肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
54 巻, 11 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 岡野 美紀, 奥瀬 千晃, 四柳 宏, 島 順子, 服部 伸洋, 重福 隆太, 野口 陽平, 初谷 守朗, 中原 一有, 池田 裕喜, 高橋 ...
    2013 年54 巻11 号 p. 731-740
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/12/16
    ジャーナル フリー
    ペグインターフェロン・リバビリン併用療法(併用療法)開始時に遊離トリヨードサイロニン,遊離サイロキシンおよび甲状腺刺激ホルモンが測定され,甲状腺機能異常(TD)を認めたC型慢性肝炎(CHC)12例を対象にTDを伴うCHCに対する併用療法の詳細を検討した.潜在性甲状腺機能低下症が4例,顕性甲状腺機能低下症が4例,潜在性甲状腺機能亢進症が4例であった.抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO Ab)が陽性の顕性甲状腺機能低下症の2例で併用療法開始後にTDに対しホルモン補充療法が導入されたが,甲状腺機能の悪化はなく併用療法継続が可能であった.一方,TPO Abが陰性であった5例は併用療法開始後の甲状腺機能が正常値で推移した.今回の検討ではTDを理由とした併用療法中止例は認めず,TDを伴うCHCにおいても慎重かつ適切な対応のもと,併用療法が可能であった.
症例報告
  • 定免 渉, 黒田 裕行, 在原 洋平, 山田 充子, 平子 匡, 安部 智之, 櫻井 環, 藤井 重之, 前田 征洋, 藤田 美悧, 長嶋 ...
    2013 年54 巻11 号 p. 741-747
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/12/16
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性.2009年7月に急性リンパ性白血病を発症し,完全寛解後の2010年2月に血縁間末梢血幹細胞移植を施行した.2011年2月より肝機能障害と高フェリチン血症を認めた.デフェラシロクスとウルソデオキシコール酸およびベザフィブラートを投与するも,肝機能障害が遷延した.肝生検で移植片対宿主病(GVHD)とヘモジデリン沈着,酸化的DNA損傷の指標となる8-OHdG(8-hydroxydeoxyguanosine)染色で陽染した.このため同年4月よりシクロスポリンを投与したところ,肝機能障害と高フェリチン血症はともに改善した.肝機能障害改善後の肝生検ではGVHDを示唆する所見およびヘモジデリン沈着は消失した.本症例は肝GVHDの所見が改善するとともに肝ヘモジデリン沈着と高フェリチン血症も改善したことから,肝GVHDを契機に肝細胞への鉄沈着が惹起されたものと考えられた.
  • 林 倫留, 山子 泰加, 白石 明子, 平岡 淳, 池本 純, 大久保 啓二, 今井 祐輔, 達川 はるか, 中原 弘雅, 清水 祐宏, 谷 ...
    2013 年54 巻11 号 p. 748-754
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/12/16
    ジャーナル フリー
    症例は関節リウマチでメトトレキサートとステロイド投与中の85歳男性.倦怠感,黄疸を主訴に受診.受診1年前にHBs抗原陰性,肝機能検査値も正常であったが,今回受診時はHBs抗原陽性で,IgM型HBc抗体も陽性であった.高度の肝機能障害がみられ,非昏睡型急性肝不全として治療したが,入院14日目に肝不全で死亡した.剖検では線維化を認める肝臓(初期の肝硬変)に高度の肝実質障害を併発した所見であった.入院時B型肝炎ウイルス(HBV)-DNAは>9.0 LC/ml,genotypeはDで,プレコア領域(nt1896),コアプロモーター領域(nt1762,nt1764)には変異がみられた.本例はHBV再活性化によるde novo肝炎が推定されたがHBV初感染の可能性も否定できなかった.本邦におけるgenotype Dによる肝不全死亡例は過去報告がないため,報告する.
  • 山本 健太, 熊田 卓, 桐山 勢生, 谷川 誠, 久永 康宏, 豊田 秀徳, 金森 明, 多田 俊史, 北畠 秀介, 長谷川 綾平, 伊藤 ...
