応用物理
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74 巻, 4 号
『応用物理』 第74巻 第4号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
企画の意図
総合報告
解説
  • 加藤 學
    2005 年 74 巻 4 号 p. 439-445
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    惑星科学におけるX線観測は,表面物質の元素の基本的な分析手段として月惑星探査の黎明期以来,常に用いられてきた.太陽X線を励起源とするグローバルマッピングと放射線源を使用するその場観察が行われている.新しいセンサーの開発,電子回路系の軽量化,CPUの進歩によるデータ処理の高速化などにより,元素分析の質と量の高度化が進んでいる.本稿では,惑星科学におけるX線分析の歴史についてまず述べ,現状・将来への展望を紹介する.

  • 安藤 正海, 杉山 弘
    2005 年 74 巻 4 号 p. 446-452
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    医療現場では,X線,超音波,PETとMRIを用いた画像による4種類の診断法がある.さらに新たな技術開発が行われ,画像診断能は日々に高くなっている.最近,われわれは患部からの屈折X線のみをとらえ,他のX線を抑える“X線暗視野法(dark-field imaging : DFI)”を着想した.この原理の実証を行っている.関節,乳がん標本などに適用され,今まで不可視であった構造がよく見える.空間解像度は10μm〜数μm程度ある.視野は90mm角が用意され,臨床応用をゴールとして実用化に向かっている.この現状を報告する.

  • 中井 泉
    2005 年 74 巻 4 号 p. 453-461
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    蛍光X線分析は最近二つの領域でめざましい進歩を遂げつつある.一つは小型化の流れで手のひらサイズのポータブル分析装置がすでに市販されるようになったこと,もう一つはSPring-8に代表される放射光技術の進歩で,蛍光X線分析に使えるビームサイズはついに数十nmという“ナノ”ビームの領域に到達したことである.本稿では具体的応用例を交えながら,蛍光X線分析の進歩と今後の展開について解説する.

  • 山田 廣成
    2005 年 74 巻 4 号 p. 462-471
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    “みらくる6X”は卓上型高輝度X線発生装置である.シンクロトロンの電子軌道上に微細ターゲットを置くという方法で,低エネルギー,常電導,超小型シンクロトロンであるにもかかわらず高輝度硬X線ビームの発生に成功した.光源点の大きさは,電子ビームのサイズではなく,ターゲットサイズで決まるために,最小といってよい1 μmΦ という断面の光源点が実現した.微少光源点の“みらくる6X”はきわめて高品質のX線を発生している.結果として,例えば,試料と検出器の間を離すだけで10倍の鮮明な拡大写真を位相コントラストで撮像することができ,1mmがん形状までをとらえることができた.本稿では,“みらくる6X”の原理,X線特性について述べるとともに,X線顕微鏡,たんぱく質構造解析,X線リソグラフィーなどの取り組みの現状を述べる.

最近の展望
  • 大堀 謙一, 細川 好則, 松永 大輔
    2005 年 74 巻 4 号 p. 472-476
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    産業界で利用されるX線源の小型化に関する進歩を展望した.基本的にはX線源の原理は,X線の発見当時から同じであり.X線源の小型化はX線の発生源と測定対象物を近づけることでの高効率化による省電力化により達成されている.最近では,カーボンナノチューブなどの新材料を利用してさらに小型化が加速されている.また,X線導管を利用してX線の集光効率を向上させることにより,X線源の小型化と微小分析が実現されてきている.ここでは,実用的なX線導管として利用されているモノキャピラリーとポリキャピラリーとの2種類の比較を行った.

  • 常深 博
    2005 年 74 巻 4 号 p. 477-481
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    X線CCDを低雑音で読み出すと,X線光子のエネルギーを精度よく測定できる.宇宙X線観測には,低雑音読み出しと厚い空乏層の素子が結像光学系とともに使われてきた.われわれは欧米の素子に負けない性能をもつX線用CCDを開発した.それは,小惑星探査の「はやぶさ」に搭載しているほか,宇宙ステーションに搭載予定のMAXIにも搭載する.今後は,シンチレーターと組み合わせたCCDで,広いエネルギー範囲に適用可能で位置分解能の優れた素子をめざす.大気球による天体観測のほか,非破壊検査など地上実験での応用もめざす.

