肝臓
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53 巻, 1 号
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原著
  • 荒田 慎寿, 森脇 義弘, 高山 和久, 森本 学, 沼田 和司, 田栗 正隆, 森田 智視, 今成 秀則, 田中 克明
    原稿種別: 原著
    2012 年 53 巻 1 号 p. 7-17
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル フリー
    我々は,急性肝不全に対してon-line hemodiafiltrationを用いた人工肝補助療法を初めて臨床応用し,その成果を報告してきた.現時点で集積された全28例の脳症改善率,生存率,移植治療ブリッジユーズ,合併症,血液生化学検査等について再評価した.手技関連の合併症はなく,4.2±0.5(mean±SD)回の治療後に25例(89.3%)が脳症から完全に回復し,覚醒までに必要な治療回数は開始時の意識状態と相関した(P<0.001).転帰は,生存10例,肝外疾患死亡6例で,4例は移植治療を受け,ドナーが確保されなかった5例は最終的に肝不全で死亡された(救命率40%).生存例と肝不全死亡例では,治療開始後のprothrombin time,direct bilirubin/total bilirubin ratio,血清アンモニア値の推移は大きく異なり,治療開始後の予後予測に有用と考えられた.On-line hemodiafiltrationを用いた人工肝補助療法は急性肝不全時の脳症改善の第一選択肢に成り得ると考えられた.
  • 加藤 慶三, 米澤 健, 立花 智津子, 立花 浩幸, 渡辺 聡, 万代 恭史, 鹿島 励, 福田 和司
    原稿種別: 原著
    2012 年 53 巻 1 号 p. 18-27
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル フリー
    Serotype 2型高HCVRNA量(≥5 logIU/ml )のC型慢性肝炎naïve症例に対し,Peginterferonα-2a(PEG-IFNα2a)とα-2b(PEG-IFNα2b)の治療成績を比較した.PEG-IFNα2a群はPEG-IFNα2a単独で治療開始し,RVRが得られた症例は,引き続きPEG-IFNα2a単独で合計24週,RVRが得られなかった症例は,その時点でRibavirin(RBV)を併用し合計28週治療した.PEG-IFNα2b群は一律RBV併用の24週治療を基本とした.PEG-IFNα2a群とPEG-IFNα2b群のSVR率はそれぞれ93.3%(14/15),66.7%(12/18)であり,PEG-IFNα2a単独またはRBV併用でも,PEG-IFNα2b+RBV療法と比べ遜色ない効果が得られた.PEG-IFNα2a群では有害事象による中止は無かった.RVRの有無によりRBV併用の有無を考慮するresponse-guided therapyは,高い効果を維持しつつ有害事象やコスト低下に寄与できる効率的かつ実践的な治療戦略と考えられた.
症例報告
  • 今井 寛途
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 53 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル フリー
    HBV家族内集積の1家系を長期に亘り経過観察し,同胞7人中4人に肝癌発症(何れも男)を見た.即ち,長男(第2子)が46歳で肝癌死したあと,次男(第4子)も同年齢で肝癌発症し手術の翌年にアルコール性肝不全にて死亡.三男(第5子)は75歳で肝癌発症して外科治療を受け,四男(第7子)は61歳で肝癌発症しRFAと核酸アナログによる治療を受けHBV DNAが測定感度以下になって5年間無再発といずれも経過良好にて現在に至る.一方,女性同胞3人には一例も肝癌発症を見ず,次女(第3子)が82歳で胃癌死したものの長女(第1子)と三女(第6子)はおのおの92歳と70歳で無病存命中である.肝癌発症例の経過と治療歴を記すとともに,本家系に於いて男兄弟のみに集中して肝癌が発生した要因を性,飲酒歴,喫煙歴,II型糖尿病,肥満に焦点をあて考案を加えたので報告する.肝癌治療後の再発予防に核酸アナログによるHBV DNAの減少が有効と考えられた.
