応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
87 巻, 2 号
『応用物理』 第87巻 第2号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
Science As Art
今月号の概要
総合報告
  • 樽茶 清悟
    2018 年87 巻2 号 p. 88-99
    発行日: 2018/02/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    量子ドットの電子スピンは,量子情報の媒体(量子ビット)としてコヒーレンス時間が長く,物理寸法が小さいという特徴をもつことから,大規模量子コンピュータへの応用が期待されている.本稿では,スピンを含む固体系量子コンピュータの課題とされる,多量子ビット化と量子操作の高忠実度化について研究の現状と今後を概観する.従来,電子スピンを用いた量子情報の研究では,電子状態の制御性がよいGaAs量子ドットが多く用いられてきたが,最近は,集積化に有利で,コヒーレンス特性に優れたSi量子ドットが研究の主流になっている.ここでは,まずGaAs量子ドットを用いた多ビット化とデコヒーレンス抑制,続いてSi/SiGe量子ドットを用いた量子操作の高忠実度化について,我々の研究を中心に紹介する.

解説
最近の展望
  • 松本 翼
    2018 年87 巻2 号 p. 106-110
    発行日: 2018/02/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    ダイヤモンド半導体は,半導体材料の中でも絶縁破壊電界,熱伝導率,キャリヤ移動度が極めて高く,究極のパワーエレクトロニクス材料として期待されている.1997年に初めてn型ダイヤモンド半導体の成長に成功してから,それ以前に広く研究されてきたp型ダイヤモンド半導体と組み合わせて,ダイオードやトランジスタ,LED,センサなどが報告されてきた.しかし,パワーデバイスとして広く普及している反転層型MOSFETは良質なMOS界面の作製が困難であったため,実現していなかった.本稿では,世界で初めて成功した反転層型ダイヤモンドMOSFETの動作実証の詳細と今後の展望について述べる.

研究紹介
  • 玉手 英明, 牧野 真人, 川上 勝, 古川 英光
    2018 年87 巻2 号 p. 111-115
    発行日: 2018/02/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    近年,3Dプリンタの利用が拡大している.3Dプリンタは,数年前から航空機部品のようなロット数が少ないものに対して用いられていたが,最近では,BMWグループの自動車部品1),アディダス社のシューズ2)などの量産品でも使用されるようになってきた.3Dプリンタで使用される材料についても,幅広く使用されているプラスチックに代表される高分子樹脂から,石膏(せつこう)材料,金属材料と拡大している.我々の研究グループ,ソフト&ウェットマター工学研究室(SWEL)3)では,3Dプリンタが注目される前から,本技術を取り入れており,また,世界に先駆けてゲルの3Dプリンタの開発4,5)を行ってきた.ゲルは,我々の研究室名にあるとおり,ソフトかつウェットな材料であり,人体と同様に,絡まり合った高分子鎖の中に溶媒を保持したものである.このゲルを直接3次元造形するためには,多くの手法・技術的課題が存在する.本稿では,我々が開発している3Dゲルプリンタとその応用技術について紹介する.

  • 芦原 聡, 草 史野, 森近 一貴, 櫻井 敦教
    2018 年87 巻2 号 p. 116-120
    発行日: 2018/02/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    赤外波長域の吸収・散乱スペクトルには,物質の振動スペクトルが現れる.この振動スペクトルは,物質の指紋といわれるように,物質の構造解析および同定に優れる.そこで赤外分光法は,古くから物質科学・生命科学の現場で重宝されており,今日ではフーリエ変換型赤外分光光度計として成熟した感がある.ところが,赤外分光法には,新しい光源やその他の光技術を導入することにより,まだまだ飛躍的に進歩する可能性がある.我々は,赤外分光法に超短パルスレーザーとプラズモニクスの技術を導入し,分子の構造とダイナミクスを高感度かつ表面選択的に映し出す手法を開発している.本稿では,この表面増強‐超高速振動分光法について紹介する.

  • 山端 元音, 藤原 聡
    2018 年87 巻2 号 p. 121-125
    発行日: 2018/02/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    2018年秋に国際単位系(SI)のアンペアが再定義される見通しである.電気素量eを固定値として電流標準でアンペアが実現されることになるため,クロック信号に同期させて電子を1つずつ転送する単電子ポンプから生成される電流は,最も直接的な究極の電流標準になると期待されている.この応用へ向けて,高精度な高速(=大電流)動作を実現することが必須である.本稿では,ギガヘルツ高速動作時のシリコン単電子ポンプを高精度電流測定系で評価した結果を紹介する.1GHz動作での世界最高レベルの転送エラー率(9.2×10-7以下)や,7.4GHzの世界最高速動作を達成した.

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