遅延線路の一端に江崎ダイオードを,他端にバイアス用電源を接続すると,線路に波動が自励する.この波動を江崎ダイオードの端子電圧および電流について観測すれば,その波形は一般に矩形波,あるいは階段波である.そしてその波形は,線路の特性インピーダンス,バイアス電圧,および初期条件によつて,著しい多様性を示す.この現象を理論的に解析し,実験結果と比較して非常によい一致がみられた.
この回路は, i)極めて簡単な構造であるにもかかわらず, ii)その発振波形は非常な多様性を示し, iii)高い周波数まで使用可能である.発振波形は一般に矩形波あるいは階段波であるから各種のデイジタル技術への応用が考えられるが,特に, duty factorがバイアス電圧によつて離散的に変化するパルス発振器,あるいは不連続レベルのパルス周波数変調(P.F.M)回路として利用されよう.したがつてまたある種のAD変換器としても好適であろう.
抄録全体を表示