肝臓
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53 巻, 11 号
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原著
  • 河合 勉
    2012 年 53 巻 11 号 p. 699-706
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/28
    ジャーナル フリー
    高齢,血球数低値の理由からリバビリン併用療法導入が困難,または非著効のC型肝炎症例に対し,ペグインターフェロンα2a単独投与を開始し,2年以上の経過観察を行った84例を対象の有効性,安全性をretrospectiveに検討した.
    発癌率は肝癌の既往のない症例で1年0%,2年1.6%,3年1.6%と低率であった.AFP,ALTの中央値は投与前に比し投与96週後において有意な低下が認められた.ウイルス学的効果は84例中31例(37%)で投与中のHCV-RNA陰性化を認め,16例(19%)は2 log以上のHCV-RNA減少を認めた.血小板数の中央値は投与開始前78,000/mm3から投与開始4週後に62,000/mm3と減少を認めるも,48週以降は上昇傾向を示した.
    本療法はリバビリン併用療法の導入が困難な症例に対し,HCV-RNA量の減少,ALT・AFP値の改善により発癌抑制が期待できる治療法と考えられた.
  • 片山 惠子, 松尾 順子, 秋田 智之, 田渕 文子, 酒井 明人, 田中 純子
    2012 年 53 巻 11 号 p. 707-720
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/28
    ジャーナル フリー
    我々が2008年度広島県と石川県の一般住民集団及び職域集団を対象として行った肝炎ウイルス検査の受診状況等に関する聞き取り調査では,肝炎ウイルス検査を「受けたことがある」は,一般住民集団では20~27%であったが,60歳以上が40%以上を占め,男女別では「受けたことがある」は,女性が男性より有意に高かった.一方,職域集団では「受けたことがある」は7.2%と低値であった.「検査を受けたことがない」理由は,広島県の一般住民集団では「機会がなかった」36%,「知らなかった」33%であったが,石川県の全数調査では男女ともに「知らなかった」が「機会がなかった」より有意に多く,地域に応じた対応が必要であることが明らかとなった.職域集団では,「肝炎ウイルス検査」の周知率及び受診率が共に低いことが明らかとなり,今後肝炎ウイルス検査の認知を広め,受診率向上への対策を推進していくことの必要性が示された.
  • 早川 晶子, 阿部 研自, 谷川 雅俊, 高橋 周美, 内田 安彦, 奥谷 幸裕
    2012 年 53 巻 11 号 p. 721-733
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/28
    ジャーナル フリー
    Perflubutane(以下,sonazoid®)による造影超音波ガイド下にて肝腫瘍にラジオ波焼灼療法(以下,RFA)を施行した症例(以下,SZ群)328例とsonazoid®を使用せずRFAを施行した症例(以下,C群)340例の2群の特定使用成績調査を実施し,sonazoid®による造影超音波ガイド下におけるRFA時の安全性,有効性を検討した.有害事象はSZ群67.1%,C群69.3%であり,その種類および頻度に差は認められなかった.副作用はSZ群に1例(悪心,嘔吐)認められた(0.3%).SZ群のRFAガイドとしての総合評価(有効率)は90.9%,造影前後の病変視認性向上率は75.0%であり,Bモードの病変視認性が明瞭でない症例のRFA成功率は,SZ群でC群より有意に高かった(P<0.001).sonazoid®は,肝腫瘍のRFAガイドとして安全かつ有効に使用可能であり,造影による病変視認性向上はRFA成功率にも寄与することが示唆された.
  • 野村 能元, 加賀谷 尚史, 上田 晃之, 砂子阪 肇, 鷹取 元, 荒井 邦明, 柿木 嘉平太, 川口 和紀, 北村 和哉, 山下 太郎, ...
    2012 年 53 巻 11 号 p. 734-740
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/28
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC)による胆道閉塞は,進行期の症例に多く生じ,腫瘍が易出血性であることからその他の悪性胆道閉塞と比較し治療に難渋する場合がある.今回我々は,当科にて胆道閉塞を伴うHCCに対して内視鏡的胆道ドレナージを施行した12例を対象としretrospectiveにドレナージの意義を検討した.内視鏡的ドレナージ成功例は8/12例(66.7%)であり,問題となるような合併症は認めなかった.初回ドレナージ施行からの生存期間中央値は1.6カ月(1.1-14.2)であった.ドレナージ後10/12例(83.3%)で化学療法を行い,効果を認めた例では有意に生存期間の延長を認めた(P<0.01).以上より,胆道閉塞を伴うHCCは生命予後不良であるが,後治療の効果を認めた症例では生存期間の延長が期待できると考えられ,ドレナージを行う意義があると考えられた.