  • 渡邊 綱正, 菅内 文中, 楠本 茂, 新海 登, 飯尾 悦子, 松浦 健太郎, 日下部 篤宣, 宮木 知克, 野尻 俊輔, 田中 靖人
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 53 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は33歳男性.B型肝炎無症候性キャリアの経過観察中に悪性リンパ腫を発症し,2001年よりラミブジン(LVD)投与が開始された.2005年にbreakthrough hepatitisを発症し,アデフォビル(ADV)追加併用療法に移行した.2007年にはエンテカビル(ETV)単独治療へ変更された.2008年,2回目のbreakthrough hepatitisと悪性リンパ腫の再発を認め,再度LVD+ADV併用療法に変更した.しかし,ALT上昇とウイルス量高値が持続したため,耐性検査が実施された.L80I,L180M,A181T,T184I,M204I/Vの変異を確認し,多剤耐性変異と判断した.倫理委員会承認のもと,テノフォビル(TDF)+LVD併用療法を開始し,ウイルス量の低下と肝炎の改善が得られた.合併する悪性リンパ腫に対して,化学療法後にB型肝炎キャリアである実兄から同種骨髄移植を施行した.移植後ドナー由来の野生株によるウイルス血症を呈したが,治療継続により改善した.今回,多剤耐性変異株,かつドナー由来の野生株ウイルスに対し,TDFが著効した症例を経験したため報告する.
  • 犬塚 義, 大崎 往夫, 松田 史博, 坂本 梓, 幡丸 景一, 邉見 慎一郎, 石川 哲朗, 齋藤 澄夫, 西川 浩樹, 喜多 竜一, 岡 ...
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 53 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の日本人男性.2008年12月にB型慢性肝炎(Genotype C)指摘され,2009年12月よりエンテカビル(0.5 mg/日)とペグインターフェロンα-2b(80 μg/週)の48週間併用治療を開始.その後ウイルス量・HBe抗原価・HBs抗原価の減少を認めた.開始後44週時点でウイルス量は検出感度以下になるとともに,HBeセロコンバージョン・HBs抗原の消失,48週治療後半年以上経過した現在はHBsセロコンバージョンを維持している.HBs抗原自然消失例の報告は散見されるが,本症例は治療により引き起こされたHBs抗原消失例であり,そのような報告は少ない.また,本症例は治療前後の肝組織のcovalently closed circular DNA量や血清HBコア関連抗原量やHBc抗原の免疫染色を治療前後で比較できた点で,貴重な1例と考えられたため報告した.
  • 津田 聡子, 小松 眞史, 中根 邦夫, 辻 剛俊, 石井 元, 姉崎 有美子, 青木 隼人, 倉光 智之, 石井 透
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 53 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル フリー
    ペグインターフェロン(PEG-IFN)とリバビリン併用療法でnon-ETRであったGenotype2型のC型慢性肝炎2症例のIFNαに対する中和抗体を測定し,高力価が判明したためIFNβ単独治療を行った.IFNβに対するHCV-RNAの反応は良好であったがSVRが得られず,その後IFNβとリバビリンの併用療法を行いSVRを得ることができた.今後IFN再治療例や長期投与例の増加に伴い抗IFN-α抗体を有する症例も増加すると予想される.PEG-IFNとリバビリン併用療法の治療期間中にHCV-RNAが減少しない症例か,治療期間中にHCV-RNAが減少するものの再増加が認められる症例では,抗IFN-α抗体の存在を疑い測定する必要があり,抗IFN-α抗体陽性の場合はIFNβによる治療を選択すべきと思われる.
  • 浅野 岳晴, 中村 郁夫, 岡島 真里, 山中 健一, 浅部 伸一, 宮谷 博幸, 松浦 克彦, 吉田 行雄, 井廻 道夫
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 53 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.C型慢性肝炎にて当院通院中であった.1999年,肝細胞癌(S5単発,径3 cm)が認められ肝右葉前区域切除術を施行した.術後は4-6カ月ごとに腹部USおよびCT検査にて経過観察していた.2009年3月の腹部CT検査にて,肝右葉の手術断端に,内部が不均一で一部造影効果を示す病変が認められた.同病変は同年5月のCTにて増大傾向を認め,仮性動脈瘤と診断された.腹部血管造影では,右肝動脈の前区域枝起始部に3 cm大の仮性動脈瘤を認めた.破裂予防のため,瘤のコイル塞栓術を施行した.
    仮性動脈瘤の破裂の頻度や破裂後の死亡率は高率であるため,より早期の治療が望ましいとされている.また肝癌術後の画像フォローでは,術後晩期においても再発腫瘍の有無のみならず,動脈瘤や血栓などの血管変化にも留意する必要があると考えられた.
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