肝疾患患者において低酸素血症を来す肝肺症候群の病態について本邦での頻度などの検討は十分になされていない.肝移植前検査で座位と臥位の血液ガス分析を行い,61症例のうち2例(3.2%)に肝肺症候群を認めたので報告する.座位あるいは臥位でPaO
2<80かつAaDO
2≧15 mmHgを呈した疑診症例が27例(44%),そのうちPaO
2<70かつ座位で5%あるいは4 mmHg以上のPaO
2低下(orthodeoxia)を伴った症例4例(6.5%),肺血流シンチで肺内シャントの確定がなされた肝肺症候群は2例であった.症例はともにアルコール多飲歴・喫煙歴のあるC型肝硬変であった.PaO
2<80かつAaDO
2≧15 mmHgを呈する潜在的本症症例の頻度は44%と高く,プロトロンビン時間延長,ビリルビン高値でMELDスコアも高値の重症例であった.肝硬変外来診療における経皮的酸素飽和度モニターなどを利用した本症の把握は重要と思われる.
抄録全体を表示