研究紹介
  • 柳田 達哉, 中條 晃伸, 伊藤 紳二, 酒井 文雄
    2005 年 74 巻 4 号 p. 482-486
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    電子線,レーザーの高輝度化により,近年,逆コンプトン散乱によるX線発生が注目されるようになった.加速電子とレーザー間の逆コンプトン散乱により発生するX線は,優れた指向性・単色性を有しており,これまで放射光に限られていたコヒーレンス性のよい高輝度X線を,ラボラトリーサイズの装置から発生させることが可能になる.われわれは,医療・産業利用を目的に小型の高輝度コンプトンX線源の研究開発を行っている.これまでにX線パルス幅は,最短で150fs(rms)(エネルギー17.1keV)が得られ,発生した全光子数は,最大で2×106個/パルス(エネルギー33.7keV)であった.本稿では,これらの研究成果について報告する.

  • 榊原 陽一, ロジン A. G., 徳本 圓, 片浦 弘道
    2005 年 74 巻 4 号 p. 487-491
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    カーボンナノチューブは光通信で用いられる近赤外波長領域で可飽和吸収という大きな非線形光学効果を示す.光通信波長でこの効果が大きく発現するためには,適切な直径のナノチューブを選択的に得ることが重要であることを明らかにし,その製造技術を開発した.ナノチューブを用いた実用的な光デバイスを構築するために,このナノチューブを透明ポリマー媒質中にナノサイズで分散したナノコンポジット材料の開発を進め,光学的均質性に優れた可飽和吸収材料を得た.この材料を利用することにより,フェムト秒パルス受動モード同期ファイバーレーザーを高い再現性で容易に構築することができた.

  • 井村 考平, 永原 哲彦, 岡本 裕巳
    2005 年 74 巻 4 号 p. 492-496
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    近接場光学顕微鏡の高い空間分解能を利用して,金ナノロッド(棒状の金微粒子)におけるプラズモンモードの波動関数の空間形状を光学的に可視化することに成功した.また超高速測定法と組み合わせて時間・空間分解分光を行い,光励起後にプラズモン共鳴の空間特性が時間とともに変化していく様子(過渡応答イメージ)を可視化することにも成功した.これらの方法によりナノメートル領域で起こる光子-微粒子間相互作用や光エネルギーの散逸過程(電子-電子散乱,電子-格子散乱緩和過程)について,最近得た結果を紹介する.

技術ノート
基礎講座
  • −ナノインプリント技術の基礎と応用−
    松井 真二
    2005 年 74 巻 4 号 p. 501-505
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    微細加工技術の進展はめざましく,光を用いて100nm,電子ビームを用いて10nmの加工が達成されている.しかし,それら微細加工装置は1億円以上と高価で,量産効果が期待できるシリコンデバイス製造にしか用いることができない.ナノインプリントは,10nmのパターン解像度をもつプレス技術で,凹凸モールドがあれば,安価なナノインプリント装置でウエハー上にナノパターンの一括転写が可能である.ナノインプリント技術を用いることにより,低コストかつ高スループットでバイオデバイスを作製することができ,バイオチップ作製技術としてきわめて有用である.ナノインプリントはトップダウン型作製技術であるが,ボトムアップ型作製技術として,インクジェット技術が展開されつつある.本稿では,主にナノインプリント技術プロセスおよびそのバイオデバイスへの応用例について述べる.

  • 四戸 孝
    2005 年 74 巻 4 号 p. 506-511
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    炭化ケイ素(SiC)はSiの約10倍の絶縁破壊電界強度(Ec)をもち,高耐圧・低損失の次世代パワーデバイス材料として期待されている.すでにSBD(Schottky Barrier Diode)が製品化されて電源に組み込まれ始めており,スイッチングデバイスの研究開発も多くの研究機関や企業で活発に行われている.本稿では,SiCパワーデバイス設計の基礎技術について述べた後,パワーデバイス研究開発の現状について紹介する.

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