症例は36歳, 女性. 1995年3月14日より5日間発熱, 軽度の肝障害が認められた. 3月26日より再び発熱し, 頸部リンパ節腫脹, 咽頭扁桃炎も出現. 3月29日入院時の検査では, GOT 1, 152IU, GPT 1, 673IUで, 単核球増多が著明であった. ウイルスマーカーの検索で, A, B, C型肝炎ウイルスの感染は否定され, EBVの初感染が確実, CMVの初感染の疑いも濃厚であった. 4月1日採取の肝生検組織は急性肝炎像を呈し, 封入体は見出せなかったが, 酵素抗体法により肝細胞中にCMV抗原が検出された. 以上より, CMV, 次いでEBVの初感染による急性肝炎をほぼ同時期に発した症例と診断され, 高度のトランスアミナーゼ値の上昇はウイルスの相乗作用の結果と考えられた. 患者は対症療法のみで軽快した. 血清抗体価の検索に加え, IgM型CMV抗体が真に陽性か否か確認するため肝の免疫組織化学的検索を実施し, EBVとCMVの重複初感染と断定し得た報告はこれが最初である.
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