中間バンド型太陽電池は単接合太陽電池のバンドギャップの中間にバンドを設けた構造で,光電流増加による高い変換効率の実現が期待されている.効率向上のカギを握っているのは,価電子バンドから中間バンドに励起した電子を電流整合させて,効率よく伝導バンドに光励起することである.本稿では,中間バンド型太陽電池の基礎と,変換効率を左右する量子ドット中間バンドを介した光キャリヤダイナミクスと2段階光励起過程の実証に関する最近の進展について紹介する.
現在,量子電気標準はジョセフソン効果と量子ホール効果による電圧と抵抗の実現のうえに成り立っている.電流つまり,アンペアは7つのSI基本単位の1つにもかかわらず,これら2つの量子効果から間接的に「組み立て量」として実現されている.この理由について解説し,そして2018年にも改定が予定されている電気素量,プランク定数を定義値とする新しいSIに向けた,単電子トンネリング効果を基本とする電流標準について説明する.最後に,ジョセフソン効果,量子ホール効果,単電子トンネリング効果の間の整合性の検証,つまり量子メトロロジートライアングルと呼ばれるオームの法則の量子力学的検証について概説する.
1分子検出技術を用いたゲーティングナノポアシークエンサは,非標識で,電気計測により,DNAの塩基配列を決定できるようになってきた.さらに,現在のDNAシークエンサでは検出できないが疾病マーカになることがわかっているマイクロRNAの塩基配列やメチル化シトシンなどの変異塩基が,検出されるようになり,既存のDNAシークエンサにはない機能が実証されている.
バルク試料に埋もれたナノメートルスケールの転位ひずみ場を高分解能で可視化することが,転位の構造研究の1つの課題である.我々は,コヒーレントX線回折イメージング技術を駆使することで,シリコン単結晶中の転位ひずみ場を数十nmの空間分解能で可視化できることを実証した.また,可視化した位相分布を参照し,位相特異点に集束したコヒーレントX線を照射することで,回折波にマイクロX線渦ビームが形成され,その軌道角運動量を自在に制御できることを見いだした.X線渦ビームは,3d遷移金属の双極子遷移と4重極遷移を識別するX線吸収分光など,さまざまな応用の可能性を秘めている.
有機多層膜の深さ分析や分子イメージング技術など有機材料の表面分析に革新をもたらしたガスクラスタイオンビームを用いるXPS法やSIMS法が実用化され,いまや有機材料や有機デバイス開発に欠かせないツールとなっている.生命科学分野への応用を目指した新しいSIMS装置や分子イメージング技術など最新の研究成果を紹介し,クラスタイオンビーム技術の最先端の研究動向について議論する.
化合物半導体の自己形成量子ドットの高密度積層化の際には,歪(ひずみ)エネルギーの蓄積による結晶品質の劣化が問題となっている.本稿では,歪補償法を用いた自己形成InAs量子ドットの超高密度形成技術を解説し,光通信波長帯デバイスへの応用を紹介する.
(独)産業技術総合研究所では,2008年からクリーンルームが不要でハーフインチウェーハを用いる,少量向けの新しい超小型半導体システム-ミニマルファブモデルを提案している.少量デバイスは,品種ごとには小さな存在だが,多品種少量マーケット全体では,大量生産マーケットに匹敵する規模をもっている.すでに,リソグラフィ装置を中心に,主要装置は実動できるレベルにまで開発が進んでおり,普通の実験室などでMOSFETを試作することに成功した.
スパッタリング成膜法を用いた酸化亜鉛(ZnO)薄膜の結晶成長において,初期核形成を制御する新しい方法「不純物添加結晶化(Impurity Mediated Crystallization: IMC)法」を開発した.本手法により,高格子不整合基板上への原子レベルで平坦なZnO単結晶膜の作製や,ガラス基板上への極薄低抵抗ZnO導電膜の形成が可能となった.本稿では,IMC法について紹介するとともに,これら成果の概要を述べる.