症例は75歳女性.健診で肝腫瘍を指摘され,受診した.造影超音波検査,Dynamic CT,Gd-EOB-DTPA MRI,血管造影検査で,肝S5に20 mm(腫瘍A)と11 mm(腫瘍B)の腫瘍を認めた.早期相で腫瘍Aは辺縁が濃染,腫瘍Bは全体が濃染,門脈相から平衡相にかけて共に濃染が持続した.肝内胆管癌や細胆管細胞癌等を考え,肝内側区域+前腹側区域切除を行った.病理診断は腫瘍Aが混合型肝癌,腫瘍Bが細胆管細胞癌であり,非癌部は正常肝であった.細胆管細胞癌は原発性肝癌取り扱い規約第6版では独立した肝癌であるが,WHO分類2010では肝幹細胞からの発生を考慮され混合型肝癌のsubtypeとして分類されている.本症例の様に正常肝の同一亜区域内に混合型肝癌と細胆管細胞癌が同時に存在した例は極めて稀であり発生学的見地からみても貴重な症例と考えられたので報告する.
症例は62歳男性.黄疸,肝腫瘍の精査目的に入院となった.造影CTで肝S8に50 mm大の早期濃染およびwash outを呈する腫瘍を認めた.また,同様の造影効果を示す腫瘍が胆管内に充満しており,胆管内発育型肝細胞癌と診断した.背景肝はB型慢性肝炎であった.高度の黄疸を認めたため,減黄処置と肝動注化学療法(TAI)を先行させ,黄疸の改善後に肝動脈化学塞栓療法(TACE)を行った.腫瘍は縮小し,その後肝右葉切除術を施行した.しかし,術後7カ月の造影CTで断端部胆管内に再発を認めた.再度黄疸をきたしていたため,TAIを先行し,TACEを追加したところ腫瘍は消失し,手術から3年経過した現在も再々発は認めていない.胆管内発育型肝細胞癌術後の胆管内孤立性再発はまれであり,これまでに血管内治療が奏効した報告はない.胆管内孤立性再発に対して血管内治療のみで長期寛解を得た貴重な症例と考えられた.