肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
65 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 吉治 仁志
    2024 年 65 巻 2 号 p. 49-57
    発行日: 2024/01/23
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル フリー

    2021年10月にBaveno VII consensus meetingがWEBにて開催された.Baveno meetingは欧州肝臓学会(EASL)を中心とした門脈圧亢進症に関する様々な項目におけるコンセンサスを決定する会議であり,1990年から5年ごとに開催されている.世界中の多くの臨床研究はこのBaveno基準に基づいて行われていることが多く,事実上門脈圧亢進症におけるGlobal standardとなっている.これまで日本はこの会議に参画できていなかったが,今回のBaveno VIIから日本肝臓学会が正式にFaculty memberとして参画することとなった.本論文ではBaveno meetingの経緯と,今回のBaveno VIIで発表された内容について日本における肝硬変診療との差違を含めて概説する.

症例報告
  • 山村 咲季, 大歳 晃平, 木皿 典宏, 宮崎 豊, 山岸 俊夫
    2024 年 65 巻 2 号 p. 58-65
    発行日: 2024/01/23
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル フリー

    症例は30代,女性.20XX年12月にSARS-CoV-2に感染した.その後,倦怠感が持続していたが,翌年6月の健診にて肝機能異常を指摘され,当科を受診した.20XX年10月までの健診では異常なく,急性肝炎の疑いで入院となった.飲酒歴はなく,腹部超音波,CT検査でも脂肪肝を認めなかった.血清学的検査にて,肝炎ウィルスマーカーは陰性で,サイトメガロウィルスとEpstein-Barrウィルスは既感染であった.抗核抗体陽性,抗ミトコンドリア抗体陰性で,自己免疫性肝炎(AIH)が疑われた.肝生検にて,中心静脈周囲に形質細胞,リンパ球浸潤,rosette形成を認め,急性期AIHに矛盾しない所見であった.グリチルリチン製剤と副腎皮質ステロイドの投与により,肝機能異常は改善し,それに応じて,持続していた倦怠感も消失した.SARS-CoV-2感染を契機にAIHを発症した可能性が考えられた.COVID-19罹患後に様々な症状が遷延するCOVID-19罹患後症状が知られており,倦怠感が持続する場合には,自己免疫原性の肝障害も鑑別に挙げる必要があると思われる.

  • 古味 昌紘, 川中 美和, 木村 美名子, 小田 進太郎, 島田 佳祐, 河田 真由子, 石井 克憲, 谷川 朋弘, 浦田 矩代, 西野 謙 ...
    2024 年 65 巻 2 号 p. 66-73
    発行日: 2024/01/23
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル フリー

    原発性硬化性胆管炎(PSC:Primary sclerosing cholangitis)の発症や急速な進行を肝生検とMRCP(Magnetic Resonance Cholangio Pancreatgraphy)にて確認し,治療として施行した肝移植後も20年以上無再発で長期観察できた1症例を経験した.初診時の肝生検やMRCPではPSCを疑わせる所見は認めず,3年後にPSCと診断,その後半年で急速に著明な胆管拡張,黄疸の上昇,肝予備能の低下を認め生体肝移植を施行した.本症例は現在,肝移植後20年以上経過しているが,再発なく経過良好な症例であり,さらにはPSCの診断前から発症,急速な悪化,移植,その後の経過を観察しえた貴重な報告と考えた.

  • 金 守良, 金 秀基, 小林 久人, 奥田 豊一, 中井 敦史, 藤井 友実, 早雲 孝信, 鈴木 龍司, 大谷 綾, 笹瀬 典子, 金 啓 ...
    2024 年 65 巻 2 号 p. 74-80
    発行日: 2024/01/23
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル フリー

    症例は90歳代女性.腰椎圧迫骨折にて入院後に鎮痛目的でアセトアミノフェン(APAP)1.8 g/日を7日間,0.6 g/日を19日間投与された.投与後17日目より肝胆道系酵素上昇が出現し,好酸球増多をともなっていた.抗核抗体(ANA)陰性,抗ミトコンドリア-M2抗体(AMA-M2)陰性,HBs抗原陰性,HCV抗体陰性であった.

    肝生検所見では,APAP肝障害の特徴である小葉中心性壊死はみられず,門脈域には好酸球・好中球よりもリンパ球優位の軽度から中等度の炎症細胞浸潤を認めた.加えて,肝内小型胆管に好酸球・リンパ球浸潤を認めた.APAP投与中止により肝胆道系酵素上昇の改善がみられた.

    今回我々は,非定型的な病理組織像を呈したAPAP投与後肝障害の一症例を経験したので報告する.

  • 清水 陸久, 松井 哲平, 南雲 秀樹, 小林 康次郎, 荻野 悠, 向津 隆規, 和久井 紀貴, 永井 英成
    2024 年 65 巻 2 号 p. 81-91
    発行日: 2024/01/23
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル フリー

    50代男性.20XX年X月に,陰囊腫大と下腿浮腫を主訴に当院救急外来を受診した.腹部超音波検査および腹部造影CT検査で肝左葉内側区門脈および下大静脈への浸潤を伴う最大径60 mm大の腫瘍を認めた.精査の結果,下大静脈から両腸骨静脈に至る血栓を伴う主要血管浸潤を合併した肝細胞癌と診断した.Lenvatinibの投与と肝動注化学療法の交互治療を行うことにより門脈本幹の腫瘍栓は縮小し求肝性血流の再開が確認されたが,上腸間膜静脈-下大静脈シャントによるシャント型肝性脳症により治療継続が困難となった.シャント型肝性脳症に対してCoil-assisted retrograde transvenous obliteration IIを施行することにより肝性脳症の改善が得られ,肝細胞癌の集学的治療の再開が可能になった稀な症例であり,若干の文献的考察を加え報告する.

  • 伊豆 将貴, 一木 康則, 橋元 悟, 大久保 公晴, 佐藤 大晃, 平田 敬, 永田 豊, 上平 幸史
    2024 年 65 巻 2 号 p. 92-98
    発行日: 2024/01/23
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル フリー

    症例は30代女性.出産までは肝機能異常を認めなかったが,出産5日後にALTが30 U/L台となり増悪し続けるため2カ月後に当科を受診.AST 96 U/L,ALT 137 U/L,IgG 1517 mg/dL,抗核抗体40倍,抗平滑筋抗体160倍,肝炎ウイルス陰性.肝生検では門脈域に軽度のリンパ球浸潤を認めたが,interface hepatitisはわずかで,中心静脈周囲の壊死炎症所見なく,巣状壊死部に形質細胞浸潤を認め,線維化はほとんど認めなかった.肝生検後にIgGが2124 mg/dLと上昇し,急性発症型自己免疫性肝炎と診断して副腎皮質ステロイドの投与を開始.途中,ウルソデオキシコール酸やアザチオプリンの併用も行いつつステロイドを漸減し,肝機能検査は正常を維持している.自己免疫性肝炎が妊娠中に軽快し出産後に増悪する報告は多いが,出産後に新規発症する報告は少ないため貴重な症例と考え報告する.

feedback
Top