肝臓
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59 巻 , 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 工藤 正俊
    2018 年 59 巻 11 号 p. 587-603
    発行日: 2018/11/20
    公開日: 2018/11/28
    ジャーナル フリー

    2007年に分子標的薬ソラフェニブがSHARP試験とAsia Pacific試験において肝細胞癌に対する予後延長効果が示されて以来,肝細胞癌の薬物療法は大きく変化した.遠隔転移,脈管浸潤に対する治療選択肢が増え,進行性肝癌でもある程度長期生存が得られるようになったが,ソラフェニブは腫瘍縮小効果が乏しいことや手足症候群などの比較的強い副作用から,ソラフェニブに代わる新規分子標的薬やソラフェニブ治療で病勢が進行した後の2次治療薬の開発が望まれてきた.ただし2007~2016年までの10年間,多数の薬剤の開発が試みられたものの,その全ての臨床試験がことごとく失敗に終わった.しかしながら,2017年と2018年の2年間で立て続けに4剤(レゴラフェニブ,レンバチニブ,カボザンチニブ,ラムシルマブ)が臨床試験に成功し,臨床現場で使用可能となりつつある.また免疫チェックポイント阻害剤の治験や免疫チェックポイント阻害剤と分子標的薬との併用の治験も進行中であり肝細胞癌の薬物治療は今後も大きく変化し肝細胞癌治療のパラダイムシフトが起こりつつある.

特別寄稿
  • 井上 和明
    2018 年 59 巻 11 号 p. 604-624
    発行日: 2018/11/20
    公開日: 2018/11/28
    ジャーナル フリー

    人工肝補助療法は,透析療法の発展のなかで産声を上げた.歴史的には低分子物質の肝性昏睡起因物質であるアンモニアを除去する目的で人工腎臓が用いられたことが始まりである.低分子量物質の除去には拡散が一番理にかなった方法である.それゆえ人工腎臓を用いればこのような低分子の除去は可能で昏睡から容易に覚醒するのではないかと考えられたが,実際に急性肝不全に血液浄化法の治療効果が認められたのは,high performance membraneが実用化された1970年以降である.その後血液浄化療法の進歩に伴い昏睡覚醒効果の高い方法が考案され,脳死肝移植のドナー不足の深刻な我が国では独自の発展を遂げつつある.

    全ての血液浄化療法の源流であるmilieu intérieurをいかに保つかという概念の形成から発展の歴史を振り返ってみたい.

原著
  • 難波 志穂子, 池田 房雄, 秋山 文男, 石原 光将, 下村 泰之, 山崎 典子, 犬山 奈穂美, 小山 道弘, 亀川 勝典, 大久保 進 ...
    2018 年 59 巻 11 号 p. 625-632
    発行日: 2018/11/20
    公開日: 2018/11/28
    ジャーナル フリー

    岡山県では2011年より肝疾患に関わる部署の初任者を対象に肝炎医療研修会を実施し,受講者を地域肝炎対策サポーターと認定してきたが,厚生労働省の示す肝炎医療コーディネーターの役割を果たしているか不明であった.今回,認定者全員に調査票を郵送して,認定から現在までの肝炎に関する活動状況を調査した.地域肝炎対策サポーター298人中146人から回答を得た.回答者の56%が肝疾患関連部署に引き続き勤務し,3割が厚生労働省の示す肝炎医療コーディネーターの役割に合致することを確認した.回答者の24%は他部署へ異動していたが,その56%が日常業務と別に肝炎医療コーディネーター活動を行っており,部署の異動は非専門診療科に肝炎医療コーディネーター活動のできる人材を拡げる良い機会と考えられる.肝炎医療コーディネーターは医療圏の間で偏在を認めなかった.

  • 坂井田 功, 岩本 拓也, 柴崎 佳幸, 岡田 正
    2018 年 59 巻 11 号 p. 633-640
    発行日: 2018/11/20
    公開日: 2018/11/28
    ジャーナル フリー

    目的:Tolvaptan投与終了後の改善効果の消失に影響を与える要因について分析した.

