欠陥構造型プロトン伝導体は酸化物などに溶け込んだ水素イオン(プロトン)が結晶内を移動するセラミックスであり,水素センサや燃料電池などの応用が期待されている.本稿では欠陥構造型プロトン伝導体の材料特性や分極特性について解説するとともに水素センサや燃料電池への応用について紹介する.
マイクロ波を用いたワイヤレス電力伝送に関する人体安全性評価に関して,電波防護指針・評価法について概説する.国内では,ワイヤレス電力伝送のうちマイクロ波を用いた電力伝送の制度化がなされており,運用に際し人体安全性評価が必要となる.本稿では電波防護指針とは何か,評価はどのように行うのか,国際標準化の動向について紹介する.
市場動向からMEMSの高性能化・低コスト化が求められている.我々はその中で材料技術に着目し,圧電材料であるPZT(酸化ジルコン酸鉛)薄膜の単結晶化を達成し,市場に投入している.圧電薄膜の単結晶化により高い圧電定数と低い比誘電率の両立,高信頼性の達成,温度安定性の向上などさまざまなメリットを得ることができ,今後の圧電MEMSデバイスの発展に寄与できるものと考えている.また,本技術はPZT以外にもさまざまな圧電膜を単結晶化させる可能性を示している.本稿では圧電膜の単結晶化技術を中心に圧電MEMSの開発・製造を紹介する.
量子デバイスの発展が爆発的に進む現代において,次の時代のマイルストーンとして目指すべき課題は,実用的な問題において量子計算機によって,古典計算機の性能を凌駕(りょうが)すること,すなわち量子加速を達成することである.本稿では,その主戦場となるべき分野が物性物理学にあることを論じた最近の研究を紹介する.該当論文の主な寄与は,①テンソルネットワーク法に基づいた古典計算アルゴリズムの実行時間解析手法の提案,②命令レベルでの誤り耐性量子計算アルゴリズムの実行時間評価,③2次元強相関量子多体系における量子加速領域の発見,の3点に集約される.本稿で議論される格子模型は,量子ビット数・実行時間の双方で,これまでに知られていた他の量子加速の舞台よりも要求するリソースが少ないことから,誤り耐性量子計算機の研究開発において道標としての役割を担うことが期待される.
原子オーダ厚みの層状物質である遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)は,2次元半導体原子層材料として,特に光電子デバイスの分野で多くの注目を集めている.近年目覚ましい合成技術の進歩がなされウェーハスケールの大面積合成が実現されつつある一方で,デバイス性能に直結する品質の向上に関しては,さらなる発展が必要なのが現状である.筆者らは,本課題に対し合成機構の詳細な理解が必須であると着眼し,独自に開発した“その場観測CVD装置”を活用した研究を展開している.本稿では,これら筆者らのTMD合成機構に関する最新の内容を中心に紹介する.
近年,原子層材料をツイスト積層した際にできるモアレ超格子系が,積層角度に応じたさまざまな物性発現の舞台として注目を集めている.一方で,フォノン物性や熱物性については未解明な点も多い.本稿では,筆者らが研究を進めているラマン分光を利用して架橋原子層モアレ超格子系の熱伝導特性の積層角度依存性を調べた研究について紹介する.
チャージポンピング法はMOSFETを用いて酸化膜/半導体界面欠陥を評価する手法である.ゲートに繰り返しパルスを入力した際に流れる基板電流から界面準位密度を計算するが,Si以外の半導体では多量の界面準位密度や酸化膜欠陥の影響により,Siとは異なるチャージポンピング特性となることが多い.本稿では,チャージポンピング測定におけるパルス条件や素子構造の影響および3値パルスを用いた特性について,SiC MOSFETの測定例を中心に評価のポイントを紹介する.