上に述べた大会的な研究会に纒めて発表されたもの以外に,一般の諸雑誌に個々に発表されたものも可なり見受けられる.その内容を項目別に分類してみると,多少分類に無理はあるが一応Table 4の如くなる.
これらを通じて窺うことの出来る最近の研究動向は二つ或いは三つに大別して考えることができる.その一つはやはり中間層抵抗の問題をも含めた陰極基体金属に関するもので,特に陰極の寿命と直接結びつけて検討されている点が注目され,白金や所謂passive Niなども本格的に取上げられている.この問題に関連して陰極被覆中の遊離Baの定量や陰極物質の蒸発についても極めて注目すべき報告がなされている.
もう一つは数年前に酸化物陰極における空隙伝導の存在が指摘されて以来これに関連する実験か非常に多くなり,この面からの酸化物陰極の物性論的性質の再検討という分野が大きくクローズアップされたことである.そしてこの面からの実用的発展として酸化物被覆の多孔質を利用した新しい増巾装置などの提案もみられる.
それからもう一つ強いて分類を作ろうとするなら,それは酸化物陰極の使用限界の拡張への努力という分野が挙げられるであろう.これは広範に考えれば酸化物陰極に関するあらゆる研究の基盤をなすものとみることもできるが,ここでは特に目につくはつきりした2, 3の傾向としてHigh current densityへの努力と放電管への利用とを挙げることができよう.大電流密度を取り出すためには結局酸化物被覆の抵抗を小さくするということが第一に必要なことでありそのために種々の工夫が行われ,酸化物陰極ともいわゆるsintered cathodeともつかぬ様な中間的なものが現われ出している.又こういう行き方とは全然別な所謂Hollow陰極の出現も大いに注目されよう.
放電管への利用の面では熱陰極としての利用は古くからなされているが放電管中での酸化物陰極の挙動については殆ど検討がなされていなかつたこがこういう面でのデーターも現われ出している.冷陰極としての検討は更に少くこの面での研究は全く緒についたばかりといえよう.
以上三つの大きな分野のうちでこゝでは始めの二つについて項をわけて詳述し,第3の分野については特に, Hollow陰極だけを取り上げることにする.(以下次号)
抄録全体を表示