    方法:Tolvaptan投与7日目に1.5 kg以上の体重減少を認めた症例の中でTolvaptan投与7日目の体重と比較して観察期の体重増加>0 kgを示した症例をRebound group,体重増加がなかった症例をnon-Rebound groupと定義し,Tolvaptan開始時,およびTolvaptan投与終了時(7日目)の各種臨床パラメータを比較検討した.

    結果:38例中,Rebound group 33例(86.8%),non-Rebound group 5例(13.2%)であった.Tolvaptan開始時,および投与終了時の各種パラメータを多変量解析したところ,いずれも腹水量が独立した因子として抽出された.

    結語:Tolvaptan投与中止によってTolvaptanが有効であった症例ほど高率に体液貯留再燃を認めるため,その中止に関しては慎重に判断すべきである.

  • 道堯 浩二郎, 平岡 淳, 鶴田 美帆, 相引 利彦, 奥平 知成, 山子 泰加, 岩﨑 竜一朗, 壷内 栄治, 渡辺 崇夫, 吉田 理, ...
    2018 年 59 巻 11 号 p. 641-646
    発行日: 2018/11/20
    公開日: 2018/11/28
    ジャーナル フリー

    HBs抗原の測定法が改良され検出感度が高くなっているが,HBs抗原低値陽性例では偽陽性が危惧される.偽陽性の疑われる例を判定困難例とし,HBs抗原濃度別の判定困難例の頻度を明らかにすることを目的とした.41,186検体を対象にHBs抗原を化学発光免疫測定法で測定し,後方視的に検討した.判定困難例の基準をHBc抗体,HBe抗原・抗体,HBV-DNAすべて陰性,後日採血された検体でHBs抗原が陰性,の全条件を満たす例とし,HBs抗原濃度別の判定困難例の頻度を検討した.HBs抗原は1,147検体(2.8%)で陽性であった.判定困難例は6検体で,HBs抗原濃度(IU/ml)は,全例0.05以上0.20未満であり,0.20以上例には基準を満たす例はなかった.以上より,HBs抗原低値陽性例は偽陽性の可能性に留意する必要があることが示唆された.

症例報告
  • 澁木 太郎, 川副 広明, 水田 敏彦
    2018 年 59 巻 11 号 p. 647-652
    発行日: 2018/11/20
    公開日: 2018/11/28
    ジャーナル フリー

    症例は32歳女性.30歳時(50 kg)から姑へのストレスにより体重減少が出現.32歳時には26 kgまで低下し体動困難となったため当院内科に紹介.常食1000 kcal/日で食事を開始しほぼ全量摂取できていたが,ASTは178 IU/l(第1病日),311 IU/l(第7病日)と上昇.Refeeding症候群による肝機能異常と考え摂取カロリーを500 kcal/日に制限したところ,その4日後に急激な肝機能増悪を認めた.少量の糖質を含む輸液を行ったところ肝逸脱酵素は急速に改善したが,血清K,P値の急速な低下があり適宜補充した.その後,肝逸脱酵素,PT%,電解質は全て正常化し他院精神科へ転院となった.近年,神経性食思不振症に伴う肝機能異常の原因としてautophagyが注目されている.本症例の経過をふまえて神経性食思不振症における肝逸脱酵素上昇の機序に関して考察した.

短報
  • 大平 弘正, 田中 篤
    2018 年 59 巻 11 号 p. 653-654
    発行日: 2018/11/20
    公開日: 2018/11/28
    ジャーナル フリー

    Azathioprine, a drug used in the treatment of autoimmune hepatitis (AIH), is now covered by health insurance in Japan. It has long been used in combination with steroids as a standard therapy for AIH in other countries, and its use is expected to increase in Japan. Side effects of azathioprine include cholestatic hepatitis, pancreatitis, and opportunistic infections. Periodic observation is important to ensure timely treatment of adverse effects. Recently, the NUDT15 gene polymorphism, associated with severe leukopenia, has been reported as an adverse effect of azathioprine. Although it is covered by insurance, azathioprine is still not used frequently to treat AIH in Japan, and it is necessary to clarify the indications for and problems associated with azathioprine treatment in Japan.

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