症例報告
  • 吉岡 鉄平, 山田 幸則, 末吉 弘尚, 吉井 俊輔, 川井 翔一郎, 大川 雅照, 平尾 元宏, 佐藤 雅子, 小森 真人, 土居 敏明, ...
    2012 年 53 巻 11 号 p. 741-747
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/28
    ジャーナル フリー
    症例は74歳男性.造影CT,PET-CTにて診断された気管分岐部下部のリンパ節転移を伴うstage IVAの肝細胞癌(HCC)に対して,手術不能例としてソラフェニブの投与目的に入院.肝機能はChild-Pugh score 5点,肝障害度Aと良好であったため,ソラフェニブを800 mg/日で開始した.第14病日に発熱と体幹の紅斑が出現したためソラフェニブを休薬としたが,第16病日に紅斑の四肢への拡大と口唇のびらんが出現しStevens-Johnson症候群と診断された.以後はソラフェニブ休薬とプレドニゾロンの経口投与により皮疹・発熱とも徐々に改善,第31病日にはプレドニゾロンを中止することができた.Stevens-Johnson症候群は,HCCに対するソラフェニブ投与例において稀ではあるが重篤な副作用であり,頻度の高い副作用である手足症候群に加えて注意が必要である.
  • 岡本 欣也, 三好 謙一, 木科 学, 藤瀬 幸, 加藤 順, 徳永 志保, 的野 智光, 法正 恵子, 大山 賢治, 岡野 淳一, 前田 ...
    2012 年 53 巻 11 号 p. 748-753
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/28
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代の女性.平成2X年5月中旬から全身倦怠感,嘔気が出現,7日後に皮膚黄染に気付いた.近医受診し,肝機能障害指摘され当科紹介入院.総ビリルビン7.8 mg/dL,AST 1441 IU/L,ALT 1753 IU/L,プロトロンビン時間33.2%で急性肝炎重症型と診断した.なお,血小板数も4.1×104/μLと著明に減少していた.原因検索の結果,DDW-J 2004薬物性肝障害スコアリングで10点で,薬物性肝障害が疑われた.服用していた薬剤をすべて中止した.その後徐々に肝機能改善し,50日後に退院した.服用していた医療用薬剤および健康食品について薬剤リンパ球刺激試験を行ったところ,「にんにく卵黄」のみで陽性となった.日常的に摂取する食品由来の健康食品であっても,重篤な薬物性肝障害を発症する可能性が示唆された.
  • 小畑 達郎, 巽 亮二, 竹本 隆博, 田中 俊樹, 平田 邦明, 関岡 敏夫, 竹田 彬一, 石金 正裕, 横田 和久, 名取 洋一郎, ...
    2012 年 53 巻 11 号 p. 754-762
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/28
    ジャーナル フリー
    症例1は30歳男性.2012年冬,発熱,嘔吐,下痢を主訴として当院初診.AST/ALT:1141/1980(IU/L),T-Bil. :7.55 mg/dL,IgM-HAV抗体陽性でA型急性肝炎と診断した.インドネシアを含む東南アジア諸国への頻回の海外出張歴があり,輸入肝炎が疑われた.症例2は38歳男性.2012年春(インドネシア滞在中)に40℃に至る発熱・悪寒を認め,現地の病院を受診するも原因不明とされて,帰国後当院初診.AST/ALT:835/1780(IU/L),T-Bil.2.2 mg/dL,IgM-HAV抗体陽性でA型急性肝炎と診断した.両症例の血清からHAV-RNAが検出され,分離されたHAVの分子系統解析により,インドネシア滞在中に現地で感染したと推定され,両症例のHAV株は99.3%の塩基配列の一致を示した.HAV侵淫度の高い国や地域への渡航前にはHAワクチンの接種が望まれる.
  • 渡部 笑麗, 小泉 洋平, 廣岡 昌史, 越智 裕紀, 多田 藤政, 石原 暢, 徳本 良雄, 阿部 雅則, 米永 吉邦, 藤山 泰二, 高 ...
