1970年,米国Corning社のKapronらは「伝送損失20dB/kmの石英(SiO2)ガラス光ファイバ」を報告した.同年には,米国Bell研究所の林らによる「室温で連続発振する半導体レーザー」の報告もあり,光ファイバ通信技術を語るうえで1970年は,光ファイバと半導体レーザーという光通信の重要技術が揃(そろ)って実用化への一歩を踏み出した記念すべき年である.それから半世紀を経て,光ファイバ通信は社会に欠かせないライフラインにまで発展した.本稿では,この間の光ファイバの進化の過程を振り返り,さらに最近の動向を解説する.
塗布型で高効率なペロブスカイト太陽電池は,現在広く使われている結晶シリコン太陽電池と比較して,低コスト・軽量・フレキシブル化が可能などの特徴により,これまで太陽電池の設置が困難であった場所への展開が期待されている.ラボレベルの小面積セルの変換効率は,結晶シリコン太陽電池とほぼ同等レベルにまで到達しているが,実用化に向けては長期信頼性の確保や大面積化が課題である.これらの課題の克服には,鉛ハライドペロブスカイト材料自身の安定性確保や,高品質なペロブスカイト結晶の製膜が必要である.筆者らは,鉛ハライドペロブスカイト材料にセシウムやルビジウムといった少量のアルカリ金属を添加することで,材料の安定性や結晶化プロセスを制御できることを見いだし,ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて大きく前進した.本稿では,鉛ハライドペロブスカイト材料へのこれら添加元素の効果と実用化に向けた開発の展望について紹介する.
シングルフォトンアバランシェダイオード(SPAD)は,フォトンカウンティングを実現するデバイスとして長年研究されてきた.最近,直接Time-of-Flight方式で自動運転および先進運転支援システムの実現に向けて,物体との距離測定,交差点の認識,路面状況把握などのためLiDAR(Light Detection And Ranging)センサ開発が数多く行われている.本稿では,90nm CMOS互換プロセスを使用し,金属埋め込み型のフルトレンチアイソレーションとCu-Cu接続を備えた,最先端の裏面照射型10µmピッチSPADアレイセンサについて報告する.7µmの厚さのシリコン層,SPAD内で同時に設計されたアバランシェ領域と光電変換領域,および専用プロセスにより905nmの波長で22%を超える高い光子検出率,および超低ダークカウントレートを実現した.本センサを用いた実証実験用SPAD LiDARシステムでは,117kluxの太陽光条件で200m先の95%反射率のターゲットを距離測定誤差0.1%で測距可能なことを実証した.
高効率化を目的とした,機械学習を取り入れた実験研究手法の開発が盛んに行われている.中でも薄膜作製プロセスは,基礎研究のみならず種々の産業分野で利用されている,汎用性の高い物質・材料合成手法である.ここでは,時間と労力が必要とされる薄膜作製プロセスを用いた材料開発研究を高効率化する目的で,機械学習を取り入れた2つの研究例を紹介する.前半では,機械学習による薄膜作製パラメータ推定プロセスを導入した「closed-loop薄膜作製手法」について紹介し,薄膜作製条件最適化実験の実験回数低減化について報告する.後半では,低熱伝導材料の開発に成功した,機械学習を用いた候補材料の予測とコンビナトリアル薄膜作製手法を組み合わせた高効率材料開発について紹介し,低炭素社会で有望視されている熱電変換材料の材料探索研究への応用について展望する.
電子デバイス向け電気特性評価の環境構築と,少し高度な電気的雑音について「計測」と「除去」という観点から解説します.また,計測自動化や極低温環境に関して,トランジスタや不揮発性メモリにおける雑音計測の具体例を示しながら紹介します.