血漿揮発性脂肪酸(Volatile Fatty Acids: VFA, C
2-C
8)の測定をエーテル抽出法にて行い,肝不全及び肝切除前後におけるVFAの変動,肝への影響を臨床的および実験的に検討した.末梢血総VFA値(μmol/l)は,健康若年者110.9±20.1 (n=10),肝硬変症例124.5±32.9(n=6),肝不全症例250.6±131.7 (n=6)と肝不全時に高値であり,特にプロピナン酸(C
3),カプロン酸(C
6),カプリル酸(C8)が有意に高値を示した.硬変合併肝切除例では,術中門脈血総VFA値は術前末梢血総VFA値の約2倍と有意(p<0.01)に高値を示し,末梢血VFA値は,術後早期にC
8のみ有意(p<0.05)の増加が認められたが,それ以外は術後明らかな変動を示さない.またSDラット肝硬変モデルにおいて,血中C
3, C
6の上昇が認められた.以上より,肝不全時には血漿VFAのうちC3, C6, C8が増加し,肝不全との関連が推察された.
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