これまで数多くの肝線維症治療薬の開発が積極的に進められてきたにもかかわらず,未だ臨床応用に至ったものはない.最近では,炎症や線維化シグナルを直接の標的とする治療戦略から,非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis,NASH)に合併した代謝異常の是正に基づく間接的な線維症治療へと軸足が移ってきた.折しも,新たな疾患概念として代謝異常関連脂肪性肝疾患が提唱される中で,アメリカでは甲状腺ホルモン受容体作動薬が,初のNASH治療薬として承認を受けた.本総説では,これまでの肝線維症治療薬の研究,とりわけ肝硬変に至る前段階の線維化制御の試みから浮かび上がってきた問題点を整理することで,今後の薬剤開発を展望した.その中で,とりわけ近年のシングルセルおよび空間トランスクリプトーム解析の進歩と,臨床試験における適切なバイオマーカーの必要性を強調した.
肝炎医療コーディネーター(肝Co)養成が2017年に始まり,現在は資格を取得した多職種が様々な業務を行う.その一つに当施設では再活性化を含む肝炎ウイルス陽性患者への取り組みを行っている.具体的に電子カルテ上に再活性化を含む肝炎ウイルスアラートシステムを構築し,肝炎Coが中心となり運営している.今回システム導入前後における肝炎ウイルス陽性者への対応率を比較した.導入前はHCV抗体陽性者への対応率は20.3%(148名中30名)であったが,導入後は84.6%(898名中760名)と改善した.同様にHBs抗原陽性者でも,導入前の対応率は53.8%(80名中43名)であったが,導入後は95.4%(582名中553名)に改善した.HBV再活性化に対しては,75.7%(1043名中790名)が適切に対応されていた.肝Coによるこのシステムは肝炎ウイルス陽性者対応に効果的に働く可能性がある.
70代男性.進行肝細胞癌に対してアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法を開始した14日後から筋痛が出現,CTCAEv5.0 Grade1のクレアチンキナーゼ(CK)上昇を認め1コースで薬物療法は中止とした.その後最大Grade 4のCK上昇を認め,投与49日後には筋痛は改善したが,全身脱力感が出現した.最良治療効果判定ではPRであった.身体所見上ヘリオトロープ疹,ゴットロン丘疹,Vネック徴候および四肢近位筋優位の筋力低下を認め,抗TIF1-γ抗体が陽性であった.針筋電図検査では両下肢近位筋優位の筋原性変化を認め,皮膚筋炎と診断した.ステロイド治療を開始し,筋力低下,筋原性酵素上昇は速やかに改善し,レンバチニブを用いた二次治療を開始することができた.肝細胞癌免疫療法中に筋力低下,筋原性酵素上昇などを認めた場合,皮膚筋炎の発症を念頭に置くことが肝要と思われた.
症例は70歳代女性.X-1年に悪性リンパ腫と診断され,R-CHOP療法が開始された.化学療法開始時のHBVマーカーは高感度HBs抗原陰性,HBc抗体陰性,HBs抗体基準値内(9.5 mIU/mL,基準値:10 mIU/mL未満)であり,HBV再活性化モニタリングは未施行であった.治療開始から13カ月後に肝機能障害を認め,HBs抗原の陽転化が判明しIgM-HBc抗体は陰性であった.R-CHOP療法前のHBs抗体価が基準値内高値であったことから既往感染からのde novo B型肝炎と診断した.HBs抗体単独陽性の既往感染者において,その判断に用いるHBs抗体価に明確な基準はない.HBs抗体のcut off値10 mIU/mLは最小感染防御抗体価であり既往感染を判断する基準値ではないことに留意し,高リスクな治療を行う際には定量結果にも着目する必要があると考えられた.
The results from a questionnaire survey of care managers led us to develop initiatives that encourage patients with hepatitis C who require nursing care to undergo medical examinations. Liver-centered hospitals typically handle requests for referrals to liver specialists from patients' primary care physicians, which is a hurdle for care managers who want to promote consultations for those patients. In the system we created, the liver-centered hospitals hold training sessions for each regional comprehensive support center, deliver hepatitis C lectures designed for care managers, share their know-how on explaining concepts to patients, and support the process of referral to a liver specialist. Care managers might thus be able to refer patients to a specialist. Collaboration across the boundary between care managers and liver-centered hospitals is vital.