    2013 年54 巻11 号 p. 755-764
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/12/16
    ジャーナル フリー
    71歳女性.平成23年黒色便を主訴に受診し,食道静脈瘤破裂と診断し内視鏡的静脈瘤結紮術を施行した.その後肝腫瘤を認め精査目的で入院した.USで腫瘤は描出できず,CTAPで低吸収域,CTHAで早期濃染される境界明瞭な腫瘤として描出された.しかしCTHA造影後期相でコロナ濃染を認めず,EOB造影MRI検査肝細胞相でも腫瘤が典型的な肝細胞癌ほど低信号を示さなかったためSingle level dynamic CTHA(SL-CTHA)を施行した.SL-CTHAでは中心部の一部を除き腫瘤全体が濃染された.肝細胞癌が否定できず腹腔鏡下肝S6部分切除術・胆嚢摘出術を施行した.特発性門脈圧亢進症及び中心部の一部に線維化を含むreactive lymphoid hyperplasia(RLH)と診断した.RLHは稀な疾患で,SL-CTHAが鑑別の一助になると考えられ,若干の文献的考察をふまえて報告する.
  • 麻 興華, 長沼 篤, 佐藤 洋子, 鏑木 大輔, 新井 理記, 細沼 賢一, 湯浅 和久, 丸田 栄, 登丸 行雄, 高木 均
    2013 年54 巻11 号 p. 765-773
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/12/16
    ジャーナル フリー
    症例は33歳男性.20歳からビール1日平均1.5~2 L,10年以上飲酒を継続していた.28歳時に肝機能異常を指摘され,その後改善,増悪を繰り返していた.200X年7月より飲酒量が増え,8月から黄疸,腹部膨満,食欲不振,浮腫の症状が出現し当院入院となった.入院後,全身性炎症反応症候群を伴う重症型アルコール性肝炎と診断した.重症型アルコール性肝炎では炎症性サイトカインや好中球浸潤による酸化ストレスを介して,肝細胞障害が引き起こされる.この病態を制御するため,血漿交換,持続的血液濾過透析,白血球除去,シベレスタット,メチルプレドニゾロン等による治療を順次施行したところ,本症例は最終的に救命することができた.重症型アルコール性肝炎の治療においては,治療に対する生体の反応を注意深く見極めつつ,各種集学的治療を効果的なタイミングで展開していくことが重要と思われた.
  • 阿部 寛幸, 石川 達, 長島 藍子, 廣瀬 奏恵, 窪田 智之, 冨樫 忠之, 関 慶一, 本間 照, 吉田 俊明, 上村 朝輝, 佐藤 ...
    2013 年54 巻11 号 p. 774-779
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/12/16
    ジャーナル フリー
    症例は30歳代女性.2005年アルコール性肝硬変のため某院にてABO不適合生体部分肝移植施行.肝移植後も再飲酒していた.徐々に慢性肝障害が持続し肝硬変へと増悪,肝硬変及び門脈大循環短絡路による肝性脳症で入退院を繰り返していた.門脈大循環短絡路閉塞目的に当院紹介受診.経皮経肝的門脈側副血行路塞栓術(percutaneous transhepatic obliteration:以下PTO)施行し,門脈大循環短絡路を閉塞した.血中アンモニアは閉塞直後一時軽快するも再度変動する経過を来たしたが,PTO前のような高度意識障害を来たす肝性脳症は改善を認めた.本症例は肝移植後の肝硬変再進展例に対して,PTOを施行し難治性のシャント脳症を改善しえた症例で,通常の肝硬変におけるInterventional Radiology(IVR)治療が移植肝における肝硬変でも有用性を示せた1例であり報告する.
  • 伏見 崇, 古賀 浩徳, 上妻 友隆, 有永 照子, 鳥村 拓司, 堀 大蔵, 嘉村 敏治, 佐田 通夫
    2013 年54 巻11 号 p. 780-786
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/12/16
    ジャーナル フリー
    症例は31歳女性.第2子の妊娠14週頃に皮膚搔痒感と不眠を自覚し始めた.妊娠20週に同僚から皮膚および眼球結膜の黄染を指摘され,近医を受診したところ,肝障害(黄疸)を指摘された.肝庇護剤の投与が開始されたが,黄疸はさらに増強した.この時点では抗核抗体は陰性であった.当院産婦人科での入院精査では,母体肝機能の低下に加え,胎児腹水の貯留も認められた.しかし胎児胸水は認められず,典型的な胎児水腫とは異なる病像であった.本人および家族の希望により,妊娠21週6日目に人工妊娠中絶が施行された.人工妊娠中絶後,肝機能は速やかに改善傾向を示したものの,中絶後2週目に再び増悪してきたため,原因精査のため当科にて肝生検をおこなった.その結果,リンパ球を主体とした高度炎症細胞浸潤やロゼット様構造など自己免疫性肝炎(AIH)に特徴的な組織学的所見が得られた.この時点で陽性化していた抗核抗体およびHLA-DR4陽性などの血清学的所見を加味し,「definite AIH(国際診断基準)」と診断した.診断後直ちにステロイドの内服を開始した結果,肝機能は改善した.
