青色InGaN半導体レーザーは,近年,プロジェクタやレーザー加工応用への直接的な光源として注目され,単一エミッタとしての高出力化においては,AlGaInP赤色半導体レーザー以上の出力レベルに達し,ビーム結合により数十Wの出力が実現されている.さらに,長波長化はすでに緑色に達している.同レーザーで励起した固体レーザーは,コヒーレント変換器として,あるいは高ピークパワーパルス動作,波長可変性などの高機能性を付加できるデバイスとして,従来の近赤外半導体レーザー励起固体レーザーを凌駕(りようが)する可能性を有している.本稿では,Pr3+ドープLiYF4固体レーザーを中心に開発研究動向を紹介する.
光の波長と同じオーダで物質・材料を設計するマイクロドメイン構造制御により,必要とする光機能を発現,強調させるドメイン光制御を目指した「マイクロ固体フォトニクス」,特に高輝度な光を望む「ジャイアントマイクロフォトニクス」を提案する.すでにYAGセラミックスは,内燃機関に革新的な燃焼をもたらす点火のためのジャイアントパルスレーザーを,プラグサイズにまで落とし込んだ.ただ,配向制御ができないため高度な利用や異方性材料は望めないなどの課題もあった.そこで,希土類4f電子の量子状態を利用した配向制御を試み,レーザー核融合などの極限的な大出力エネルギー発生が期待されるFAP異方性材料によるセラミックレーザーを試みた.
「ダイヤモンド結晶中へ,単一の電子スピンを形成する」.この課題に対して,筆者らはダイヤモンド成長装置の設計と成長条件の最適化を図り,さらに不純物と欠陥の評価を幾度も繰り返すことでダイヤモンド結晶の純度と結晶性を向上させ,単一電子スピンにとって「ホワイトキャンバス」といえるダイヤモンド結晶を得ることに成功した.本稿では,電子スピン状態の外乱となる核スピンの低減を含めて,スピントロニクス応用に適したダイヤモンド結晶成長の現状を紹介する.
スペースデブリ(デブリ)の増加による地球周回軌道の環境悪化を防ぐため,軌道上に存在するデブリを除去する必要性が高まっている.実現可能なデブリ除去システムを構築するためには,その簡素化・低コスト化が鍵となり,これに貢献できる宇宙推進技術として,エレクトロダイナミックテザー(EDT)がある.EDTは,軌道上で伸ばしたkm級の長さの導体テザーに電流を流すことで生じる電磁気力を利用した推進装置であり,燃料も推力方向制御も不要という利点をもつ.宇宙航空研究開発機構(JAXA)では,EDTの軌道上実証実験計画を進めるとともに,その先のEDTパッシブ化に向けた研究にも着手している.
鏡映対称性を有しない構造(キラル構造)を電磁波が透過した場合,旋光性と呼ばれる偏光回転が生じる.この偏光回転の方向は,右回り・左回りのような,構造のキラリティの向きに依存する.そのため,キラル物質の3次元的な構造自体を鏡像異性体同士で自在に切り替えることができれば,偏光回転の向きをスイッチすることが可能となる.本稿では,MEMSなどの精緻な構造制御技術と,メタマテリアルと呼ばれる人工構造を用いた光波制御技術を融合させることによって,人工キラル構造のアクティブ制御を実現し,テラヘルツ領域での円偏光スイッチングを可能にした我々の最近の研究について紹介する.
近年発見された磁気スキルミオンは,小さく安定な粒子として振る舞い,電流や熱勾配で比較的容易に駆動できる.これらの特徴を生かすことでスキルミオンを情報媒体とした次世代型磁気メモリの実現が期待され,現在,活発な研究がなされている.本稿では,これまでに提案されている電気的・磁気的な原理とは異なる手法として,力学的なスキルミオン相の生成・消滅方法を紹介する.本手法は原理的には単一スキルミオンの操作も可能であり,スキルミオンメモリ実現に向けた新たな動作原理の提供となりうる.
CMOS集積回路を搭載してその機能を積極的に生体の計測や生体刺激に利用する,新しいタイプの生体埋植マイクロエレクトロニクスデバイス研究について紹介する.CMOSチップを生体との界面に近づけて利用することで,多点電気刺激や接触型生体内イメージングなど,従来にない新しいアプリケーションを生みだすことができる.一方で,屈曲した組織への適合や,エレクトロニクスデバイスと生体組織を同時に保護する高機能パッケージングなど,独特の課題解決が必要となる.本稿では,筆者らの研究グループが開発したデバイスのデザイン・作製と機能実証について紹介しながら,生体埋植マイクロエレクトロニクスデバイス技術の課題について論じる.
本稿では,診断医療分野における半導体バイオセンシング技術の応用の可能性について紹介する.特に,生体機能に関連深いイオン挙動に着目し,そのイオンの電荷を直接計測可能な半導体原理ならではの利点について,例を挙げながら概説する.
出力や変換効率など太陽電池の性能を測定するための基本について述べた後に,性能をより正確に再現性よく測定するために必要な手順,装置や注意点についても概説します.実際の測定では,太陽電池のさまざまな特性を考慮して測定手順や条件を選択することが重要で,特に新型太陽電池の場合,その選択は必須です.屋外で稼動する太陽電池の性能を正確に測定する技術が最近特に重要視されており,それらの技術についても紹介します.