今回我々は mosapride citrate による薬物性肝障害の1例を経験した. 症例は68歳男性, 胃部分切除後の消化管運動促進目的に mosapride citrate を処方されていた. 服用開始後約4カ月目に黄疸を主訴に来院し, 血液検査上PT, APTTの延長を伴う肝酵素の著明な上昇を指摘され, 緊急入院した. 入院後服用を中止したところこれらの数値は徐々に軽快し, 約1カ月後の検査ではいずれもほぼ基準値内にあった. mosapride citrate を被疑薬としたリンパ球幼若化試験 (DLST) にて陽性率255%を認め, 臨床経過との一致から薬物性の肝機能障害と診断した.
薬物性肝障害は従来アレルギー性のものが臨床上多いとされてきたが, 最近ではその病態は複雑化しており, 適切な診断方法が求められている. 今回我々が用いた滝川らにより提起された新しい薬物性肝障害の診断基準
1)によると本症例はスコアは11 (9以上: かなり信憑性あり) であり, その病型は混合型であった.
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