  • 道免 和文, 田中 博文, 春野 政虎, 音羽 弘, 下田 慎治
    2013 年54 巻11 号 p. 787-795
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/12/16
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の男性.1型,高ウイルス量のC型慢性肝炎に対し,3剤併用療法を開始した.投与1カ月後にはHCVRNAは検出されず,副作用もなく経過していたが,投与開始約4カ月目に食思不振,発熱,右季肋部痛が出現した.白血球数9,100/μl,CRP 15.17 mg/dlと炎症所見を呈し,超音波検査,断層撮影検査にて多発性の肝膿瘍を認めた.細菌性肝膿瘍を疑い,抗生剤の投与を開始したが,解熱は得られず,肝膿瘍は増大し,一部は腹腔へ膨出した.入院時の血清アメーバ抗体価が高値を示し,肝膿瘍の穿刺内容液は粘稠で白色~薄黄緑色のクリーム状を呈した.穿刺内容液中に赤痢アメーバ虫体を確認し,アメーバ性肝膿瘍と診断した.メトロニダゾールの投与ならびに経皮的ドレナージにて速やかな解熱,膿瘍の縮小が得られた.患者は3剤併用治療の開始5カ月前に原因不明の下痢を来し,大腸内視鏡検査にて大腸に多発するアフタ性病変が認められていたことが後に判明した.遡及的診断ではアメーバ腸炎と考えられたが,感染経路は不明であった.C型慢性肝炎に対する3剤併用療法時の併発感染症疾患のひとつとしてアメーバ性肝膿瘍も念頭に置く必要がある.アメーバ性肝膿瘍の迅速な診断,問診の重要性があらためて認識された.
速報
  • 鈴木 一幸, 小野寺 美緒, 柿坂 啓介, 遠藤 啓, 佐原 圭, 及川 寛太, 王 挺, 遠藤 龍人, 滝川 康裕
    2013 年54 巻11 号 p. 796-797
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2013/12/16
    ジャーナル フリー
    Aim: Carnitine (CA) is essential for β-oxidation of long-chain fatty acid in mitochondrial matrix in the muscle, liver and kidney. Although liver cirrhosis (LC) may present secondary CA deficiency caused by disturbed biosynthesis in the liver, inadequate food intake and muscle atrophy. Although renal dysfunction has been known to be associated with the CA dynamics, the CA status in the blood in LC patients has not been fully studied, at least in part, because expensive cost of CA measurement. Therefore, we tried to find an alternative parameter reflecting the serum CA status in patients with LC. Subjects and methods: Sixty-two patients with LC (male 41, female 21, age between 35 and 80, etiologies; HBV 5, HCV 26, HCV+Alcohol 2, Alcohol 18, nonBnonC 5, NASH 3, PBC 1, AIH 1, cryptogenic 1) were evaluated the CA status in the blood. Serum CA [total CA (T-CA), free-CA (F-CA) and acyl-CA (Ac-CA)] levels were determined using the enzymatic cycling method (KAINOS Laboratories Inc., Tokyo, Japan). Liver function tests including prothrombin time, ammonia, urea nitrogen, creatinine and free fatty acid (FAA) were measured simultaneously. Results: Serum T-CA, F-CA and Ac-CA levels showed no correlations with the parameters of liver function test except serum creatinine. In contrast, serum FFA levels showed positive correlations with Ac-CA level and with the Ac-CA/T-CA ratio. Conclusion: The serum FAA levels may be potentially useful as a parameter reflecting abnormal status of serum CA in patients with LC.
feedback
Top