CCDイメージセンサの登場でビデオカメラの小型化に成功し,コンシューマ製品としてディジタルカメラ市場が大きく拓(ひら)けて以来,CMOSイメージセンサにおけるカラム並列AD変換回路や裏面照射構造の開発によって,画質や動画性能の向上が加速した.さらに,3次元積層技術によって,CMOSイメージセンサは小型化・高機能化が進み,現在ではスマートフォンを中心に年間50億個以上が出荷されている.本稿では,CMOSイメージセンサの現在に至る研究開発の経緯と,さらに今後の展望として,センシング技術として検知可能な波長領域を拡張し,さまざまな応用領域への展開を加速させていく技術動向を紹介する.
多様に進化した3次元集積技術をレビューする.電子情報産業は,半導体デバイスとシステムの機能および市場性を両輪として300兆円規模に発展した.これらを牽引(けんいん)してきたのが微細化と実装技術である.ところが,微細化は物理限界に近づき,また実装性能は頭打ちになりつつある.3次元集積技術は,これら2つの課題に対する新たなブレークスルーとして今後進展することが期待されている.本稿では,さらなる高集積化,高機能化に向け,前工程・後工程それぞれの世界で開発が進められた3次元積層技術を振り返り,筆者らが開発したウェーハレベル3次元集積技術について紹介する.
IoTの大きな課題の1つに無線通信の電源(電池)がある.我々が開発する振動発電デバイスはシンプルで堅牢(けんろう),高出力,高感度の特徴を有し,電源の問題を完全に解決すると期待される.実際,この技術の実用化を見据え,数多くの企業が商品化研究に着手した.本稿では,この電気機械エネルギー変換の基本となるFe-Ga合金からデバイスの構造と発電原理,コイン電池を代替する超小型デバイスの出力特性とその実用構造を公開する.そして,この技術で実現する電池フリーIoTとデバイスの普及に向けた課題,将来展望を解説する.
白金族元素(Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt)は常圧下では窒素に対して不活性であり,従来は窒化物を形成しないとされてきた.ところが,数十GPa以上の超高圧下での直接窒化反応を用いると,これらの金属の二窒化物が創製される.ここでは,金属二窒化物などの金属多窒化物という新しい物質群について,現在世界で展開されている物質科学研究の一端を紹介する.最初に,ダイヤモンドアンビルセルという超高圧発生装置とレーザー加熱を組み合わせた超高圧合成技術について説明する.次に,合成された白金族金属二窒化物の安定性,結晶構造,物性について簡単に紹介する.そして最後に,白金族元素以外の金属においても創製される二窒化物の研究例として,世界で唯一初めての単結晶育成に成功したCrの二窒化物について述べる.
近年,多元系窒化物半導体が盛んに研究されている.この中でも,ZnSnN2は2011年頃から研究が始まった,新しい疑似III族窒化物半導体である.この化合物は地殻中に豊富で安価な元素のみから成り,そのバンドギャップは1eV程度で,太陽電池の吸収層などへの応用が検討されている.筆者らは,2014年頃からZnSnN2ならびにその類縁体窒化物の合成と評価を行ってきた.本稿では,これまで行ってきた研究と最近の展開について紹介する.
機能性デバイスの物理的な性質を利用し,ニューラルネットワークをハードウェア実装することで低消費電力かつ高速な人工知能の実現を目指す研究が行われています.本稿では,ナノサイズの強磁性体から成る自励発振素子であるスピントルク発振素子を人工ニューロンとして用いた研究について紹介します.