応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
72 巻 , 10 号
『応用物理』 第72巻 第10号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
総合報告
解説
  • 解良 聡, 上野 信雄
    2003 年 72 巻 10 号 p. 1260-1267
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    有機デバイスの特性を理解していくうえで,分子個々の性質と集合体としての薄膜の性質に加え,有機デバイス中に必ず存在する有機/無機界面について詳細に知ることがデバイス開発側から要求されつつある重要な課題である.しかし,その複雑さのために微視的な立場から体系的に捉えることは容易でなく,これが有機デバイスが爆発的な注目を集めるまで基礎的立場からの研究参入を拒んできた理由の一つである.光電子分光法はきわめて一般的な手法の一つで,今や有機デバイス界面の研究に不可欠となっている.有機/無機界面では得られる光電子スペクトル構造(線幅・形状・位置)についての正しい解釈がこの系を理解するうえでの重要な第一歩といえる.価電子帯最上部のバンドは,薄膜中や界面におけるキャリアの動的挙動,分子間相互作用などの物性基盤を理解するうえできわめて重要な情報を含んでいる.本稿では有機薄膜界面研究の現状,問題点と今後の課題について紹介する.

  • ―生体原理に学ぶ新たなプロセッサーアーキテクチャー―
    柴田 直
    2003 年 72 巻 10 号 p. 1268-1275
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    人間のようにしなやかな情報処理のできる電子システム実現をめざした,新たなプロセッサーアーキテクチャーの研究を紹介する.われわれが日常生活においてものごとを柔軟に認識w・w判断できるのは,無意識のうちに,過去に経験した膨大な記憶の中から最もよく似た事例を思い出して処理しているからではないか.こんな考えに基づき,四則演算を基本とする現在のCPUに対し,「連想演算」を基本とする心理学的脳モデルVLSIシステムを開発している.一例として,MOSデバイスの非線形特性を用いて連想処理を実現したアナログVLSIと,PPED法と呼ぶロバストな画像ベクトル表現アルゴリズムの組み合わせで,ヒトの感性に近いパターン認識や専門医の行う医用X線写真解析が可能なことを示す.

研究紹介
  • 下村 政嗣
    2003 年 72 巻 10 号 p. 1276-1279
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    散逸構造などに代表される非平衡現象に基づく自己組織化による規則的なパターン形成を利用して,高分子材料やナノ粒子のパターン化に成功した.高分子の希薄溶液をキャストするプロセスでベナール対流やフィンガリング不安定性などの散逸構造が形成され,その結果としてサブマイクロスケールの規則パターンが得られた.さらに,加湿条件下でキャストすると,水滴を鋳型とすることで,均一な細孔を有するハニカム状フィルムが形成される.細孔の大きさは,溶媒の蒸発時間などを制御することで幅広い範囲で変化できる.また,二次加工によるさまざまなパターン化が可能であり,リソグラフィーフリーの微細加工技術となりうる.

  • 益田 秀樹
    2003 年 72 巻 10 号 p. 1280-1285
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    Alを酸性電解液中で陽極酸化することにより得られる陽極酸化ポーラスアルミナは,自己組織化的に高い規則性を有するナノホールアレイを形成することから,ナノデバイスの出発構造として関心が高まっている.本稿では,アルミナナノホールアレイ構造の形成過程,ナノデバイス作製のための幾何学構造の制御,さらには,最近の機能的な応用例について紹介する.

  • 浅井 哲也
    2003 年 72 巻 10 号 p. 1286-1290
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    熱や物質の流入出のあるような非平衡開放系(反応拡散系)の性質を数値的に調べることは,自然界の生き生きとした非線形現象がもつ意味や仕組みを明らかにするための重要な手がかりとなる.ところが,近年の高速計算機を用いたとしても,大規模な反応拡散系を数値的にシミュレートすることは容易ではない.そこで,反応拡散系そのものをアナログ的に模するようなアナログ集積デバイスを構築し,それを用いた応用の可能性を探る.空間の一点の反応ダイナミクスを模するアナログ回路をシリコンチップ上に二次元配置することで,空間規模によらない高速エミュレーションが可能になる.本稿では,その設計の一例と試作チップの動作について紹介する.さらに,エミュレーター用途以外の応用の可能性についても議論する.

