ホログラフィは,原理的に物体の3次元情報を完全に記録再生可能な技術である.しかしその光学的記録において,一般にコヒーレント光が必要であり実用上の妨げとなっていた.フレネルインコヒーレント自己相関ホログラフィ(FINCH)はインコヒーレント光でホログラム記録を可能とする技術の1つで,デジタルホログラフィ技術と融合させたホログラフィ顕微鏡や3Dカメラへの応用が注目され始めている.ここでは,独自に開発した液晶偏光GRINレンズを用いることで,より実用的で小型化が可能となったFINCH顕微鏡の特徴と,その超解像蛍光顕微鏡への応用について紹介する.
SiCパワー半導体素子は,パワーエレクトロニクス機器の格段の低損失化,小型化を実現可能とし,多くの用途で実用され始めている.今後,SiCパワー半導体素子を大量に普及させていくために,大口径かつ高品質な4H-SiCエピタキシャル膜を高い生産性で得るための結晶成長技術の開発が望まれている.本稿では,高電圧SiCパワー半導体素子に向けて進めてきたエピタキシャル成長速度の増大,均一性の向上,欠陥密度の低減に関する研究成果を中心に,大口径,高品質4H-SiCエピタキシャル成長技術の進展を解説する.
強誘電体ゲートトランジスタは,高速動作・高書き換え耐性・低消費電力を併せもつ.本稿では,新材料導入による保持特性改善への取り組み,動作ダイナミクスをまず紹介する.その後,多値記録性能や動作ダイナミクスを利用した応用展開として,衝撃記録素子および脳型デバイスへの応用について解説する.
プラズマを構成する電子,イオンおよび中性粒子(原子や分子など)の温度・密度によって,その応用は常温に近い低温プロセスから金属を溶融する高温プロセスまで幅広い.一般に医療・バイオ分野でのプラズマ応用では,生体細胞や樹脂材料を対象とするため,前者の常温に近いガス温度を有する非平衡プラズマが用いられるのに対して,環境応用で扱うプラズマでは,高温下での廃棄物処理を実現するため,後者の熱平衡プラズマが用いられる.近年では,さらに常温下での非平衡プラズマの環境応用に関する研究も注目されている.本稿では,このように多種多様なプラズマの環境分野およびバイオ分野への応用に関する最近の研究動向について紹介する.
キャリヤ波と側帯波の相互作用により可聴音を生成する超音波スピーカの仕組みを応用して,キャリヤ波と側帯波を別々の超音波スピーカから放射することで,空間のある1点でのみ可聴音を再現するオーディオスポットの構築に成功した.再現領域の拡大/縮小にも成功し,今後,実用化を念頭に開発を進める計画である.
現在,次世代の基幹エネルギーとして期待されているものに核融合がある.その研究においては,シンチレータによる中性子の検出技術が重要な位置を占めている.我々は新しい光材料開発の一環として,このような先端領域での実用が目指せるシンチレータの開発を行っている.本稿では,現在のレーザー核融合研究とそこで使用される中性子シンチレータの研究について紹介する.
温度の計測,制御,そして管理は,製品の製造・品質管理や学術分野において日常的に行われている作業の1つです.近年では,1mKの桁まで表示する計測器があり,高精度の温度計測がとても身近になっています.しかし,正しい温度計測および高精度の温度制御には注意すべき点があり,本稿ではそのポイントのいくつかを紹介いたします.