PRAは99.7%,ルミネックスによるシングル抗原同定検査ではドナーに発現しているHLA-Cw9に対する抗体を含め広汎なHLAに反応する抗HLA抗体が検出された.術後8日目の肝生検で診断された液性拒絶反応,血小板輸血不応症,続発したTMAは,抗HLA抗体が原因と診断した.肝移植術前検査,抗HLA抗体陽性患者の肝移植を検討する上で非常に貴重な症例と考える.
  • 山下 信行, 谷本 博徳, 野村 秀幸
    2013 年 54 巻 1 号 p. 60-66
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    輸血によるB型急性肝炎の一例を報告する.症例は50歳代男性.心臓手術を受けた際に多量の輸血を受けた.輸血約3カ月後にはHBs抗原,HBs抗体,HBc抗体いずれも陰性であったが,6カ月後に肝障害を認めた.HBs抗原陽転化および血中HBV-DNA陽性によりB型急性肝炎と診断された.安静のみで肝炎は改善し,血中HBV-DNAは数週間で検出不能となった.輸血製剤の調査により新鮮凍結血漿の1本でHBV-DNAが検出され,塩基配列が患者から得られたウイルスのものと一致した.献血者は頻回に献血を行っておりOccult HBV感染と考えられた.核酸増幅検査の精度向上にかかわらず,Occult HBV感染者由来と思われる輸血後B型肝炎は年間数例の報告が続いている.2012年8月にHBc抗体低力価かつHBs抗体低力価の献血血液を不使用とする新たな対策が講じられ,感染者の減少が期待されている.
  • 隅田 幸佑, 道免 和文, 相島 慎一, 岩坂 翔, 久本 仁美, 原田 由紀子, 三宅 典子, 下野 信行, 下田 慎治
    2013 年 54 巻 1 号 p. 67-73
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    症例は19歳女性.発熱,全身の皮疹,びらん,水疱を主訴に当科に紹介となった.皮膚病理組織からイブプロフェンまたはアセトアミノフェンが原因薬剤と思われる中毒性表皮壊死症と診断し,ステロイドパルス療法を行った.皮膚所見は速やかに改善したが,入院時より認めていた肝機能異常,黄疸は遷延した.入院から1カ月後の肝病理所見から胆管消失症候群と診断した.ウルソデオキシコール酸の内服投与にて肝機能異常,黄疸は徐々に改善し,約9カ月後に正常化した.本症例は発症1カ月,6カ月,11カ月に肝生検を行った.1回目の肝生検の病理像でほとんどの門脈域で胆管が消失していたが,2回目,3回目の肝病理像では再生した胆管が増生していく所見を観察し得た.中毒性表皮壊死症は胆管消失症候群を合併することが知られている.本症例は胆管消失症候群に対し,肝病理学的経過を追えた貴重な症例と考えられた.
  • 大園 芳範, 蓮池 悟, 永田 賢治, 山田 優里, 土持 舞衣, 中村 憲一, 白土 明美, 楠元 寿典, 岩切 久芳, 佐藤 祐二, 藤 ...
    2013 年 54 巻 1 号 p. 74-80
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.特発性膜性腎症に対し免疫抑制療法を施行されていた.治療開始11カ月後に肝障害が出現し当科入院.膜性腎症診断時のHBs抗原陰性,HBs抗体陰性,HBc抗体陽性であり既往感染例と考えられたが,肝障害出現時にHBs抗原陽転化を認めたため,de novo B型肝炎と診断した.HBV-DNAは9.1 logcopies/mLと上昇しており,核酸アナログ製剤の内服を開始した.以後,トランスアミナーゼ,HBV-DNAともに漸減し,重症化・劇症化することなく経過した.de novo B型肝炎の基礎疾患として本症例のような腎疾患の報告は少なく,文献的考察を加えて報告する.
速報
短報
  • 仁科 惣治, 栗原 淳子, 則安 俊昭, 糸島 達也, 山本 和秀, 田中 純子, 日野 啓輔
    2013 年 54 巻 1 号 p. 84-86
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    In Okayama prefecture we investigated by questionnaires whether hepatitis B virus (HBV) (n=549) or hepatitis C virus (HCV) carriers (n=803) consulted a doctor after they had been informed of their infection at their initial checkup for viral hepatitis between 2002 and 2006. The ratio of patients who consulted a doctor after notification of infection was 38.4% (211/549) of HBV carriers and 49.4% (397/803) of HCV carriers, respectively. Among those patients, 53.1% of HBV carriers and 73.4% of HCV carriers were on follow care at the start of this investigation. These results indicated a need to establish a more effective follow up system for hepatitis virus carriers following notification at the initial medical checkup.
  • 加藤 慶三, 安達 哲史, 立花 浩幸, 佐藤 祥之, 井家 麻紀子, 戸田 剛太郎, 島田 紀朋
    2013 年 54 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/29
    ジャーナル フリー
    To evaluate the efficacy of percutaneous radiofrequency ablation (RFA) using flat-panel detector angiographic CT (FACT) for hepatocellular carcinoma (HCC), we performed RFA using FACT for 23 HCC lesions in 16 patients. After transcatheter arterial chemoembolization or infusion chemotherapy using miriplatin as a sustained-release suspension in iodized oil and/or gelatin sponge, we performed RFA. RFA needle was inserted into the target lesion under US guide. Using FACT, we could confirm whether the needle tip inserted at the target assuming enough coagulative necrosis area from all angles in all lesions. Enough ablative margins could be obtained in all lesions. No serious adverse events were observed. RFA using FACT contributed more accurate insertion for HCC. Therefore, FACT would be a more useful tool for RFA.
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