    2012 年 53 巻 11 号 p. 763-768
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/28
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,女性.平成7年にC型慢性肝炎にてインターフェロン(IFN)療法を施行され,ウイルス学的著効(sustained virological response,SVR)が得られ,以降肝機能も正常化していた.HCV-RNA陰性化後15年経過した平成23年1月の腹部超音波検査で肝S2に2.1 cmの占拠性病変がみられた.CT,MRI,CTA,CTAPでも同様の病変がみられ,肝細胞癌の診断で肝外側区域切除を施行した.C型慢性肝炎に対するIFN療法SVR後10年以上を経過して発症した肝細胞癌は検索しえた限りでは自験例を含め10例のみで,本症例は最長年であった.C型慢性肝炎に対する治療著効後も放置せず,肝細胞癌の長期間にわたるスクリーニングが必要であると考えられる.
  • 門野 潤, 石崎 直樹, 高城 千彰, 南立 亮, 井本 浩, 實 操二, 田畑 峯雄
    2012 年 53 巻 11 号 p. 769-778
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/28
    ジャーナル フリー
    肝切除後早期に胸膜播種をきたした肉腫様変化を伴った肝細胞癌の1例を報告する.症例は61歳,男性.検診の腹部超音波検査で肝腫瘤を指摘され,CT,MRIで,肝右葉の多発肝内転移を伴う肝細胞癌と診断した.門脈塞栓術後,開胸開腹下に肝拡大右葉切除術を行い,Stage IVaの中分化型肝細胞癌と診断された.術後,AFPは正常化し,PIVKA-IIも低下した.術後40日目に右胸水貯留を併発し,胸水中に異型細胞を認めた.胸腔鏡検査で不整なび慢性胸膜肥厚を認めた.病理組織検査で,Vimentin,EMA,Keratinが陽性の紡錘形細胞を胸膜に認めた.肝内にも肝細胞癌との移行像を伴う同様の紡錘型細胞を認め,肉腫様変化を伴った肝細胞癌と診断した.初回手術後56日目に癌死した.肉腫様変化を伴う肝細胞癌は,腫瘍マーカーが低下しても,播種性転移を含む早期再発の可能性を念頭に置いた厳重な経過観察が必要である.
速報
  • 副島 友莉恵, 近藤 福雄, 井上 雅文, 高橋 芳久, 佐野 圭二, 滝川 一, 福里 利夫
    2012 年 53 巻 11 号 p. 779-780
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/28
    ジャーナル フリー
    Thirty-five nodules of hepatocellular adenomas (HCA) were immunohistochemically classified into four subgroups of HNF1α inactivated HCA (H-HCA) (11 cases, 31%), β-catenin activated HCA (b-HCA) (7 cases, 20%), inflammatory HCA (I-HCA) (10 cases, 29%), and unclassified HCA (u-HCA) (7 cases, 20%). Decreased expression of OATP1B3 protein was shown in most cases of H-HCA, I-HCA, and u-HCA but not in all cases of b-HCA and nuclear beta-catenin positive cases. These results indicated the close association between OATP1B3 immunostain and nuclear beta-catenin accumulation in HCA and suggested a characteristic image on Gd-EOB-MRI for nuclear beta-catenin positive HCA cases as well as a risk of development of hepatocellular carcinoma.
短報
  • 龍 知記, 高見 裕子, 立石 昌樹, 和田 幸之, 才津 秀樹
    2012 年 53 巻 11 号 p. 781-783
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/28
    ジャーナル フリー
    Hepatocellular carcinoma (HCC) has a high rate of recurrence even after the curative treatment. Recently, it is suggested COX-2 inhibitor may offer a chemoprepentive approach for HCC. We have treated 236 patients with meloxicam for recurrent HCC after curative treatment. We evaluated the effects of meloxicam according to mRECIST six months after taking meloxicam of 114 cases received their curative surgery for HCC in our institute since January 2004. Of these 114 cases, tumor control rate was 40.4%, and overall survival rates at 3-, and 5-years were 88.7% and 63.3% in the PD group, whereas 95.4% and 86.8% respectively, in the CR/PR/SD groups (P=0.0603). Taking COX-2 inhibitor for recurrent HCC may prolong the time to progression and give the better prognosis.
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