肝臓
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32 巻, 12 号
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  • HBV濃厚感染地区例による検討
    樋口 庄市
    1991 年 32 巻 12 号 p. 1085-1092
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    肝疾患多発地区において,非B型肝疾患例の病因としてのHCV関与に加え,HBVとHCVの重感染例における相互干渉作用の有無を検討する目的で種々のHBVマーカー,HCV関連抗体を測定した.対象774例中HCV関連抗体陽性者はanti-C100 72例(9.3%),anti-Core 79例(10.2%)と高率であった.なかでもHBs抗原陰性の肝機能異常群132例におけるHCV関連抗体陽性者はanti-C100 33例(25.0%), anti-Core 35例(26.5%)であり,この群の肝機能異常にHCVの関与が推察された.97例のHBVキャリアにおけるHCV関連抗体陽性率もanti-C100 9例(9.3%), anti-Core 8例(8.2%)と高率であった.
    HBVとHCVの重感染群はHCV関連抗体陰性のHBVキャリア群に比しDNA-P値は有意に低く,HBs抗原の力価,HBe抗原陽性者の頻度は低かった.また,重感染群はキャリア群に比し200倍希釈血清におけるHBc抗体の抑制率が有意に低いことより,HBVとHCVの重感染によりHBVの活動性や増殖性の低下が示唆された.
  • 時田 元, 清水 勝, 小島 峯雄, 高橋 善彌太, 宇土 一道, 田中 建志, 津田 文男, 岡本 宏明
    1991 年 32 巻 12 号 p. 1093-1100
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    非A非B型肝炎が多発する一山村の30歳以上の住民検診受診者1,062名の血清トランスアミナーゼおよびHCV関連抗体としてC100-3抗体,CP-9抗体,CP-10抗体,GOR抗体を測定した.S-GPT値が36IU/l以上の例を13.6%に認めた.C100-3抗体陽性率は15.3%,CP-9抗体陽性率は36.0%,CP-10抗体陽性率は33.3%,GOR抗体陽性率は22.3%であった.C100-3抗体,CP-9抗体,CP-10抗体のいずれか少なくとも1つが陽性であった例は1,062名中482名(45.4%)であり,対象の半数近くがC型肝炎ウイルス(HCV)に感染したと推定された.またCP-9抗体かつCP-10抗体陽性例263例より無作為に抽出した7例の血清からは全例にHCV-RNAが検出された.さらに当村を3地区に分けて検討したところHCV関連抗体陽性率に明らかな地域差を認めた.非A非B型肝炎多発地区の住民検診でHCV関連抗体を測定することは,地域の疫学的特徴および潜在的な患者を発見するうえで有用であると考えられた.
  • 本多 政夫
    1991 年 32 巻 12 号 p. 1101-1109
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    国別また個人間における,C型肝炎ウイルス(以下HCV)の多様性が報告されている.そこで5人の肝癌合併C型肝硬変患者肝組織よりHCVの構造領域を検出し,現在まで報告されている他の日本型クローン及び米国型クローンと比較検討した.5'non-coding領域は良く保存されcore領域も比較的良く保存されていた.しかしenvelope (E1, NS1/E2)領域では日本型と米国型の違いが認められた.さらに詳しく多様性を検討するとNS1/E2領域に特に多様性に富む領域を2箇所(HV1, HV2)認めた.疎水性プロットの検討ではHV1, HV2それぞれに全てのクローンに類似した親水性を示す部位が存在し,同部位の蛋白の2次構造の解析では共通して,ターン構造を示した.したがって,HCVのHV1, HV2がエイズウイルスのenvelopeで報告されている可変領域のごとく宿主免疫応答と重要な関わりを持つ部位である可能性が示唆された.
  • 特に非遮断側肝葉における肝障害の発生機序について
    中浜 貴行
    1991 年 32 巻 12 号 p. 1110-1123
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    犬の全肝の40%領域の肝動脈・門脈・胆管各分枝(A・P・B)を同時に遮断すると全例が3日未満の早期に死亡したが,ペニシリン(Pc)投与下では61.5%が1週以上生存した.Pc非投与群ではPc投与群に比し肝機能は有意に不良で,組織学的には遮断側肝葉,非遮断側肝葉ともに高度の肝障害を示した.Pc非投与群ではまた,endotoxin (Et)値が末梢血や遮断側及び非遮断側の胆汁中,或は肝静脈血中で術後24時間目に有意に高値を示し,過酸化脂質量も末梢血中や遮断側及び非遮断側肝組織中で著明な高値を示し,非遮断側の肝組織血流量も有意に減少した.一方,Pcを投与したり,術後6時間目に遮断側肝葉を切除するとこれらの変化は改善した.すなわちPc非投与下で全肝の40%領域のA・P・B同時遮断を行うと致死的であり,その機序として遮断側肝葉に発生したEtにより高Et血症が生じ,非遮断側の肝血流量は低下し著しい脂質過酸化反応を惹起して,非遮断側肝葉の高度の障害を招来し,不可逆的状態に陥るものと考えられた.
