肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
53 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 林 紀夫, 清澤 研道, 坪内 博仁, 岡上 武, 熊田 博光
    原稿種別: 原著
    2012 年 53 巻 3 号 p. 135-146
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/03
    ジャーナル フリー
    B型慢性肝炎に対するペグインターフェロンアルファ-2a(PEG-IFNα-2a)の有効性,安全性を検討した.
    HBe抗原陽性例はPEG-IFNα-2a 90 μg,180 μg/週の各々24週投与,48週投与又は天然型IFNα6 MIU週3回24週投与(HLBI群)の5群に無作為割付けし,投与終了後24週時のALT正常化,HBeセロコンバージョン及びHBV-DNA量抑制の複合評価で有効性を評価した.
    PEG-IFNα-2a群では用量,投与期間に応じて高い有効率を示した.PEG-IFNα-2a 48週併合群とHLBI群の有効率の差は11.3%(95%CI:0.0-22.6)とHLBI群に対し非劣性が検証され,安全に使用できた.
    HBe抗原陰性例に対するHBV-DNA抑制率は,180 μg,90 μg/週48週投与でそれぞれ37.9%,37.5%であった.
    以上,B型慢性肝炎に対する有効性,安全性が確認された.
  • 竹田 治彦, 大崎 往夫, 犬塚 義, 中島 潤, 松田 史博, 坂本 梓, 幡丸 景一, 辺見 慎一郎, 石川 哲朗, 斎藤 澄夫, 西川 ...
    原稿種別: 原著
    2012 年 53 巻 3 号 p. 147-154
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/03
    ジャーナル フリー
    2010年にLencioniらによって提唱されたmodified RECIST(mRECIST)は,早期濃染部の径を測定することで肝癌治療効果判定に血流評価を加えた新しい基準である.その臨床的有用性は報告されてはいるものの,反面,mRECISTを用いる中で我々は様々な問題にも遭遇してきた.当院でのSorafenib投与例においてmRECISTによる効果判定を行い,その妥当性と限界,問題点につき検討した.結果,腫瘍濃染消失は必ずしも壊死あるいは奏効とは言い切れないという基本的問題点,腫瘍の形態変化を伴う分子標的治療の効果判定において一方向測定のみでは客観性に欠けるという問題点を初め,個々の腫瘍の反応性の違いや評価不能例の扱い等多彩な問題点を指摘し得た.多血腫瘍である肝癌の治療効果判定に血流評価を加えることを試みたmRECISTは多くの症例で有用であると思われるが,mRECISTが評価法として不適切な症例も実際に存在する.さらに多くの症例を集積し,他基準とも比較を行い,予後を最も反映した基準を考案する必要がある.
症例報告
  • 藤井 英樹, 武田 翔伍, 浅井 哲, 林 良樹, 今西 久幹, 榎本 大, 石井 正光, 日野 雅之, 根来 伸夫, 荒川 哲男, 河田 ...
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 53 巻 3 号 p. 155-163
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/03
    ジャーナル フリー
    症例は26歳,女性.発熱および肝機能障害にて入院.抗生剤治療不応の弛張熱と皮疹を特徴とし,肝生検などにより白血病や悪性リンパ腫などの疾患を除外して成人発症Still病と診断した.急性肝不全を呈し,ステロイドパルス療法によりいずれの臨床症状も軽快したが,ステロイドの減量によりすぐに再燃した.更に血球減少を呈するマクロファージ活性化症候群(macrophage activation syndrome,MAS)に移行した.シクロスポリンおよび静注用リポ化ステロイドの投与を開始したところMAS症状は改善し,第41病日に退院した.成人発症Still病に合併したMASにはシクロスポリンおよびリポ化ステロイドの治療が有用であった.
  • 山本 訓史, 徳原 太豪, 西川 正博, 西澤 聡, 西岡 孝芳, 野沢 彰紀, 高橋 亮, 渡邊 芳久, 和田 力門, 若狭 研一, 久保 ...