  • 桑原 裕司, 赤井 恵, 大川 祐司, 青野 正和
    2003 年 72 巻 10 号 p. 1291-1295
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    分子1個単位で化学反応を制御し,その機能を分子単位で計測・評価することを目的として,特にナノ配線として注目を集めているπ電子系の導電性重合分子鎖を,自己組織化単分子膜上で任意の位置に構築し,その重合分子鎖の局所電子状態を単一分子レベルで解析した.また,分子鎖形成の際,連鎖重合反応における一分子励起状態をとらえた興味深い結果もあわせて紹介する.

  • 菊池 純一, 橋詰 峰雄
    2003 年 72 巻 10 号 p. 1296-1299
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    細胞の情報伝達システムは一見複雑にみえるが,それらはいくつかの共通の物理化学的原理に基づいて機能している.細胞ならびに細胞内器官の区画を形成している生体膜に着目すると,それらの膜上に存在するシグナル伝達系にインスパイアされた分子デバイス開発の方向性がみえてくる.機能分子の自己組織化を達成するための人工生体膜の設計と,分子デバイスのための基板としての有効性に関する最近のわれわれの研究について紹介する.

  • 猪飼 篤, アフリン レハナ, 王 彤, アラム M. T.
    2003 年 72 巻 10 号 p. 1300-1303
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    たんぱく質は生物現象を支える機能素子としてとみに物理学者の注目を集めているが,従来の研究ではその機能と構造面が強調されており,力学物性に関する研究は少なかった.1986年の原子間力顕微鏡の発明以来,単一分子レベルでの分子操作が可能となったのを機に,たんぱく質の力学物性測定の機運が盛り上がっている.われわれはシリコンなどの固体基板に共有結合で固定したたんぱく質分子を,その両端から引き伸ばしてその構造を壊す際の「破壊力学」を観察する方法を開発した.またこの方法を使うと,固体表面に固定されたたんぱく質の変性過程を力学的測定反応で追跡することも可能である.一方,たんぱく質の表面は固体表面と種々の相互作用をする官能基で覆われている.医用工学のために開発される人工材料に血清たんぱく質が吸着する現象はいろいろな角度から研究されているが,原子間力顕微鏡は単一分子レベルでの吸着力測定にも利用することができる.本稿ではこれらの測定方法について報告する.

  • ―生体分子のナノダイナミクス撮影―
    安藤 敏夫
    2003 年 72 巻 10 号 p. 1304-1308
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    Binnigらによって1986年に発明された原子間力顕微鏡(AFM)は,水溶液中で基板上にある個々の生体高分子をナノメートルの解像度でイメージングすることを初めて可能にした.ほかにはないこの特徴は,活動中の生体高分子に起こるダイナミックなプロセスのイメージングを可能にするのではないかと期待された.しかし,この期待(生命科学の夢)は実現されることはなかった.AFMのイメージング速度は生体分子プロセスをとらえるには遅すぎるからである.この夢は2001年になり,金沢大学のわれわれの研究グループが開発した高速AFMによってついに実現された.本稿では,われわれの装置開発を概説したのち,その最近の進展およびモーターたんぱく質で得られた映像データを紹介する(映像はWebページhttp://www.s.kanazawa-u.ac.jp/phys/biophys/ap.htmを参照されたい).

  • 藤澤 利正
    2003 年 72 巻 10 号 p. 1309-1313
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    電気的なパルス電圧を量子ドット(人工原子)に印加して得られる過渡トンネル電流の測定から,エネルギー緩和過程および非平衡トンネル過程について述べる.これらは単一電子ダイナミクスの基本特性であるとともに,量子可干渉性を利用する量子計算や単一電子トンネル素子への応用上重要な指針となる.

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