  • 肝アデニンヌクレオチド代謝面からの検討
    松尾 行雄, 中西 敏夫, 梶山 梧朗, 平田 学, 加藤 千里, 中塩 了, 丸橋 暉
    1991 年 32 巻 12 号 p. 1124-1131
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    dibutyryl cyclic AMPおよびグルカゴンの障害肝におよほす効果を,D-galactosamine投与急性肝不全ラットの肝組織アデニンヌクレオチド量を指標として比較検討した.正常肝ではdibutyryl cyclic AMPおよびグルカゴンは肝組織ATP量を一過性に減少させ,ADP, AMP量を増加させており,ATP利用代謝を促進する事が示唆された.一方,障害肝では障害の程度に応じて肝組織中の各アデニンヌクレオチド量はいずれも減少した.正常肝とは異なり,dibutryl cyclic AMPはこれらを急速かつ著明に増加させ,グルカゴンは緩徐に増加させ,両者の代謝応答に差異が認められた.両者とも障害肝細胞の修復,再生機転につながるエネルギー代謝を賦活させることが認められたが,以上の代謝応答の差および肝組織ATP量をdibutyryl cyclic AMPの方が強く増加させたという結果から,重篤な肝障害においてはdibutyryl cyclic AMPはグルカゴンよりも有効に作用することが示唆された.
  • 峠 誠司, 田妻 進, 水野 重樹, 佐々木 晴敏, 佐川 広, 初鹿 寿美恵, 山下 郡司, 相原 直樹, 佐々木 雅敏, 梶山 梧朗, ...
    1991 年 32 巻 12 号 p. 1132-1137
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2010/01/19
    ジャーナル フリー
    コレステロール過飽和人工胆汁を用いて,アポ蛋白A1のコレステロール結晶析出抑制の作用機序を検討した.アポ蛋白A1を添加した人工胆汁(A1+群)と無添加人工胆汁(A1-群)の脂質粒子をカラムクロマトグラフィー法にて分画採取し,両群の脂質粒子の形態変化を透過型電子顕微鏡にて経時的に比較検討した.両群において胆汁中脂質粒子は,ミセル分画と非ミセル分画に分離でき,A1+群においてアポ蛋白A1は,ミセル分画のピークよりわずかに高分子量領域にピークを有して溶出された.A1+, A1-両群において,同分画を透過型電子顕微鏡で観察すると,直径200~400Åのdisc様粒子が認められ,A1-群では,粒子の迅速な凝集と融合が観察されたのに対し,A1+群では,その変化は極めて緩徐であった.以上,コレステロール過飽和人工胆汁において,アポ蛋白A1のdisc様粒子安定化による,コレステロール結晶析出の抑制が示唆された.
  • 第9報
    日本肝癌研究会
    1991 年 32 巻 12 号 p. 1138-1147
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    全国601施設の協力により,1986年1月1日より1987年12月31日までの2年間の本邦における原発性肝癌9,564例が日本肝癌研究会に登録された.このうち3,263例に組織学的確診が得られたが,その内訳は,肝細胞癌2,982例(91.4%),胆管細胞癌173例(5.3%),混合型25例(0.8%),肝芽腫19例(0.6%),肉腫8例(0.2%),その他56例(1.7%)であった.本報告においては,これら症例の診断,治療,臨床病理学的事項等に関するデータを解析した.さらに第5回調査(1978~1979)以後の肝細胞癌と胆管細胞癌の切除症例の累積生存率を算出した.とくに前者では治癒切除症例,後者では全切除症例における背景因子別生存率を検討した.
  • 森本 日出雄, 若林 時夫, 鈴木 邦彦, 杉岡 五郎
    1991 年 32 巻 12 号 p. 1148-1155
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    発症時,急性肝炎様の組織像を呈した自己免疫性肝炎の2症例を経験した.症例1.60歳,女性.黄疸を主訴に来院した.γ-glob. 2.1g/dl, GOT 526IU/L, T.Bil 4.2mg/dl,抗核抗体2,560倍であったが,肝生検では急性肝炎様の組織像を呈した.glycyrrhizin製剤にて改善したが再燃したため,副腎皮質ホルモンを投与し著効を認めた.維持療法中に再び再燃したが副腎皮質ホルモンにて寛解した.1年後の肝生検では慢性活動性肝炎の像であった.症例2.48歳,女性.黄疸を主訴に来院した.γ-glob. 1.3g/dl, GOT 1,350IU/L, T. Bil 15.0mg/dlであった.肝生検では急性肝炎の像であった.黄疸が遷延したため副腎皮質ホルモンを投与し,著効を得た.その後,再燃を繰り返すうちに高γ-glob.血症・自己抗体の出現を認め,肝生検では慢性活動性肝炎の像を示した.この2例は異なった臨床経過を示しており,自己免疫性肝炎の発症機序を考えるうえで興味ある症例と考え報告した.