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 53 巻 3 号 p. 164-174
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/03
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代,男性.8年前に肝細胞癌に対し肝部分切除術が施行された.平成23年2月の精査で肝S4/8とS6に再発が認められたため手術予定となった.糖尿病のコントロールが悪くHbA1cが8%台と長期間高値であったため術前にdi-peptidyl peptidase-IV(以下DPP-4)阻害薬内服によりコントロールを行った.DPP-4阻害薬内服前の腫瘍最大径はダイナミックCTでS4/8が5.0 cm,S6が2.5 cmであったが,内服開始3週間後のダイナミックCTでは腫瘍最大径はS4/8が2.5 cm,S6が2.0 cmと縮小した.AFPとPIVKA-IIはDPP-4阻害薬内服後に著明に低下した.病理組織学検査で肝細胞癌内に著明なリンパ球浸潤を認め,免疫組織化学染色で浸潤リンパ球はCD8陽性T細胞であった.免疫応答が強く関与していると考えられる肝細胞癌自然退縮の1例を経験した.
  • 樫村 晋, 藤田 由里子, 今村 諭, 清水 智樹, 今井 仁, 角田 裕也, 伊藤 剛, 長久保 秀一, 諸星 雄一, 水上 健, 小松 ...
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 53 巻 3 号 p. 175-182
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/03
    ジャーナル フリー
    症例は74歳女性.平成15年頃に肝硬変(C型)と糖尿病を指摘された.平成18年に肝細胞癌を発症し,以後4回肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行した.その後の腹部CTで左葉外側区と肝S8に約2 cmの肝細胞癌再発が疑われた.平成19年10月30日,血管造影検査にて肝細胞癌と診断され,TACEを施行された.術後より頻回の嘔吐と心窩部痛,術後4日目より38度台の発熱を認め,対症療法を行った.術後6日目深夜に心肺停止状態で発見され,心肺蘇生術に反応せず死亡した.急変時は著明な貧血と黄疸を示しており,同日病理解剖を行った.
    マクロ所見では明らかな臓器出血は認めなかったが,大動脈は赤褐色を呈していた.ミクロ所見では全身の各臓器にグラム陽性桿菌の増殖を認めた.術後5日目の血液培養よりClostridium perfringens(C. perfringens)が検出され,同菌による敗血症と発作性溶血が今回の死因と考えられた.TACE後にC. perfringens敗血症となり,急激な溶血を伴った症例の報告は少なく,今回若干の文献的考察も加えて報告する.
  • 道免 和文, 田中 博文, 春野 政虎, 藤原 弘明, 小林 家吉, 清島 保, 下田 慎治, 坂井 英隆
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 53 巻 3 号 p. 183-190
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/03
    ジャーナル フリー
    症例は肝腫瘍が疑われ,近医より紹介された88歳女性.入院時に37℃台の発熱,白血球数14,960/μl ,CRP 10.57 mg/dl と炎症所見を認め,総ビリルビン0.42 mg/dl ,ALT 24 IU/l ,ALP 384 IU/l ,γGTP 109 IU/l ,アルブミン3.2 g/dl と胆道系酵素の上昇,低アルブミン血症を示した.HBs抗原,HCV抗体はいずれも陰性であった.腫瘍マーカーではAFP,CEAは正常範囲であったが,CA19-9は73.6 U/ml と軽度の上昇を認めた.造影CT検査では肝内に最大径6 cmの辺縁がリング状に濃染される低濃度腫瘤が多数認められた.胆嚢癌ならびに胆嚢癌の肝転移を疑い,保存的療法をおこなったが,肝不全により死亡した.剖検では主腫瘍の中心部は融解壊死を呈し,腫瘍部は角化を伴う原発性肝扁平上皮癌と診断された.背景肝は正常肝組織を示した.原発性肝扁平上皮癌は本邦では今までに7例の報告をみるに過ぎない極めて稀な疾患であり,考察を加え報告した.
feedback
Top