症例は日齢0の新生児で, 患者の母は37歳. 3日前に破水し, 腹痛が次第に増強したため, 緊急帝王切開を行い分娩した. 患児は在胎38週5日, 体重は2, 672gであった. Apgarscoreは1分3点, 5分は6点で, 羊水混濁が著明であった. 新生児仮死および胎便吸引症候群として, 気管内挿管し, 人工換気を開始したが, SaO
2, PaO
2とも著しく低下し, 肺サーファクタントの投与にも反応せず死亡した. 剖検時, 肝臓の右葉と左葉はほぼ同大であり, 両葉は, その血流支配にほぼ対応する形で, 高度の脂肪性変化を示す右葉部と, 欝血像を呈する左葉部とが境界不整であるが, 非常に明瞭に境界されており, 定型的な“Two-tone liver”の像であった. 胎生期では肝臓を栄養する血液は右, 左葉間で酸素分圧に差があり, より酸素分圧の低い血液が灌流する右葉は低酸素症や循環障害により肝細胞の脂肪性変化や壊死が生じやすく, 本例では, 妊娠末期における低酸素血症と血流障害により両葉間で組織変化に差が生じ, “Two-toneliver”の像が生じたと考えられる.
抄録全体を表示