  • 道免 和文, 山野 裕二郎, 大森 房之, 多治見 司, 長野 政則, 溝口 幹朗, 岩田 康, 石橋 大海
    1991 年 32 巻 12 号 p. 1156-1162
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    急性肝不全で死亡した成人T細胞白血病(ATL)の発症早期および死亡時に肝組織像を観察し得た1例を報告する.症例は53歳男性.慢性ATLの診断で経過観察されていたが肝機能異常は認められていない.入院約10日前より全身倦怠感,皮疹,皮膚の黄染が出現.入院時肝は腫大し,血清総ビリルビン(TB)値10.6mg/dl, GOT 4,167IU/lと高度の肝機能障害を認めた.末梢白血球数は18,900/mm3で,うち75%がATL細胞であった.肝生検で,門脈域を中心にATL細胞を含む単核球の著明な浸潤が認められた.G-I療法,インターフェロン,mPSL大量療法,血漿交換等の治療に抵抗してTB値は50.3mg/dlと著増,PT活性値は32%まで低下し入院20日目に死亡した.剖検肝は黄色調で910gと萎縮し,組織上は広範な肝細胞壊死と出血が認められ,臓器Schwartzman反応の関与が考えられた.報告されている急性肝不全を呈したATL症例6例をまとめ,肝障害の機序について考察した.
  • 坂田 研二, 平井 賢治, 小野 尚文, 野口 秀哉, 青木 義憲, 藤本 隆史, 酒井 輝文, 真島 康雄, 谷川 久一, 江口 哲, 中 ...
    1991 年 32 巻 12 号 p. 1163-1168
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.1983年4月左上腕の疼痛を訴え入院.左上腕骨に骨折及び腫瘤を認め,腫瘤部針生検の組織所見,AFP高値(14,000ng/ml)から肝細胞癌の骨転移と診断し,左上肢切断術を施行.腹部エコー,CTではSOLは指摘できなかったが,血管造影にて右葉にtumor stainが疑われ,one shot療法(MMC 20mg)を施行.AFP値は低下し,1984年5月及び12月にもone shot療法(MMC 20mg)を2回施行した.その後は,AFP値も低下が持続し,新たな骨転移巣も出現しなかった.しかし,1987年2月に肝に新病巣が出現し,その後TAE療法を2回施行した.1990年1月14日死亡.死因は腫瘍死であった.骨転移発見後集学的治療により6年9ヵ月の長期生存期間が得られた肝細胞癌例を経験したので報告した.
  • 黒川 聡, 三木 幸一郎, 土屋 喜裕, 樋口 宣明, 崎野 郁夫, 大久保 英雄
    1991 年 32 巻 12 号 p. 1169-1173
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    画像診断と腹腔鏡下肝生検によって,先天性肝線維症と診断された1症例を報告する.症例は36歳女性,前胸部痛を訴えて来院,胸部X線像で心陰影に重なり,下行大動脈に隣接した腫瘤状陰影を認めた.画像診断によってこの後縦隔腫瘤は奇静脈に注ぐ巨大な胃冠静脈瘤と診断されたが,これとは別に興味ある肝病変が発見された.即ち,超音波像で巨大な脾腫と門脈系の拡張がみられ,肝実質はモザイク状を呈し,門脈圧亢進とびまん性肝癌も疑われた.血管造影では巨脾,拡張した門脈系と脾動脈,枯れ枝状の肝動脈などから門脈圧亢進症が推定された.腹腔鏡では,肝表面はアミロイド肝の割面に似た霜降り肉状を呈し,組織像は正常配列した肝小葉,門脈域の成熟した線維化,増殖した小葉間胆管,炎症細胞浸潤なし等の所見であった.以上の成績から本症例は先天性肝線維症と診断された.
  • 野崎 周英, 林 仲信, 牧角 啓一, 西原 司, 衛藤 辰男, 星子 和哉, 濱田 福三郎, 水野 喬介, 江角 真理子, 志方 俊夫
    1991 年 32 巻 12 号 p. 1174-1175
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 安田 清美, 飯野 四郎, 小池 和彦, 四柳 宏, 遠藤 康夫, 黒川 清, 日野 邦彦
    1991 年 32 巻 12 号 p. 1176-1177
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 出田 雅義, 橋本 悦子, 小林 潔正, 久満 董樹, 小幡 裕, 寺岡 慧, 太田和 夫, 笠島 武
    1991 年 32 巻 12 号 p. 1178
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 1991 年 32 巻 12 号 p. 1179-1213
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
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