Si集積回路の発展を支えるフォトリソグラフィにおける最先端技術について,工場量産中あるいは量産間近の技術から,研究開発段階の技術までを概説し,それぞれの技術の実用性と問題点を解説する.フォトリソグラフィ技術の進展は,ハーフピッチ10 nm以下が視野に入る領域に突入し,Si集積回路の動作特性の物理的限界の問題ばかりではなく,フォトリソグラフィ技術においても物理的限界が問題になりつつある.さらに,フォトリソグラフィ技術に要するコストは,近年著しく顕在化してきた問題である.
ナノインプリント法の種類と,その基本的プロセスならびに多様なシーズについて紹介する.熱ナノインプリント法は,加工対象の範囲は広く,樹脂のみならずガラス,有機半導体材料,セラミックなど,さまざまなナノテク材料に及ぶ.パターン形状と成型性などについての基本事項を述べる.一方,光ナノインプリント法は,プロセス時間が短く生産性に優れている.モールドへの樹脂の充【じゅう】填【てん】性と光硬化プロセスの物理現象についても解説する.さらに,リバーサルナノインプリント法やハイブリッドナノインプリント法による3次元構造やマイクロ・ナノ混在構造の作製など,ナノインプリント技術の幅広いシーズについても紹介する.
フェムト秒レーザーを用いた加工においては,照射レーザーフルーエンスに応じてさまざまな現象が誘起される.熱影響が無視できるアブレーション加工,サブミクロンの微細周期構造形成,結晶構造の相変化など,産業的にも有益な加工方法として注目されている.直接加工においては回折限界により空間分解能が制限されるものの,深さ方向においてはナノオーダの加工が可能である.また,ナノ微粒子や薄膜コーティングなどを併用したナノ加工技術も開発されており,新たなものづくり技術として興味深い.
ナノ材料の機能を活用した製造技術は,従来のモノ作りのプロセスを覆す魅力がある.必要な場所に,必要な量の材料を塗布できるインクジェット技術は,新しい機能付与のプロセス技術としても期待されている.従来の1/1000以下の超微細液滴によって,サブμmオーダの精密な直接描画を可能とするスーパインクジェット技術を中心に,現在脚光を浴びているフレキシブルエレクトロニクスや,プリンテッドエレクトロニクスへの応用などの展望を述べる.
1986年の応用物理学会学術講演会において,初めて極端紫外線リソグラフィ技術(EUVL)を提案して以来,四半世紀が経過し,ようやくEUVLによる量産化への道筋が整ってきた.この間に,ミラーの研磨技術や測定技術の精度は10倍から100倍ほどに進化し,多層膜も半導体の薄膜技術の伸展の恩恵に預かり,理論値に近い反射率を達成している.2013年から線幅20nm台のフラッシュメモリの量産化が期待されている.今後の課題はスタンドアロン光源の高出力化,マスク欠陥ゼロ化に向けた検査機の整備である.
シリコンチップを積層して高密度の集積回路を実現するシリコン貫通電極は,3次元実装の重要技術として期待されている.数年にわたって世界的な開発が続いていたが,ようやく実用化が始まった.チップ内に微細な縦方向の伝導路を形成するために,従来の半導体ウェーハプロセスに加えて深堀イオンエッチング,ウェーハ薄化,ビア絶縁膜,ビアフィルめっき,電極形成,マイクロバンプ,ダイボンディングなどの微細加工関連技術が総合的に使用されている.
ガラス内部の物性,例えば屈折率をフェムト秒レーザー光の照射により変化させ,照射部に機能をもたせる試みがなされている.その一例として,光導波路デバイスが挙げられる.これらの加工には,レンズによる集光点を逐次移動させながら加工する逐次加工法が使用されてきたが作製時間が長く,世の中に普及するに至っていない.本稿では,ホログラムを通してレーザー光を照射し,結像した3次元実像でデバイスを一括で短時間に作製できる加工技術と,本技術により試作した具体的なデバイスの概要を紹介する.
電解析出法や陽極酸化法などの電気化学プロセスによる微細構造体形成プロセスについて,最近の検討事例を紹介した.微細パターン基板に電解析出プロセスを適用することにより,十数nmサイズの強磁性ナノドットアレイの形成が可能である.また,Si単結晶ウェーハに光照射を援用した陽極酸化プロセスを適用することにより,位置選択的に所望のサイズの微細孔アレイを形成可能であり,さらにその表面に種々の処理を施すことにより,微細なガラスチューブアレイや金属ニードルアレイを形成できることを示した.
Si集積回路のポスト・スケーリング技術として高品質GOI(Ge on Insulator)構造の形成技術が注目を集めている.固化温度の勾配空間をSi -Geミキシングで作り出し,Ge成長を自己組織的に起動する新しい溶融成長法を紹介する.cmに至る巨大単結晶Geや網目状Geが絶縁膜上に実現した.Siマイクロシード技術との重畳で,Si(100)基板上へのGe(111)混載も可能となった.人工単結晶の創成に拍車を掛ける結果と考えられる.
フォトニック結晶をベースにすることにより,数ミクロン程度のフットプリントで消費エネルギーがfJ/bitオーダの光スイッチや受発光素子などの光デバイスが実現されつつある.この技術を用いれば,大量の種類の異なる光デバイスを1チップ内に高密度に集積することが可能となる.この技術はマイクロチップの中に極限的な高密度の光ネットワークを導入する技術として有望であり,低消費エネルギー・広帯域の情報通信技術を可能とする技術の一つとして期待される.
ニューヨーク州立大学CNSE(College of Nanoscale Science and Engineering)における研究開発共同利用施設は,ナノテクノロジーの研究開発とその教育および,産業展開を目指して設立された.総額80 億ドルをかけて構築した300mmウェーハのクリーンルームがスタートして6年,2500名を超す研究者,技術者が,20nm以降のデバイス開発をはじめ,太陽電池,バイオデバイスの研究開発を推進する一大研究開発拠点として注目されている.研究開発を推進するグローバルな連携コンソーシアム,産官学連携の研究開発・製造へ至る事業化のプロジェクトの一端を紹介し,その成功の要因を考察する.