応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
87 巻, 3 号
『応用物理』 第87巻 第3号
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Science As Art
今月号の概要
解説
  • 藤田 克昌
    2018 年87 巻3 号 p. 164-170
    発行日: 2018/03/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    Abbeの結像理論の発表以降,伝搬光を用いた光学顕微鏡の空間分解能は波長の半分程度が限界とされてきた.しかし,近年の研究開発により,光の波動性の制限を受けない顕微観察法がいくつも登場し,そのうち2つの手法の開発には2014年のノーベル化学賞が贈られた.これらの手法が従来技術の限界を超えることができた共通点は,光源,検出器,オプティクスなどの光学技術を駆使するだけでなく,試料内の蛍光物質に光を当てた際に生じるさまざまな光学効果を利用することであった.試料の光学応答を巧みに制御しながら,観察像のコントラストを形成していくことにより,波長の数十倍の空間分解能も達成されており,理論的な空間分解能の限界は存在しない技術もある.本稿では,これらの超解像顕微鏡の原理を中心に紹介し,その技術/応用面での特徴,蛍光顕微鏡以外における超解像観察の試み,および今後の技術開発の展望について概説する.

研究紹介
  • 松浦 祐司
    2018 年87 巻3 号 p. 171-174
    発行日: 2018/03/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    非侵襲血糖値測定を目的として,赤外光伝送用中空光ファイバと多重反射減衰全反射(ATR)プリズムとを組み合わせた赤外吸収分光測定システムを構築した.フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用い,口唇粘膜を対象として測定を行ったところ,明瞭なブドウ糖の指紋スペクトルが得られ,採血により測定された血糖値に対して,測定誤差20%以内という良好な結果が得られた.また量子カスケードレーザー(QCL)を光源としたコンパクトかつ低コストなシステムによる測定結果も併せて報告する.

  • 坂上 知, 竹延 大志
    2018 年87 巻3 号 p. 175-180
    発行日: 2018/03/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    同じ電荷であっても,電子とイオンは電圧印加に対して異なる挙動を示す.電子は電位勾配に従って輸送され,定常的な電流が観測されるのに対して,イオンは電極近傍で再配列して電気2重層を形成し,過渡的な電流が観測される.近年,この2つの異種電荷を同時に利用することで,新たな機能素子を実現する技術「イオントロニクス」が注目されている.本稿では,筆者らが研究をしている電解質と半導体を組み合わせ,イオンの再配列によってpn接合を自発的に誘起させて発光するLight-emitting Electrochemical Cellについて述べ,高性能なだけではないユニークな発光素子の可能性について紹介する.

  • 田邉 孝純, 鈴木 良, 鐵本 智大, 柿沼 康弘
    2018 年87 巻3 号 p. 181-186
    発行日: 2018/03/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    Q値微小光共振器は光を小さな空間に強く閉じ込めることができるので,光と物質の相互作用を究極的に増強可能である.また,微弱な入力光でも非線形光学効果を利用できるため,微小光共振器の応用は光信号処理や光周波数コムなど多岐にわたる.本稿では,フォトニック結晶(PhC)共振器やさまざまなウィスパリングギャラリーモード(WGM)共振器の作製と応用について紹介する.PhC共振器は,CMOS互換性を向上させることで光集積回路の実現に近づくことができる.一方,WGM共振器は,シリカトロイド共振器,シリカロッド共振器や分散制御を可能にする.ここでは超精密加工によるWGM結晶共振器の開発を紹介し,これらの共振器を用いた光カーコム応用などについて解説する.

  • 中田 陽介, 浦出 芳郎, 高野 恵介
    2018 年87 巻3 号 p. 187-192
    発行日: 2018/03/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    金属薄膜を格子状に加工した金属チェッカーボード構造は,接点の接続状態を非接続から接続状態に遷移させることで,電磁応答の意味で「絶縁体‐金属転移」を示す.本稿では,理想的に点接触する金属チェッカーボード構造がこの遷移の特異点であることを示す.次に,接点に抵抗を導入したチェッカーボード構造が非接続・接続状態の中間として示す奇妙な周波数無依存の電磁波透過特性を議論する.最後に,金属チェッカーボード構造の臨界転移を応用した動的テラヘルツ素子について紹介する.

  • 水田 博, スン ジアン, ムルガナタン マノハラン
    2018 年87 巻3 号 p. 193-197
    発行日: 2018/03/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    グラフェンを宙づりにした状態で動作させるグラフェンナノ電子機械(GNEM)デバイスは,その優れた電子輸送特性と極めて高い表面対体積比率に加え,基板・界面の影響を避けることができるため,極限的なセンシングのプラットフォームとして大きな期待が寄せられている.本稿では,CO2ガスを検出対象として,まず,グラフェン上にファンデルワールス(vdW)力で物理吸着したCO2分子の電荷移動とその外部電界依存性を実験と理論の両面から明らかにする.また,その知見に基づき,GNEMデバイスを用いたCO2単分子検出の原理実験の結果について紹介し,高感度環境センサとしての可能性を議論する.

  • 中野 恭兵, 伹馬 敬介
    2018 年87 巻3 号 p. 198-201
    発行日: 2018/03/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    有機半導体中の光電変換現象は,軽くフレキシブルな薄膜太陽電池実現の可能性を開くものであるとともに,励起子が絡んだ複雑な物理過程であり学術的にも興味深い.有機光電変換で特徴的なのは,電子とホールが束縛状態にある励起子が生じることに加えて,その分離が電子ドナーと電子アクセプタの界面で選択的に起こることである.本稿では,高分子半導体を用いた光電変換に着目し,特に電子ドナー/電子アクセプタ界面構造と光電変換機構の関連を調べた結果を紹介する.ポイントはいかにして素性のよい明確な界面構造を実現するかにあり,その目的で我々が用いてきた薄膜転写法と表面偏析単分子層という2つの手法を併せて紹介する.

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