新しいエレクトロニクスの潮流として日々発展を続ける分子性電子材料の薄膜トランジスタ応用に焦点をあて,これを用いたフレキシブルエレクトロニクス,プリンテッドエレクトロニクスの研究動向と将来展望を紹介する.
軽くて折り曲げられる柔らかな有機ELデバイスや太陽電池は,次世代ユビキタス社会に向けて注目されており,現在のガラス基板だけでなくプラスチック基板の利用が進められている.エレクトロニクスデバイス用途で要求される水蒸気バリア度は,例えば,太陽電池のバックシート用途で10-2〜10-4g⋅m-2⋅day-1,有機EL基板用途で10-5〜10-6g⋅m-2⋅day-1である.しかしながらこの条件を満たすプラスチック基板を評価する手法が確立されていない現実がある.本報では,フレキシブルエレクトロニクスデバイス分野で用いられているハイバリアフィルムのガスバリア性評価について概説する.
フレキシブルエレクトロニクスを利用した商品イメージの代表的なものとして,印刷により作製したRFIDタグがあげられる.RFIDタグには高周波回路・アナログ回路・デジタル回路などのさまざまな要素が含まれており,それぞれを印刷で作製するためには技術的に克服しなければならない課題が多数存在する.しかし,現在の印刷技術および周辺技術の発展,さまざまな新規印刷用材料の出現により,印刷RFIDの商品化は現実味を帯びてきた.
有機ラジカル電池は,安定ラジカルを有する高分子材料を用いた2次電池であり,ニトロキシルラジカルなどのラジカル種の酸化還元により充放電を行う.この電池は,高出力放電が可能であり,またフレキシブルな形状をもつ.薄型有機ラジカル電池の高出力放電試験では,1万回の連続パルス放電(1秒パルス)でもセル抵抗の上昇,容量減少はみられなく,高い安定性を示した.特に薄型フレキシブルな有機ラジカル電池は,高機能ICカードなどの将来の小型電子機器の電源に適していると考えられる.
次世代の超小型・高画質カラーカメラを実現するために,光の3原色のそれぞれにのみ感度をもつ有機光導電膜を積層したカラー撮像デバイス〜有機撮像デバイス〜の開発を進めている.このデバイスの実現により,カラーカメラの小型化はもとより,撮像デバイスの多画素化・微細化に伴う感度やダイナミックレンジ低下などの問題も抜本的に解決できると期待されている.ここでは,有機撮像デバイスの概念などを述べた後,有機光導電膜の諸特性と有機撮像デバイスの開発状況について紹介する.
ナノインプリント技術は,電子デバイスの微細構造形成において,従来の半導体製造技術の代替として注目されており,省エネおよび低コスト化が可能であることを特徴とし,光学素子,バイオ・メディカルなどの分野でも研究が進められている.また,これらの電子デバイスを金属薄膜や樹脂フィルム上に製作できれば,量産性に優れるロールツーロールプロセスが適用でき,薄型・軽量化が可能となる.本稿では,ナノインプリント装置,金型加工法,デバイスへの応用事例などを交えて,ロールツーロールプロセスを用いたナノインプリント技術の最近の展望について記述する.
フレキシブルディスプレイの実現に当たっては,有機膜/無機膜の積層構造がいろいろな局面で必要とされる.今回,有機膜上にプラズマCVDで無機膜(SiOxNy 膜)を高温で成膜する際の無機膜にクラックやしわが発生する問題の検討を行った.その結果,SiOxNy の成膜温度が,有機膜材料のガラス転移点(Tg)を超えたときに問題が発生すること,SiOxNy 膜が引っ張り応力ではクラックが発生し,圧縮応力ではしわが発生することを確認した.Tg以下の成膜温度を用いることや無機膜の応力を -200〜100MPaに制御することで,クラックやしわ発生を抑制できる可能性を確認した.
In this paper, an overview of Taiwan's research activities on the flexible electronics introduced in industrial, research institute and academic fields is given.
フレキシブル薄膜エネルギーデバイスとして,フレキシブル薄膜Liイオン二次電池の現状を紹介し,次に,薄膜二次電池と薄膜Si太陽電池を一体化した「フレキシブル複合電池」の開発状況を報告する.さらにフレキシブル複合電池とフレキシブルエレクトロニクスデバイスが一体化した自立型フレキシブルエレクトロニクスデバイスの今後について付言する.
一般的に再現性の良い測定評価結果を得るためには,ノイズなどへの考慮・対応が必要になる.ここでは,半導体評価で主要な測定項目である微少電流と容量について,通常の測定環境で重要となる基本的な要素について考察する.測定装置自体,接続方法などのそれぞれの特徴や限界への理解を含めてより良い再現性を得る方策を解説する.